11月8日(日) 2009 J2リーグ戦 第48節
栃木 0 - 2 熊本 (12:33/栃木グ/3,180人)
得点者:44' 藤田俊哉(熊本)、79' 小森田友明(熊本)


いつものように試合後、J‘sゴールの監督インタビューを覗いたら、敵将・松田監督のコメントに驚かされました。「今の時点では何が敗因なのかちょっと整理できていない。」終了直後とはいえ知将で鳴らした彼らしからぬ言葉。何か言いたいことが喉に詰まっているのかとも邪推してしまいますが、現状の悪循環に対して「1番の薬は年度が変わることなのかもしれない。」とまで言ってしまって・・・。チーム作り(選手補強)に加われなかった今期への恨めしさなのか。それにしてもスカパーのアナが言ったとおり、戦前熊本を“ダイヤモンド型”と想定して練習していたのだとしたら、スカウティングはどうなっているのでしょう。チームスタッフ全体の脆弱さを憂えているのかも知れません。

6月以来の栃木戦。3回目の対戦には、前線にチェ・クンシクとレオナルドという新たな顔がいて、左サイドには河原を置いてきた栃木。「熊本には勝ちたい」「勝てる」という気持ちがあったのでしょう、序盤からゴリゴリと押し込んできました。

栃木 (先発フォーメーション)
30チェ・クンシク 28レオナルド
20河原18向
13米山15鴨志田
6入江2岡田
5落合32宮本
 1柴崎 

熊本は木島と小森田の2トップにしてボックス型の中盤にシフトされていましたが、藤田が単純に左で張っているはずもなく、いつものように流動的に動き回る。栃木には適当にフリーにさせてもらいながら、原田、吉井のボランチを助け、西や松岡の上がりを促します。15分頃から栃木のプレーが少しずつラフになってくる。パスミス。コンビネーションの乱れ。最初に苛立ち始めたのはチェ。そしてそれがレオナルドに伝播すると、最後は河原までイライラし始めたのがわかりました。

栃木のアグレッシブな試合への入りと、その後のバタバタした展開に、試合自体が落ち着かず、熊本もなかなか好機が作れないままでした。それでも、栃木の攻勢は予想していたことのように受け止め、いなし、あえてリスクを冒さず、機を見たカウンターを仕掛ける熊本。試合を“運んでいる”なという感覚が。逆に栃木には“うまくいかない感”が広がってきます。それでもボランチに入ったベテラン米山が孤軍奮闘。ゴール前30メートルのところから無回転FK。あるいは右サイドから回してフィニッシュ。と熊本ゴールを脅かします。そんな感じの前半ロスタイム、右サイド宇留野からのクロスを中央の小森田がシュートできず、そのこぼれ玉をエリア内右で拾った藤田がDF宮本を切り返しで交わして左足で流し込みました。絶好の時間帯で先制。

後半早々、MF向に代えてFW若林を入れてきた栃木。3トップか、あるいはレオナルドを一列下げたようにも見えました。二度、三度、レオナルドがドリブルで右サイドを破ってくる。市村の代役として右SBは初めて努める松岡の負担が増える。鋭いクロスを上げられますが、その精度と栃木の“上がり”の薄さに助けられました。ここで松岡が宮崎と交代。その直後、カウンター気味のロングパスが木島に渡る。振り向けば2対1。そのままドリブルで突っかける。わずかにエリアの外でしたが、木島が宮本に倒され、宮本に一発レッドカードが示されます。守りの中心を失った栃木。一人少なくなった栃木はそれでも点を取りに行かなければいけない逆境に、要の米山をCBに下げました。

この相手の焦りと混乱を見逃さなかった熊本。右CKを宮崎が蹴ると、ボールは米山の頭上を越えて、飛び込んできた3人(いや待ち構えていた4人と言えるかも知れません)の赤いユニフォームのかたまりのもとへ。一番ファーの小森田の頭がそれを捕らえると、栃木のゴールネットに突き刺しました。栃木がゴール前をゾーンで守ることをスカウティングしていた熊本ですが、それにしても・・・。退場した宮本のゾーンが修正されていなかったのかどうか、CKの守備としてはあまりにも手薄で不備なシフトでした。

