2009.09.07 大勝。草津戦
9月6日(日) 2009 J2リーグ戦 第38節
草津 0 - 6 熊本 (16:04/松本/2,201人)
得点者:12' 藤田俊哉(熊本)、44' 山内祐一(熊本)、47' 山内祐一(熊本)、58' 石井俊也(熊本)、67' 西弘則(熊本)、74' 山内祐一(熊本)


8月29日。C大阪戦の前日でしたか、大津で行われたトレーニングマッチ。たまたま仕事が休みで見に行ったときのこと。左SBに“見慣れない”プレイヤーが。ひょろりとした長身のその選手は、果敢なインターセプトから、タイミングよく左サイドを駆け上がり、絶妙のクロスを上げていた。まるでそれは右の市村のたたずまいに似ていて…。それが昨年のルーキー・網田だと気づくのにはしばらく時間がかかりましたが、そのプレーを目の前で見て、「網田がもうすぐ使えそうだ!」とその場で相方にメールをしていました。その日は大学生の練習生が数人参加していたり、TMの相手が母校・大津高だったりして、彼にとっても“負けられない”気持ち、いいモチベーションがあるのかな?と、少し割り引いては見たというのが正直なところです。やはり競争環境が大切だ、というのがそのときの結論で、まさか、こんなに早く彼の先発が実現するとは思ってもいませんでした。網田慎。この貴重なレフティーは、昨年の入団以来、一度も表舞台に立つことなく、ただ黙々と左SBとして練習を重ねてきました。そして今日、この松本・アルウィンのピッチで、Jリーグデビューを果たすことになりました。選手入場のシーン。いくらか緊張の面持ちの網田…。

戦前から熊本と草津の似た点が語られていました。前監督がGMに就任し、内部昇格の現監督。互いにポゼッション・サッカーを標榜するものの、最近は勝ち星に恵まれていない…。この一戦に掛ける互いの強い意識が、遠く北アルプスを望む美しいスタジアムでぶつかり合いました。キックオフは16:00。熊本であれば、まだうだるような暑さの時間。しかしこの松本はまさに避暑地のような気候条件。これも試合の行方を左右するんだろうなと。

熊本は、その網田を左SBに置き、CBにチョ・ソンジンと矢野、右は市村。前線は山内と藤田を2トップにし、西森、西、吉井、石井をダイヤモンドに敷いてきました。“正眼の構え”ながら、大幅なというより“大胆な”シフト変更。しかしながら、山内を含め藤田、西、西森のポジションがまったく流動的であることは予想がつくものでした。

草津 (先発フォーメーション)
9高田 27都倉
14熊林10廣山
6櫻田30松下
18小池7佐田
4田中26藤井
 1本田 

互いがポゼッションを志向するだけに、開始早々から奪い合い。前節、岐阜に2-5と大敗を喫している熊本、中3日の日程ですが今日は何か吹っ切れたように歯切れのいい動き。山内が右サイドをドリブルで突っかけシュート。網田も早い判断から思い切りのいいボールを供給。草津もカウンターから広山のクロス。わずかに中央で合わずに事なきを得ます。

試合が動いたのは12分。熊本の右CKに立ったのは網田。CKの瞬間に草津のファール。PKを得ます。これを藤田が冷静に決めて、まずは先制。幸先の良い船出でした。しかし、熊本にはその後に畳み掛ける“凄み”がない。逆に草津にポゼッションを奪われる時間帯が続きます。櫻田の右サイドからワンツーはなんとかクリア。あるいは、ハイタワー都倉へのパスはオフサイド。肝を冷やしたのは30分、左から小池のクロスがポストに当たり、GK小林が体に当てて跳ね返す。さらにこれを高田に拾われシュートされるも、矢野がヘッドでクリア。危ない、危ない。その後も草津は都倉をターゲットに、攻撃を組み立てますが、いかんせん最後の精度を欠く。久しぶりに帰ってきた守護神・小林の気迫も勝っていました。

この時間帯、1点を守りきっての辛勝か…。内心そんな展開も予想してしまうような内容でした。しかし、前半終了間際、ゴール前中央で収めた山内が振り向き、相手DFに突っかけそのままドリブル。DFを交わしながら強引にシュートしたボールは、草津GK本田の手を掠め、ゴールネットに突き刺さります。いい時間帯での追加点。前半のうちに2点のアドバンテージを手にしました。

