9月12日(土) 2009 J2リーグ戦 第39節
熊本 2 - 1 鳥栖 (16:04/熊本/8,671人)
得点者:29' 西弘則(熊本)、62' 高橋義希(鳥栖)、84' 山内祐一(熊本)


ふーっ…。痺れました。久しぶりに“痺れる”という表現がピッタリする試合内容でした。この試合、どうしても勝ちたかった。何故だかわかりませんが、どうしても勝利という「結果」が欲しくてたまりませんでした。それは前節、悪夢の5連敗を断ち切って草津に大勝したあと、選手の誰もが「次こそが大事」と同じように口を揃えたこともあるかも知れません。悪循環を断ち切ってひとつ“ステップアップ”したチームを確かめたい。そうでないとあれだけ追い詰められた意味がないじゃないか…。そんなことを思っていたのかもしれません。もうちょっと感情的に言えば、鳥栖との前回対戦(第2クール初戦)での敗戦が、あまりにもふがいなかったという思いや、前節・福岡戦での勝利後の岸野監督のあまりな“はしゃぎ”ぶりが見るに耐えなかった。あんなものをホームで見せられたらたまらない。そんな気持ちもあったのかも知れません…。

戦いの前の嵐。KKウィングは、久しぶりの豪雨に包まれました。天気予報では夕方まで雨。しかし、動員のかかったダービーマッチに詰め掛けた多くのファンの願いが通じたのか、試合が始まると同時に晴れ間が差してきました。鳥栖からも多くのサガン・ブルーのサポーターがメイン、バックのアウェー側を占拠。第三クールのこの時点でJ1昇格を狙える位置につけているチーム。当然のサポートでした。試合前からヒートアップする応援合戦。まだまだダービーと呼ぶのはおこがましいのかも知れませんが、隣町同士だから実現するこの雰囲気。これだけ応援でも競いあうと、今日はじめて訪れた人たちはもちろん、J‘sゴールの投票で来訪してくれた藤本泉嬢、表敬訪問のチェアマンにもきっとわれわれのこの興奮が伝わったはずです。

鳥栖は前節の福岡戦、後半からトジン、ホベルトを投入して一気に流れを変え、1点のビハインドをひっくり返しました。今節はその二人が最初からスタメンに入っている。前半から飛ばして先制点を奪う構え。熊本は前節しっかりと守り切った矢野とソンジンを守備の中央に置き、左サイドには原田が復帰。さすがの連続出場で疲労が蓄積しているだろう石井の側には吉井が位置して2ボランチに。2トップは前節と同様、山内、藤田ですが、これも藤田が自在に動いて、山内、西森、西という若い個性を引き出していこうという考えだったのでしょう。

鳥栖 (先発フォーメーション)
35ハーフナー 11トジン
10島田6高地
28ホベルト14高橋
13日高2柳沢
5飯尾4内間
 21室 

今日の勝因を問うなら、誰もが熊本の「守備がよかった」と答えるでしょう。北野監督は試合後のインタビューで「攻めているときも守備を考えろ」(J‘sゴール)と指示したと言っていますが、そんな単純なことだけではなかったはずです。もちろん、戦術を記者に詳細に明かす監督など滅多にいませんけれどね。基本的な鳥栖の狙いはハーフナー・マイクの高さに当てて、こぼれたところをトジンや両サイド、あるいはボランチが拾っていくこと。これに対しては、主に矢野がマイクと競って自由にさせませんでした。バイタルエリアには、ゴールを狙う猛獣のごとく鳥栖の前線4人が常に侵入していましたが、熊本は中盤4人とDF4人との2ブロックでしっかり挟みこんで、仮に最終ラインにボールが入っても、矢野もしくはマイクが落としたところを拾うのは熊本。危険なエリアでは決して鳥栖にボールを譲りませんでした。

要注意人物・ホベルトを嫌ってか、奪ってからは意識的に長いボールを前線に供給。これによって鳥栖の最終ラインと中盤が間延びします。ホベルトが孤立ぎみのところに、吉井、石井やサイドの西、西森のチェックが容赦なく入る。前回対戦で果敢なプレスにあい、自滅していった熊本でしたが、今日はそのお株を奪うハードワークを演じました。更に前節から続いていたのは「インターセプト」の意識。鳥栖の攻撃の繋がりを断つと、一気に反転攻勢に出ます。

前半29分、ソンジンからの低い弾道のロングパスに西森がトラップ一発、右サイドを破ると、素早く中に入れる。信じて走り込んで来た西がDF2人と競いながら撃ったシュートはみごとにゴールに流れ込みました。先制。奮い立つスタンド。振り回される旗、そしてマフラー。決めた西と山内、アシストの西森ががっちりと抱き合う。3人の小柄なスピード・スター。いずれも熊本の生え抜きの選手たちでした。

