12月5日(土) 2009 J2リーグ戦 第51節
甲府 2 - 1 熊本 (12:33/小瀬/13,104人)
得点者:2' 金信泳(甲府)、23' 金信泳(甲府)、28' 小森田友明(熊本)


まさしくプチ・パンデミック(爆発的感染)。その名のとおり、ホーム最終戦の感傷も癒ぬこの一週間、熊本はインフルエンザ感染に見舞われました。最初に公式に発表されたのは市村。続いて松岡、宮崎、原田、河端の発症。他にも体調不良の選手がいることも噂され、これで果たして最終戦が戦えるのだろうか、11人のメンバーが揃うのだろうかとまで心配させました。

それでもなんとか試合の2日前には、かなりの人数が練習に合流。ほとんどの選手の発症は11月30日から12月1日。通常、タミフル(あるいはリレンザ)を投与した日から2日後に熱は下がるものの、その後も数日間は安静が必要(というよりフラフラの状態が普通ですが…)とされます。そういう意味では、甲府・小瀬のピッチに立っていた市村と原田。恐るべき回復力。まさしくギリギリの復帰だといえるでしょう。

前節のエントリーの最後に、「このチームとしての最後の戦い、このシーズンの到達点をしっかりと見届けたい」と書いたものの、こんな状況で最終節を迎えることになるとは思ってもみませんでした。DFラインは前節、前半半ばで痛んでリタイアしたチョ・ソンジンと福王をセンターに、右に市村、左に網田。ベンチには控えのDFは一人もいない。しかも小瀬のスタンドは、この最終節で勝利して、逆転でのJ1昇格を信じる甲府のファンの声を限りのチャントがテレビから伝わってくる。更に追い討ちをかけるような、12月の冷たい雨。

甲府 (先発フォーメーション)
 18キム・シンヨン 
11マラニョン9大西
7石原10藤田
 31林 
3御厨20吉田
4山本5ダニエル
 34阿部 

古巣に対して序盤からアグレッシブな宇留野の動き。右サイドを崩していきます。(試合途中では、今期限りとなった甲府の安間監督に、ピッチサイドで肩を叩かれる場面も。)しかし、試合は思わぬ展開に。甲府の1点目も2点目も、マラニョンの切り替えしのキレに振り切られたことや、人数は居るのにボールウォッチャーになってキム・シンヨンを放してしまったことなど、DFの若さが露呈してしまいました。どうしても、球際に厳しく来る甲府に押され、各人の判断がやや遅れがち。そこかしこにチームのコンディションの悪さが見えるようで。そんななか、早い時間帯での2点のビハインド。本当に久しぶりのシチュエーションです。しかし、以前であれば“キレて”しまって立て直せなかったような試合の流れ。今日は辛抱強く自分達に引き寄せていきました。

徐々に甲府の攻撃がロングボールの放り込みで単調になります。対照的に熊本はしつこいくらいパスで繋いで、前線に運んでリズムを作っていく。ひとつの目指すべきモデルとしてあったパスサッカーの甲府を相手に、自分達のパスサッカーを貫こうとする選手たち。彼らもやはり今シーズンの“到達点”を探っているように思えました。

28分、原田の強烈なロングシュートをGKが弾いたところに、詰めていた小森田が押し込む。「今日が僕の開幕戦です」と言った栃木戦からまさかの4連続ゴール。そのときのエントリーで「FWにはFWのDNAがある」といったことを書きましたが、今日の小森田、もらったパスをワンタッチで反らしDFを交わしたり、2列目でパスを出したあとエリアに侵入したり…。“タメる”ことへのこだわりから一歩抜け出し、随所にFWっぽい、いい働きを見せました。もちろん、周りが彼の使い方にうまくなったということもあるのでしょうが、終盤での4連続ゴールは、その“ご褒美”ではないかと思いました。

それにしても特筆すべきは原田の働き。得点シーンの前にも、「あわや」と思わせる直接FKがあったり、その時の「フィーリングが良かった」とはいうものの、とても数日前まで高熱でうなされていた選手とは思えない左足の冴えぐあい。ボールのスピード、変化、球筋など、これまでにないキレを感じました。「後半は咳が止まらず正直苦しかった」(熊日)と言いますが、最後は左SBまで努めた90分の運動量。吉井とのダブルボランチは安定感を増し。来期、熊本の中心でチームを引っ張る選手であることは間違いないと思わせました。

一気に同点も、と思わせましたが、そこはさすがの甲府。そのままの点差で押し切られてしまいました。しかし終始、切り替えの早い攻守の応酬に、最終節らしく両者いいゲームを演じてくれました。

ミスも多かったが交代で退くまで積極性を失わなかった網田。前節痛んだにもかかわらず出場を志願したというソンジン。おそらくまだ万全ではないだろう市村。インフルエンザではないものの、激しい咳き込みで背筋を痛めたという藤田。チーム全体が満身創痍。しかし、普通なら立っているのもキツイはずなのに、苦しい表情どころか、皆どこか笑顔で、スッキリしたような顔つき。契約満了が決まっている選手たちも、今日のこの最後のゲームを楽しんでいるようで。このチームでやる最後のゲームを…。

さて、勝利はしたものの、昇格を逸した甲府。長いシーズンのなかで、4強と呼ばれ、最初から最後まで昇格ラインを伺う位置にいました。命運を分けたのは、わずかに勝ち点差1という現実。51試合というかつてない試合数の積み重ねのあげく、わずか勝ち点差1の間にラインが引かれ、また来期、共にJ2を戦うことになりました。

そしてわれわれ熊本。今シーズンは甲府に対して一勝もできませんでした。しかし、この最終節、昇格を争うチームの“痺れる”ような状況のゲームの相手を演じられたことは、熊本の大きな財産になったことに違いありません。しかも、こんなアクシデントにも動じることなく、がっぷり四つで、最後まで甲府を脅かしました。昨年の最終戦、KKでの広島との戦い。スコアは偶然にも同じ1-2ですが、昨年感じたような、まだまだ埋めようがない落差といった感じではなく、また、それは、先日、水前寺で湘南に勝利したときとも違うさらに“僅差”の感覚を持ったのはわれわれだけしょうか。

仙台、C大阪、湘南を見送り、来期は柏、千葉、大分が落ちてくることになりました。JFLからは新しく名前を変えた北九州が参戦してくることに。われわれはといえば、今期果たせなかった目標を、もう一度掲げなおして戦うことになるのでしょう。果たしてどんなチームに構成されるのか。“場外”の戦いは既に始まっていると書きましたが、まずは指揮をとる次期監督が誰になるのかが、最大の関心事です。ただ間違いなく言えることは、誰が指揮をとり、どんな新しい選手が来ても、今年までに築いた熊本の財産がチャラになるわけではなく、更にその上に積み増していく作業になるのだろうということ。それをまた見続けていきたい、見守っていきたいと思います。その意味でも、この最終戦。敗戦ではあったけれど、今シーズンの“到達点”を見せてくれた価値ある一戦として、しっかりと記憶に留めておくべき戦いだったなと思いました。そして、去っていく選手たちも含めて、そんな気持ちにさせてくれた全ての選手達に拍手を送りたいと思います。

TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/228-16b7dd27