11月21日(土) 2009 J2リーグ戦 第49節
東京V 0 - 2 熊本 (17:03/味スタ/4,736人)
得点者:16' 吉井孝輔(熊本)、43' 小森田友明(熊本)


日テレから経営権を譲り受けた新会社「東京ヴェルディホールディングス」が、リーグから課せられた、“存続条件”である“スポンサー料5億4千万”を確保し、理事会が来期もJ2に参戦できることを承認したのは、この試合のたった4日前でした。この“締切日”=“裁定の日”の直後の対戦相手がうちとわかっていたので、承認されて胸をなでおろしたのが正直なところです。名門ヴェルディの灯が消えなかったこと、関係者の努力にこころから拍手を送ります。

その直後には多くの契約満了選手と、今期途中から指揮を取ることになった松田監督の退任も発表されて。また、この試合には大黒やレアンドロの姿もなく…。腕組みしながら見守る崔暢亮会長の姿が画面に映し出されるのを見ると、すでに新生ヴェルディの歩みが始まっていることを実感させられました。

熊本も北野監督の退任が発表されてから初めての試合。ひょっとしたら、各選手も契約交渉が始まっているかも知れません。しかし、画面越しに見る彼らの表情には動揺など微塵も感じられず。北野監督の表情もしかり。「残り3試合をしっかり勝つ」。その一点。そして先発フォーメーションもいつもどおりのものと言えました。

東京V (先発フォーメーション)
13井上 7河野
16飯尾18永里
28弦巻8柴崎
3廣井2福田
14富澤17土屋
 1土肥 

戦前のインタビューで藤田は「ヴェルディというパスサッカーチームに、堂々とパスサッカーで戦いたい」と言っていたそうです。試合は、そんな両者が互いの持ち味を前面に出した展開になりました。高い位置から果敢にボール奪取を試みるヴェルディに若干の優位を感じさせる序盤でしたが、10分、最終ラインで西が落として吉井のミドル。熊本の得点の形を思わせる“伏線”のようなプレーがありました。先制点は16分、熊本のポゼッションから藤田がDFを背にしてキープするも倒されて奪われる。しかしこのDFのクリアを拾った吉井が豪快に振り抜く。横っ飛びのGK土肥も届かない角度で、ヴェルディゴールに突き刺さりました。

ヴェルディは、短いパス回しの熊本のボールを、高いところでインターセプトする狙いのようでしたが、これもまた、ある意味で想定内の熊本、うまくかわしながら、“こんな時間帯だ”とばかりに割り切って凌ぎ、長短を混ぜて、なかなか思うようにいかせない。奪っても、熊本の戻りが早く攻めきれないヴェルディ。右の永里が何度もエリアを脅かしますが、しっかり人数をかけて守り、ポジションを間違えない熊本に遮られ、決定機にはなりませんでした。

そして前半も終了間際、左サイドでもらった西がカットインでエリア内に突っかける。切れ味の鋭さに、ヴェルディDF福田も倒すしかありません。主審も躊躇せずPKの判定。これを小森田がゴール右角にきっちりと決め、土肥を再びピッチ上に横たわらせました。この日の西。サイドから、正面から、挑むようなドリブル突破を見せていました。まさにこのPK奪取の伏線のように。

2点のビハインドを覆すために、後半早々ヴェルディはFW平本、すぐあとにはDFを下げMF藤田を入れ前掛かりにしてきました。しかし熊本がペースを握らせない。ヴェルディの攻撃をうまく潰し、セカンドを拾ってはポゼッションに持ち込む。石井の故障・離脱以来続いている吉井と原田のダブルボランチの完成度は試合ごとに増し、パスを出してはスペースに動き出す。攻守の役割分担が阿吽の呼吸。パスサッカーの本家とも言えるヴェルディ相手に、自信を持って“回し”“つなぐ”熊本。往時を知るロートルファンからすれば夢のようです。

2点リードの熊本は、ここしばらくの戦いぶりそのままに、まったく予定どおりに小森田を下げて中山、松岡に代えて宮崎。ヴェルディは注目の高校生・高木で最後のカードを切ってくる。新生ヴェルディにとって、河野や高木といった日本代表をも伺うユース育ちのタレントたちが今後の重要な資産。いえ、そういう伝統的な下部組織の育成システムこそが、今後もこのクラブの大きな資産だと言えるでしょう。

しかし反面、そんな“若い”ヴェルディには、今日の2点のビハインドを払拭するテコのような力がなかった。ちょうど第1クールの対戦で、反撃の狼煙を上げた熊本の藤田のような精神的支柱の存在に欠きました(せめて服部でもピッチにいれば…)。うまくいかない、それどころか目の前で小気味よくパスが回る熊本のポゼッション。イライラも相当なものがあったはずです。カメラが追いきれず、経緯はよくわかりませんでしたが、CKからの一連のイザコザで平本が矢野を突き飛ばし一発レッドで退場。矢野に対してもイエローが出され、今後の残り2試合を棒に振るという非常に残念な結果になりました。

今シーズンの3回の対戦で、それぞれ違った顔を見せた感のある東京ヴェルディ。それは今期、まさに再建問題の只中にあったことも多分に影響しているのかも知れません。一方、ここにきての熊本の好調さは、いつかのエントリーで書いた“変数”が、ちょうどうまいように“最大値”を描いている感じがしています。周りを見回せば、破綻とも言えるような大分の財政。縮小を余儀なくされている福岡の来期事業計画。ただでさえ儲かるビジネスとは程遠い日本のプロサッカー。この不況下において、クラブが歩む道は、とてつもなく厳しい。そして他人事でなく、われわれも同じ場所を歩いていることに違いはないわけで…。
今まさに契約交渉の真っ最中(多分…)、場外にいるわれわれは報道に振り回されがちになりますが、どんなことがあっても信じて支えていくしかないだろうと。味スタのゴール裏。画面に映るわがホームチームのサポーターたちの“ロアッソレッド”の美しさが目に染みるようで。決意を改めるような気持ちで見入っていました。


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