さらに熊本は木島を下げて山内を投入。これまた予定通りとも言える“攻撃的な”逃げ切り策。栃木はチェと鴨志田を下げて石舘、伊藤で追いすがる。しかし栃木の波状攻撃からのミドル弾にも、吉井が飛び出しチェックする。今日は守備に専念していた感のある原田がソンジンと交代。時間を使う。ロスタイム3分を消化し終了のホイッスル。「してやったり」の満面の笑みの熊本イレブン。崩れ落ちるようにピッチに大の字になる栃木選手。その瞬間、90分間猛烈な声量で歌い続けた栃木のゴール裏が、異様なほど静まり返りました。時おり響く栃木サポーターの怒りの声。関東サポの勝利のチャントだけが遠くから、やけにくっきりと聞こえてきます。

「システムは、機織り(はたおり)に似ている。」と言ったのは誰だったでしょうか。4-4-2や3-5-2など色々なシステムがあるにせよ、それは結局、フィールド上に縦の糸と横の糸を紡ぐことなのだと。そして機織り機がそうであるように、最も重要なのは「縦の糸」なのだと。流動的な熊本のシステム、追い越す動きもあることを考えると、ちょっと複雑で分かり難さがありますが、要は縦の選手同士の関係なのかと。今日の熊本は選手間の距離が良かった。いつかも書いたように、小森田と藤田、吉井と原田とCB、その縦の距離間がいいときの熊本は強い。そんな感じがします。コンパクトということでしょうか。今日の実況アナがゲーム中、藤田、木島、宇留野、藤田、吉井・・・の位置関係が刻々とシフトするのをいちいち伝えてくれていました。テレビ画面では捕らえきれない流動性ですね。

一方、栃木はチェやレオナルドが加わって、縦の推進力は確かに力強くなりました。しかし、その2人だけの推進力頼みでは、点に結びつかないのかと。それは縦に伸びきってしまった糸なのかも知れません。

「ちょっと遅かったですけど・・・。」試合後のインタビューにハニカミながら答えた小森田の今期初ゴール。今日は試合展開のなかでフルタイムを任されました。今期の北野監督の構想でFWにコンバートされた小森田。われわれがシーズン前、期待半分であまり根拠も無く書いた“小森田ゼロトップ”が、意外や意外、実際に姿を現して・・・。それでも結果が伴ったとは言えなかった今シーズンの状況に、われわれもちょっと居心地の悪さに似たものを感じていました。それでも、形は変わったものの北野監督はここにきて“意地”のように使い続けている。

実は、北野監督が小森田に求めたものは、ゼロトップというより、本来のFWの仕事ではなかったのかと思ったりもします。ゼロトップという働きは、シーズン途中、藤田が表現したプレーがわれわれのイメージには近かった。一方、小森田が託されたものは、あくまで前線でのターゲットマンであり、彼のテクニックによる“タメ”ではなかったのかと。しかし、タフなディフェンダーに身体をぶつけられながら前線で勝負するには、いくらチーム1、2を争う体躯とはいえ、あまりにも厳しすぎた。そこはやはりFWの“DNA”を持ったプレーヤーの戦場なのではないだろうかとわれわれは思ったのです。反面、2列目、3列目が追い越す動きで得点するというチームコンセプトからは、小森田の無得点にもあまり不満は感じていませんでした。それよりも何故こうまで“無理”をさせ続けるのか、という思いが強かった。彼自身が自分の役割について誤解、混乱をしてしまうのではないかと・・・。

「ここからが自分の開幕です。」と語った小森田。われわれ外野席からは推し量れない苦悩を乗り越えたような表情にも見えました。

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