ボールの狙いどころを一列下がったあたりに置き、激しくチェックする熊本。圧倒的な高さのある相手FWに対して最終ラインは下げられない。異常にコンパクトな陣形で赤いユニフォームが白のユニフォームを激しく囲いボールを狙い続けていました。ボールを奪えば前を向いたプレーヤーはまず前線へのパスを選択していましたね。全く高さの武器はない熊本の前線ですが、これを執拗に繰り返していました。たとえ後方からでも、前線はそれぞれに動き出し、受け方を工夫していました。ロングボールではなく“パス”としての確率を狙うような。それは出し手も同じく。先制の場面も、GK小林からのボールを受け振り向いたソンジン、瞬間、迷うことなく西森を狙っていました。相手DFラインはきちんと揃っていましたが、西森の受ける動きが勝った。以前「水戸との差」というエントリーで書いた「ゴールからの逆算」というプレーが感じられた瞬間でした。

鳥栖はDF内間を早々に諦めベテラン山田を投入。これで前節の後半流れを変えた布陣そのままになりました。展開は前節と同じ1点ビハインドであったものの、後半開始からも思うように運べない。攻守にバランスを保つ熊本相手に、どうにも出しどころ、崩しどころがなく、状況を打開できない鳥栖。前節、後半の局面を打開したトジン、ホベルトは既に45分間、ピッチ上で消耗していました。

それでも執拗に攻め続ける鳥栖は55分、菊岡を入れることによって、いよいよ“圧”をかけてきました。いきなり右サイドを破りエリア内のマイクへ。このシュートは枠を反れる。スタジアム中に安堵のため息。しかし連続してサイドから起点を作られ始める。62分、右サイドでソンジンがトジンに入れ替わられ、最終ラインを破られる。放たれたシュートは運良くポストに当たりましたが、跳ね返りのボールは中央に走り込んでいた高橋の足下に。これを押し込まれ同点とされました。

完全に鳥栖の時間帯に。このまま鳥栖を勢いづかせてしまうのか。これまで何度も目の当たりにした流れ。どうしようもない不安がよぎりました。しかし、直後、ベンチはその習い性になった“負けそうになる”消極的な気持ちを打ち消すように交代カードを切ってきます。西森に代わって木島。疲れの見える原田には福王。追加点を狙って前がかりになった鳥栖。薄くなっているCBのところで、木島が何度も体ごとぶつけ合うシーンに、観客からここぞとばかりに声援が飛びます。追加点を! 頼むぞ!

接触プレーでの故障で中断。集中力を欠きがちな時間帯です。それにしても今日の主審は、ことのほかファールを取らない。試合を中断させず実質のプレー時間を長くしようというリーグ方針を体現しようとしているのか。よくも悪くも、これもチェアマン御前試合の影響だったのかも知れません。

84分、藤田に代わって入っていた山本からのロング“パス”を受けた木島。これもトラップ一発で左サイド奥のスペースへ抜け出します。追走しぴったりと寄せるDF山田。エンドライン際、互いにユニフォームをつかみ合いながら、体ごと押し合う、息を呑むような男と男のせめぎ合い。一瞬、山田の動きのスキをつくように奪い抜けるとCB飯尾の股間を抜いて中央に詰めてきた山内に早いパス。これを山内がきっちり押し込んで決勝点。もう、スタンドは総立ち。怒号のように鳴り響く歓声。そして沈黙する鳥栖側。ピッチ上の鳥栖イレブンの落胆もはっきり伝わってくる決定的な1点でした。

試合後に表彰されたMVPは木島。満を持して投入したベンチワークに応える文句ない活躍でした。それにも増して嬉しいのは、先発で起用されているFW山内が結果を残し続けていること。西もしかり。さらには西森にはすばらしいアシストがついた。反面、藤田ひとりが目立つようなサッカーではなくなってきているような。藤田が黒子に徹して、ようやく今季の熊本のチーム全体としての力が成熟してきているような。GKの小林が守備陣に対して大声で指示をする。失点したあとの場面でも、「行け!」とばかりに矢野の背中を押す。言葉が通じないソンジンに矢野は「身振り手振りで指示」(13日:熊日)する。藤田の大きなゼスチャーはもちろんだけれど、ボールを持った選手に対して、全員のサポートが効いている。皆の声が出ているのが、スタンドにいてもはっきりとわかります。

動員のかかったゲーム。残念ながら入場者数の記録は更新できませんでしたが、痺れるような好ゲームをホームで見せられた今日の観客は、確実にリピーターになったことでしょう。九州ダービー。鳥栖との最終戦。ちょうど昨年、2万人のファンが見つめるベアスタでの戦いで、やはり昇格を伺っていた鳥栖に2-1で勝利して、躓かせたあの試合をどうしても思い起こさせます。そして熊本はあれから怒涛の8試合負けなしを演じたということも…。

リーグ成績では、ようやく2度目の2連勝。実に2ヶ月半ぶりのホーム勝利。KKウィングに至っては4月“ホーム初勝利”とうたった札幌戦以来でした。その間、負けても負けても、皆が通い続けたKKウィング。それはわれわれの唯一のホームチームだからあたり前なのですが。今日またこんな舞台で、記憶に残る“痺れる”名勝負を演じてくれる。また一歩、前に進んだ。そう確信させてくれる価値ある勝利でした。

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