昨日、北野監督が来期契約を更新されないことがクラブから発表されました。リーグ終盤とはいえ、ある意味で電撃的です。鳥栖・岸野監督のケースと同様に監督自身の今後の転進に配慮したタイミングということなのかも知れませんが、「クラブ側は『熊本をJに上げた功労者』としてユースチームの監督として残留を打診」(12付・熊日)しているようで、その去就は今のところ見えていません。ともかくはっきりしているのは北野監督が今期限りでその任を終えるということです。

ロッソ発足時、招聘された池谷監督(現総監督・GM)とともにヘッドコーチに就任した北野誠氏。日立製作所(現柏)時代の池谷氏の同僚選手であり、引退後は京都のジュニア育成部門を長く手がけていました。1年目の九州リーグ、2年目、3年目のJFL、そしてJ2昇格の昨年とヘッドコーチとして池谷体制を支え、S級取得と同時にJ2年目の熊本の監督を任されました。当初から「プレーしている選手も、観ている人も楽しいサッカー」を標榜し、J一年目で直面した課題に対して、ボールも人も動く攻撃的サッカー、アタッキング・サードを崩して行くダイナミックなパスサッカーを目指しました。

シーズン序盤は、単にボールポゼッションに固執した、攻撃のアイデアに乏しい試合内容が続き、また「1点取られたら2点取り返すサッカー」というほど偏重したその攻撃性の裏返しとして、どうしようもない守備崩壊の試合が続きました。しかしシーズン終盤にきて、攻守のバランスも安定し始め、辛勝ながらも「熊本は面白いサッカーをする」という評価が定着し始めていたところでした。

「成績面で今季掲げた目標(10位以内)を達成していない。県民運動としてピッチ外の活動についても、考え方の違いがあった」(池谷GMコメント・12日熊日朝刊)

どんなにいいサッカーをしたとしても、当初クラブが掲げた10位以内という順位目標(ミッション)に到達できなかったことに対し、プロとして責任はとらなければいけないのだろうし、だからこそ選手起用を含め、試合に関する全権を委ねられているのが監督という職業なのでしょう。スタンドから見守るしかないわれわれには推し量ることもできない、色々な事情がこうさせたのだと思われますが…。また「県民運動としてピッチ外の活動についても、考え方の違いがあった」という部分も気になるところです。

昨日のテレビ報道のなかでは「J1昇格を目指すという目標と合わせて総合的に判断した」(というニュアンスだったと思います)というGMコメントもあったようです。ただ、現実的なものを見回せば、熊本の今の体制、状況のままでの“J1”というのはとても考えられないということも認めざるを得ません。しかしそれでも、そういった状況を打破すべく、ここにきて、再度、「県民運動」の巻き直し、官民からの人材補強で体制強化が進んでいるという動きも耳にしています。こういったもう一度大きな流れを作っていこうというなかで、チーム、フロント一体となって進んでいくべきところで、“考え方に違いがあった”のは決して小さな問題ではなかったのではとも推察します。

「サッカー批評」の44号の中で、日本の元祖GMと評された岐阜の今西社長兼GMがこう言っていました。「J1とJ2、JFLでは求められる監督のタイプは違う。(中略)トップリーグ(J1)では戦術や戦略に長けた人物、J2などはそれよりも教育者の人格を持った人材が向いている」と。先日機会があって、その話を池谷GMにしたら、「そういうこともあるかも知れませんね」と笑いながら頷いていたのを思い出しました。

どういうタイプが選ばれるのか分かりませんが、新たな熊本の指導者に対して、もうすでに交渉が始まっているのでしょうか。ただ、監督が変わってもこれまで積み上げてきたものの“継続性”だけは重要視してほしいものです。毎年のように変わる指導者(とその方針)に迷走させられるようなチームにだけはなりたくない。そう思います。だいぶ以前、池谷前監督の采配への批判が集まった時期。われわれは監督解任論争以前に、クラブにとっては監督を評価・裁定するGMという存在が先決なのだと、そもそもの建前論を述べたことがあります。そして今回は、そのGMがクラブの現状と将来を見据えて出した“総合的な”結論だと信じます。熊本というクラブが生まれて初めて、GMと監督とそしてファンとの間に敷いた“緊張感”のようなものを実感しました。

われわれは、今季、北野監督が掲げた“戦術面”でのビジョンは決して間違ってはいないと思っていますし、今回の退任で今期の熊本の戦い自体が否定されるものでは決してないと思います。サッカークラブにとって、経営ビジョンや(今の熊本なら)J1昇格を目指すためのプランを示すのは社長という立場だし、その昇格プランへのプロセスをチーム強化という(監督人事も含めた)仕事で示していくのがGMという立場なのだとしたら、今期の北野サッカーが決して“熊本サッカー”の完成形ではなく、これからも積み重ねていくものこそが、“熊本サッカー”と呼べるものになるのではないでしょうか。それはある意味誤解を恐れずに言えば、誰が監督になるにせよ“継続”されて“積み重ね”られていくもの。ひょっとしたら、終わりのない、ずっと追い求めていくべきものなのかも知れないと思うのです。これからのクラブのビジョンと、それに呼応するファンがともに行う息の長い大切な積み重ねの作業。例えれば、ガウディの遺志を継いですでに100年以上も建設の続く「サグラダ・ファミリア」のように。「あそこのあのレンガは私が積んだものだ」ということなのかと…。

縁あって、何もない熊本のチームに集い、共に戦った北野監督。狭き門であるS級資格を取得し、1年ではあったがJ2熊本の監督として腕を奮った日々。監督としても、ヘッドコーチとしても、熊本のサッカーの飛躍のために本当に力を尽くしていただいたことに、改めて感謝のことばを贈ります。あと3試合。これまでの5年間に思いを巡らせながら精一杯の応援をしたいと思います。

TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/225-d4407378