10月21日(水) 2009 J2リーグ戦 第46節
水戸 0 - 1 熊本 (19:04/笠松/1,408人)
得点者:67' 宮崎大志郎(熊本)


51試合。長いリーグ戦のなかでは、調子の浮き沈みは必ずあるもので。例えば開幕ダッシュに出遅れた感のあった鳥栖や札幌が、その後の建て直しで、今は昇格戦線に喰らいついているし、草津のようにとても波の激しいところもある。怪我や出場停止のなかでの選手のやり繰り、連戦のなかでのコンディション管理等、いろいろなファクターがあってのことなのでしょうが、毎回のように書いている「モチベーション」なども大きな影響を与えるものだと思うのです。

水戸が7連敗と苦しんでいる。一時は前述の2チームとともに、昇格戦線に入り込もうとしていた水戸が・・・。ひとつの戦術パターンのお手本として注目していたあの水戸が。ちょっと信じられないその状況にあります。何か選手のモチベーションに関わる重要な出来事があったのではないか? などという邪推までしてしまいます。

現状を打破するためか、この試合、システムや選手をいじってきた水戸。星野や堀をスタメンに起用し、ファイターの菊岡をトップ下に置いてきました。そして蓋を開けてみれば、何のことはない。「勝ちたい」と思う気持ちは、調子の上がらないわが熊本を上回るようなものを感じさせました。

熊本はミッドウィークの連戦を配慮してか、藤田をベンチスタート。攻撃のタクトを振るのは、前節もこのポジションに入ったダブルボランチの一角の原田拓。出場停止の右SB・市村の代わりには宮崎。木島と宇留野の2トップという布陣。

水戸 (先発フォーメーション)
13吉原9荒田
 8菊岡 
6堀23遠藤
 19森村 
2小澤30中村
32大和田21星野
 1本間 

序盤からというより、試合を通して全くの互角。11分、吉井の長めのロブに飛び出した宇留野が右サイドを破り、ダイレクトでシュートを放ちますが、ファーポストに嫌われる。直後には、カウンター気味に水戸FW・吉原が左サイドから早くて低いクロスを放り込み、誰かに合わせられれば一巻の終わりというシーン。18分には吉井が高い位置で奪い、そのまあ強いシュートを放ちますが、これも僅かに枠を捕らえきれない。24分にはCKに上がった矢野のヘッド。ドンピシャでボールをつかまえますが、惜しくも左に反れる。すぐ後には、水戸の荒田が熊本の最終ラインを破る。DFと競い合いながらも、その体躯を活かしたシュートは決定的!これは木下がファインセーブして事なきを得ます。スコアレスで前半を終えますが、互いに「勝ちたい」「連敗から抜け出したい」という気持ちが激しくぶつかった五分五分の勝負に見えました。

後半開始時もベンチに座る藤田。なにやら北野監督としきりに話し合っている様子が、テレビ画面に映ります。ピッチの外から状況を見守っている。初めてスタメンを得たという水戸の堀健人。JFL時代も苦しめられた彼のスピードは健在で、持っては思い切りよく走られ、クロスを上げられる。なんとか木下が先にさわるものの、高い“モチベーション”に手を焼きます。

あわや失点かと思わせたのは50分、水戸のFKを木下がパンチング。これを吉原がダイレクトで叩くとゴールネットを揺らす。しかし、大和田のキーパーチャージで得点は認められず、胸をなでおろします。カウンター合戦の様相。水戸は吉原に代えて高崎を入れてくる。高さも速さも兼ね備えた嫌な相手。対する熊本は宇留野を下げて中山を投入します。

値千金の決勝点になったのは67分、中山に入ったクサビのボールを原田が預かると、左に流れて木島にヒールでマイナスパス。相手の詰めの甘さを感じ取った木島が、それを豪快にミドルで放つ。堅守に貢献している水戸のGK本間も、これにはたまらずパンチで逃れますが、そこには最終ラインから上がってきていた宮崎。バイシクル体勢だった中山が宮崎に譲ると、右足で確実に押し込みました。一瞬の攻めの好機を逃さない、リスクをものともしない全員攻撃。アタッキングサードで仕掛ける絶妙のパターンを見せてくれました。