初先発の網田の左SB、まずまずの出来。というより、ディフェンスとしての忠実な動きは、この試合のチーム戦術を体現していました。時間の経過とともに徐々に落ち着き、試合にフィットしてきたのがわかりました。そう言えば今日は両SBともそれほど高くポジショニングをとらない。網田は守備重点でバランスをとっているような。加えて前線から連動したプレスが続いていて、草津のパスコースを塞いでいる。

後半、点を取りにいくしかない草津の“前掛かり”をうまく熊本が捕らえます。早々の47分、セットプレー。DFラインからのロングボールのバウンドに山内がうまく体を入れタイミングを合わせてダイレクトにシュート。草津の戦意を喪失させる3点目としました。さらに58分には右サイド西がDFを交わして、エンドラインまで切れ込み、タメにタメてセンタリング。ファーから飛び込んできた石井のシュートは一旦DFにクリアされるものの、それを再び石井がヒットして4点目としました。

草津はもう広山を代えて山崎、松下に代えて後藤涼を入れるしかない。しかし、草津のコンビネーションのちぐはぐさは変わらない。熊本のバイタルエリアを崩すところまでは来るものの、ラストパスが渡らない。フィニッシュが決まらない。

熊本は網田を下げて原田。藤田に代えて木島。67分には、高い位置でインターセプト。木島が中央で受けてDFを引き付け右に走りこんだ西に余裕を持ってパス。西はゴールに流し込むだけ。遂に5点目。ちょっと足が止まってきたかと思われた時間帯、西に代えて山本の投入も効果的で、74分には、ソンジンからのロングボールが山内に納まり二点目と同じように相手DF二人を振り切ってシュート。山内のハットトリックが決まり6点目とします。まるで昨季、忽然と登場した相手・草津の後藤涼を彷彿とさせるような小兵・山内の大活躍で、熊本が苦手意識もあった草津相手にとんでもない爆発力を発揮して大差、完封勝ちとしました。

久々にゴールマウスを守る小林の安定したセービングもありました。しかし、それにも増して、今日の勝因は草津のお株を奪うような、全員での前線から中盤での効果的なプレス、全員守備の姿勢でした。たじろいだ草津はミスを連発するしかなかった。さらに言えば、水戸を思わせるような、シンプルで縦に早い“意図のある”攻撃。加えて、新鋭たちの活躍。

しかし、結果論かもしれませんが、この試合のポイントを振り返ってみれば、早い段階の幸運な先制点、そこからの草津の攻勢の時間帯を凌ぎ切ったこと。そこではなかったかと。2点目をとりに行くという意識も当然あるはずでしたが、むしろバランスを崩さず、全員が守備意識を共有してゲームを“マネジメント”したことにあったのでは、とわれわれは思っています。6点という“大量点”ですが、ある意味で前掛かりの草津に、熊本の攻撃が“はまった”という形であり、逆に、こういったかたちでやられているわれわれにとっては、よくわかるメカニズムに思えました。今シーズンのホーム開幕戦、1-2で敗れたときのエントリーで、その悔しさから(あるいはひとつの目標として)「この草津とは五分五分に持ち込むことが可能なんだという手ごたえが得られた」「次は草津を倒す。翻弄する・・・」と書いていますが、今日の草津はあのとき勝ちたかった草津とはちょっと違うなあというのも実感です。

もうひとつ、今日のゲームを観て浮かんだのは「悪循環」という言葉でした。熊本と草津。両チームが喘いでいたのは何はともあれ「悪循環」ということではなかったのかと。奪えないから繋げない、繋げないから入らない、入らないから守り切れない。そんな「悪循環」をどこかで断ち切る必要があった。それを熊本はとりあえず「新たな力」と「新たなシフト」そして「自分たちへの自信」ということで今日、断ち切ったということではないかと…。少なくとも今日はそんな負の連鎖を止める“兆し”を感じられたということでしょうか。スカパーの解説者が言うようにこれがチームとしての“底上げ”“ステップアップ”につながればいい。そう思います。

鬱屈していたチームの雰囲気をとりあえず一掃してくれた大差完封勝利。画面に映る選手たちの久々の笑顔。遠い松本の地に馳せ参じたゴール裏のファンの中には泣いている人の姿も見受けられ…。「今度はホームで」という山内のヒーロー・インタビューに、最終クール、これからの快進撃を期待したいと思います。ちょうど昨年のように。

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