9月27日(日) 2009 J2リーグ戦 第42節
仙台 1 - 0 熊本 (16:04/ユアスタ/14,374人)
得点者:44' 渡辺広大(仙台)


J2のなかでも観客動員では屈指の仙台・ユアスタ。今日も1万4千人を越え、明らかに多勢に無勢の熊本。しかし、耳を澄ませばしっかりと熊本のチャントが聞こえてくる。二子新地のアズーリでお会いした面々が、スカパーの画面からも確認できました。

戦前多くの下馬評は、これまで勝ちなしのデータから仙台に対しての苦手意識を語っていましたが、何故かわれわれは仙台と相性が悪いという印象はまったく持っていませんでした。肝胆寒からしめた天皇杯での初対戦。あるいは同点引き分け、内容の伴った試合が多かった昨シーズンのイメージがそうさせるのか。それに、アウェーとはいえ大観衆・大舞台のほうが実力を発揮する。わがチームにそんな印象すら持っています。

熊本はGKの小林を稲田に代えてきただけで、あとは前節同様の布陣。画面に示されたフォーメーションでは、藤田が2トップの一角を占めるものの、試合が始まれば予想どおりの自由自在な動き。これはまるで9人のフィールドプレーヤーのまわりに一人のフリーマンを置いているようで。いや、もはや藤田は、FW、MFなどのゾーン分担型フォーメーション図には押し込められない。とにかく「攻撃的選手」の一人だ、という“存在”なのかも知れません。

仙台 (先発フォーメーション)
13中島 14平瀬
10リャン・ヨンギ11関口
7千葉17冨田
27パク・チュソン25菅井
3渡辺8エリゼウ
 18林 

対する仙台は得点源・ソアレスを欠く。平瀬の相方に指名されたのは中島でした。渡辺とエリゼウのCBに、菅井、パクの両SBを置いた強固なディフェンスラインは、リーグ1の失点数の少なさを誇る。ボランチも今日は特に守備に専念しているようにも見える。前線4人で攻撃を作るはっきりした役割分担。それにときおり両SBが加担するといった格好でした。

わが軍の石井とともに、J2のこの過酷な日程で全試合出場中の渡辺。鼻骨骨折をフェイスガードで覆い先発出場のタフガイ。エリゼウとともにトラップミスを見逃さず、攻撃の起点を潰し続けます。藤田の自在なポジショニングに関しても、前回対戦時のゼロトップで経験済みだった仙台。今回のスカウティングでは、藤田以外の「2列目からの飛び出し」に関してしっかりとケアすることに努めていました。

開始早々の熊本の攻勢をしのいだ仙台は、次第に押し込んでくる。13分、リャンのFKに中島が合わせるものの、なんとかクリア。20分には再びリャンのFKから平瀬のヘッド。バーに妨げられ、オフサイドではあったものの肝を冷やします。前回対戦と同様、ジワリジワリと詰め寄ってくるような圧迫感。熊本も40分、藤田が右へ流して石井を使う。PA内で再びもらうとヒールパス。そこに宇留野が入ってきてシュート。惜しくもエリゼウに掃きだされましたが、わがチームの本領を発揮した瞬間でした。

互いに我慢を重ねながら、攻守の切り替えの早い、質の高いゲーム。このまま前半スコアレスでとの願いを奪ったのは、やはり仙台の“飛び道具”リャンのひと蹴りでした。終了間際に得た左CK。ファーには平瀬、中央には中島を配し、中島でGK稲田を潰したところに入ってきたのはフェイスガードの渡辺。頭のてっぺんを思いっきり前に突き出して、ゴール右角に打ち込みました。

毎回、こちらの“急所”を突いてくるようなリャンのキック。さらに今日は、この男に“凄み”さえ感じました。後半も全く落ちることのない運動量。果てはアーリークロスに自らが体ごと飛び込む。GKとの交錯も恐れず。この(いわば下位との)一戦の重要性と今日の戦術を十分理解している。一気に追加点をと目論む仙台は、後半開始早々から飛ばしてきました。熊本の両サイドを崩し、次々にクロスを上げてくる。60分、左からのクロスを稲田がはじくと、ボールはリャンの足元に。決定的な場面でしたが、シュートは枠を反れてくれました。

熊本は打開すべく宇留野、藤田、松岡を下げて、山内、吉井、原田を入れる、かつてなかった同時3枚替えの采配。4-3-3にシフト変更して敵の混乱を誘う。原田も果敢にサイドを上がる。これで仙台のバイタルエリアを押し下げることには奏功しましたが、いかんせんDFラインを切り裂く最後のスルーパスが誰からも出てこない。そのときすでにそれを出せる選手がピッチから去っていました。

開始早々に太ももを痛めた様子のパク・チュソンのサイドをただ一辺倒に攻めたてましたが、壁のように跳ね返されるばかり。逆に時折見せる前線への攻撃参加時に、その裏のスペースを突こうというチーム戦術も見失っていました。

アタッキング・サードでどう崩すかというのが、今期の当初からの課題であり、熊本はシーズンを通してこの課題に取り組んできたはずでした。もちろん今日のそれは第1クール段階のそれとは違っていて、それなりの実戦を踏んで鍛えてきたはずのものでしたが。熊本の“進歩”に立ちはだかったのは、「昇格を狙うチームの本気の守り」という強靭な壁でした。そういう意味では、今日は今期の“到達点”を探るいい機会だったのかも知れません。

J2降格から既に6年。毎年のように上位をうかがってはいるもののあと一歩及ばなかった年月。昨年ようやく入れ替え戦に臨んだものの、重い扉の隙間からJ1を覗きながら、立ちはだかる磐田の前に涙をのんだ仙台。これが昇格を狙うチームの、何年も苦汁をなめたチームの、この時期での“本気度”のゲーム運びなのだろうと実感しました。

熊本にとって、想像できないようなプレッシャーのなかで昇格を狙う上位チームに、きっちりと守られたときいったいどう崩すのか、いやどうゲームを運ぶのか、という更に高いハードルを与えられたようなゲーム。仙台はもちろんしっかりスカウティングして、熊本の攻撃を封じる策で臨んできたと推測できるのですが、今日の仙台、守りのバランスを崩すのを異様なまでに恐れているように見えました。まるで最悪の場合「スコアレスドローでも止む無し」というまでの思いかと邪推するほど。下位とはいえ、熊本の攻撃力への警戒は怠りなく、とにかく交通事故でもなんでも、万が一にも勝ち点ゼロだけは避けたいという計算だったのかと。

3年前の天皇杯。同じ場所で同じ点差で終了したとき、仙台ファンからは大きなブーイングが起こりました。そのときのカテゴリーと今とは熊本も違ってはいるものの、今日のユアスタは、奪った「勝ち点3」に対して満場の拍手。鳴り止まない「仙台」コール。仙台はファンともども昇格を確実に見据えているのだと思いました。

今シーズンの対戦は3戦全敗で終了。それもリャンという才能とそのセットプレーに翻弄された一年。しばらくは相対することもないのかも知れませんが、実に多くのことを教えてくれた仙台。失点も少ないが、カードも少ない。われわれが目指すクラブ、チームのイメージにも重なるような。今日のことを糧にわれわれも積み重ねていけば、こんなギリギリの気持ちや状況でのゲームを迎える日が、いつかきっと熊本にも来るのだと思います。

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