ところがこの後、試合は急展開。得点を決めた宮崎が2分後、2枚目のイエローで退場。一気に形勢は水戸に傾きます。エリア内でのバックパスを見逃さず飛び込む荒田の気迫溢れるプレー。しかし、予想もしなかったであろうこの展開に、今日のベンチ要員が(おそらく結果的に)奏功することになりました。ひとり少なくなった熊本は、西森を下げて、河端をCBに入れて福王を右SB、木島のワントップに。“人に強い”河端に、あの厚別・札幌戦の再現が期待されました。そして何より効果的だったのは、最後のカード。残り10分近くになって原田に代えて藤田を投入。もちろん藤田に下がってのディフェンスを求めるのではなく、前目でタメを作らせ、守りの負担を軽減させる。あわよくば追加点を狙うという戦術でした。

藤田と木島で作る“時間”。木島が「ここまで体力が残っていたのか」と驚かせるほど、前線で動き回る。その運動量。その存在感。まったく人数差を感じさせない、おそらくはこの2人で3人分を構成したような形ではなかったかと。チーム全体が意思統一された熊本のプレーで、逆に焦り始めた水戸にファールが増える。

そしてついにロスタイムも経過し、終了間際の水戸のFK。何度も嫌な思いをした時間帯。やはりDFとGKの間が狙われる。飛び出した木下が触れない。ヘッドで繋がれ荒田が突き刺す。絶体絶命のこのピンチに、ゴールマウスに立ちはだかったのは福王。懸命に足を伸ばし跳ね返した!「またか!」と一瞬、テレビの前で目を瞑ってしまいます。「入っていた!」。水戸の猛アピールに、首を横に振る主審と副審。間一髪で助かった。まだまだ続く水戸のセットプレー。FKにGK本間も上がる。連敗から脱したい一心。最後のCKに頭で合わせた本間。しかしそのボールはゆっくりと弧を描いてクロスバーの上を越えていきました。

そうです。水戸に初めて勝利を収めました。J昇格以来、本当に初めて。持っていた苦手意識をなんとか払拭できた。長いトンネルに入っているとは言っても、やはり相変わらず水戸は水戸でした。スピードを活かし、縦に早い攻撃。J2で一番パスの数が少ないとにかく早い攻撃。GKと高いCBを中心とした堅い守り。そんな水戸を、目の前にあるひとつのモデルと言っていた藤田。同級生の木山監督の苦悩を、今日はどう感じとったのでしょう。

その藤田をベンチで温存していた今日の熊本。幸運と言っていいのでしょうか。当然、戦前のプランでは攻撃的オプションだったのでしょうが、今日発揮された彼の役割は、 “逃げ切り”だったことは明白です。画面ではあまりよくわからなかったのですが、実況アナによれば、ピッチに入った途端、一人ひとり余すことなくチームメイト全員に指示を送ったという藤田。それは戦術的なことだったのか、あるいは精神的な言葉だったのか。ピッチサイドでいくら監督が叫んでもできないことが、この男には出来る。まさしく“現場”監督。このことがなかったら、福王のスーパープレーはまだしも、逃げ切ることは叶わなかったのではないか。持ちこたえることはできなかったのではないでしょうか。これも“たら”“れば”のうちとは知りながら、どうしてもそう思えてしまう試合。第1クールの東京V戦のときのように、藤田の存在を強く印象づけた。そんな試合でした。

「次節のホームでは、内容も伴うゲームをして勝利したい」。確かに今日は、彼にとっても熊本にとっても“会心”のゲームではなかったものの、ブログに綴られた彼の気持ちは、すでに今週末の湘南戦に向かっています。残り少なくなったホームゲーム。精一杯、後押しをしたいと思います。

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