10月4日(日) 2009 J2リーグ戦 第43節
熊本 0 - 0 札幌 (13:03/熊本/4,140人)


いい試合でしたね。得点こそ奪えなかったものの。誰もが認めるように、組織的な守備がうまくはまり、攻撃への切り替えも今期の課題を克服する場面を垣間見せた試合内容でした。そしてなにより札幌相手に3試合とも零封、負けなしという結果を残しました。

直近を3連勝で躍進中の札幌。その間失点ゼロと安定感も増し、昇格戦線への生き残りを賭けて、選手のモチベーションも高いものがあるはず。後押しをすべく、遠く北の大地から駆けつけたおよそ100人という赤黒のサポーター。野太い声がKKウィングを威圧しています。対する熊本は前節と同じ布陣。松岡の左SBも板についてきた感じ。

札幌 (先発フォーメーション)
 19キリノ 
7藤田27古田
20上里11宮澤
 18芳賀 
6西嶋22西
29石川3柴田
 21高原 

13時キックオフの試合。10月というのに気温は29.1度。湿度26%。暑さや日差しには慣れているつもりで、いつものようにゴール裏の高い位置で観戦していましたが、その刺す様な紫外線のあまりの強さに、前半終了と同時に、屋根の下に移動してしまいました。さて札幌は何とキリノをワントップに置いた4-1-4-1の布陣。開始早々、そのキリノにアーリークロスが渡って切り返されたシュートはサイドネット。おもわず胸を撫で下ろしましたが、さすがにその“速さ”と“うまさ”に唸ります。

ところが札幌が怖かったのも前半はこのプレーだけ。徹底したマークでキリノの動きを封じ込めます。ボールに“触らせない”。おそらくはそんな指示だったのでしょうか、ラインの高さもあって危ない場面はほとんどありません。今日のポイントのひとつでしたね。熊本はDF4人に中盤が加勢して、バランスよくゾーンを“押さえる”と、奪っては札幌の前線5人を置き去りにするグラウンダーのパスがよく通る。あるいは市村の積極的な攻撃参加。市村サイドが詰まったら、今度は左の松岡が判断よく上がる。

36分にはCKから中央の藤田が合わせますが、惜しくも枠外。41分には木島がエリア内の藤田に預けて、再びもらったところをシュート。これはGK高原にセーブされます。試合後、「ちょっとボールを動かしすぎた」と北野監督を反省させるものの、札幌のDFに狙いを絞りこませない縦横無尽なパスまわしは大いにファンを沸かせました。前半30分過ぎからの形勢は、札幌に伍すると言うより、完全にペースを握っていました。ただ、今日のこの気象条件。「前半飛ばしすぎたか…」という点だけが気がかりでした。

後半15分過ぎても好転しない展開に、札幌の石崎監督は宮澤に代えてハファエルを投入することで打開を図ってきます。ハファエルからキリノへのシンプルかつ効果的なホットラインで盛り返すと、やや足が止まり、中盤が間延びした熊本、ボールを奪えなくなり、ラインがズルズルと下がり始めました。ペースは札幌に。それでも数的に厚いディフェンスラインを敷いて必死に跳ね返し、札幌に全くと言っていいほど決定機を与えませんでした。怖いのはセットプレーだけ。誰もがそう思っていたことでしょう。

嫌な流れを断ち切るべく熊本は、縦への早い攻撃を試みます。自陣からのFKは、前がかりな札幌のDF裏を突くロングパス。飛び出す木島。かなり疲れの見え始めた木島でしたが、ここは奮起の勝負どころ。札幌DFに身体を入れられてクリアされかけますが、そこに入ってきたのは藤田。一旦、足元に納めたように見えましたが、慌てたCB柴田のスライディングタックルに倒されてしまいます。「よおしっ! PK!」溜まっていた緊張感を吐き出すかのように沸きあがるスタジアム。

試合後のインタビュー等によると、PKのキッカーは木島とあらかじめ決まっていたようでしたし、蹴ったコースも「スカウティング(の情報)通り」(5日付:熊日)だったそうです。しかし、前節もPKを止めているという高原にも「集めてくれたおかげで、やりやすかった。」というスカウティング・データがありました。右にも左にも微動だにせず木島のシュートをセーブします。裏の裏を読む駆け引きは、高原に軍配が上がりました。

これで再び息を吹き返した札幌。熊本が跳ね返したセカンドボールはことごとく相手に拾われ、波状攻撃を受け続けます。しかし熊本は原田、山内、吉井と次々にカードを切っていくことで、奪われた主導権を手繰り寄せようと必死のベンチワーク。ここが今日の試合で一番重要な時間帯だったと思います。これまで何度も、こんな場面で“切れて”しまっていた集中力。今日は必死に繋ぎとめた。ピッチにいる全員で。徐々に形勢が変わっていくのがはっきりとわかる。バックスタンド中央の一番高い位置からはよく俯瞰できました。スルーパスに判断よく飛び出す稲田。ハファエルに対応する矢野。奪ったボールは前線の山内へ。途中出場の入り方が身についてきたのか、山内。裏へ、裏へと多彩な飛び出しを繰り返します(相手は嫌だろうなあ・・・)。藤田も最後まで走り続ける。まったく落ちない運動量。選手全員が、横浜戦で払った高い代償を糧にして戦っている。最後の最後まで得点を諦めない。諦めたら勝ち点1すら奪われてしまう。

試合終了のホイッスルを聞いて、ピッチ上の熊本の選手みんなには笑顔がありました。それは勝ち点1ではあったものの、得られたものの大きさを物語っているようで…。気落ちした感じの札幌イレブンには、ゴール裏のサポーターの檄が飛ぶ。「まだまだ、これからだ!」と。まさしくリーグ終盤の様相でした。前節、仙台戦。0-1の敗戦のなかで、今期の到達点を探るような内容だったと書きましたが、今日は札幌を相手にその到達点をひとつ確かめられたような試合だったのではないかと。

浮気することなくもう20年もこのモデルを履き続けているというアディダスのコパ・ムンディアルの紐をゆっくりとほどきながら、藤田の顔にも安堵に似た笑みがこぼれ、同僚と握手しました。そして試合後、自身のブログにこう記した。「やはりサッカーは楽しい」と。この日は自身38歳の誕生日。試合前に用意された花束のプレゼンテーターは、愛娘と愛息の二人。第一クール横浜戦、三ツ沢のスタンドで彼が手を振る先にいた可愛らしい二人に間違いありませんでした。藤田の熊本移籍を最後まで躊躇させたのは、多感な時期のこの子どもたちを置いて単身赴任の生活を送ることだった。そう聞いています。関東遠征時、あるいは短い夏休みなどしか会えるチャンスはなかったはず。誕生日、彼にとって最高のプレゼントだったに違いありません。

終盤の苦しい時間帯、誰よりも最後まで走っていた藤田。緩急のパスを使い分け、あるときは人を使い、あるときは状況判断良く自らが飛び込む。日本のサッカー界に燦然と輝く実績と実力を持つこの男が、熊本の一員であることが、あらためて(いつもそうなんですが)不思議な感じがして・・・。今日の試合、札幌を相手にして危うさは全くなかった。十分に勝機があった。一緒にここまで来れた。

「何歳まで続けるかということより、どう続けるか」なのだと言う藤田。ブログでは「まだまだ元気にプレーし続けたいと今日あらためて強く思いました(笑)」と書いてくれました。熊本では絶対コパ・ムンディアルを脱がせない。われわれファンもそう心に誓った一日でした。

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