16日、今季の新体制発表記者会見が開かれました。そこで表明されたのは、J1昇格への強い意思であり、それを成し遂げるための確かなビジョンだなと感じました。ある意味、この時期の新体制記者会見で、これだけはっきりしたビジョンを示したクラブは他にはないのでは(…そこまで言ってしまうのは言いすぎでしょうか)。

「今までは言葉が先行していたようにも感じていたJ1という目標について、選手も、クラブも、そして地域も含めて本当にそれを感じ取れるようにしたい」と語った池谷総監督・GM。クラブとしてのシーズン目標のなかで「クラブ専用練習場の見通しを立てる」ということを第一義に掲げました。岡社長もこの日の会見で、この専用練習場も含めたクラブの“環境面”による見劣りが、ゴン中山獲得戦の敗因だったと明言しました。

公的な施設環境には比較的恵まれているだろうと思う熊本県。しかし、それは公的な故にロアッソという一民間クラブについての優先使用権を認めてはくれない。ご存知のようにチームは日替わりで練習場を渡り歩くという現状が続いています。かと言って、自力で練習場を整備するためには、億という額の資金が必要。徳島というクラブは、3シーズン近く下位に沈んでいたものの、そういった環境整備は着々と進めて、いよいよ本格的な飛躍(チームづくり)を目指すのかと言われています。徳島にみる大塚製薬のように大きなバックボーンを持たない熊本、われわれは公的施設の「指定管理者」という制度が有効ではないだろうかという私案を持っていました。AC熊本が、その施設の指定管理者として運営することによって、トップチームの優先使用権を得ながら、その他のチームやその他の市民スポーツに関しても利用運営を行っていく。ロアッソのクラブハウスがあるホーム練習場であって、その他の市民スポーツも活用できる“ロアッソタウン”のような場所。いかがでしょうか。実際には色々と制約があるのかも知れませんが…。

いずれにせよ、この「見通しを立てる」という言葉は微妙で、年度中の着工とか完成ということではなくても、計画の道筋は立てるつもりと言ったような、まったくの夢ものがたりではない可能性を含んでいるようなニュアンスを感じます。期待するだけでなく、大いに応援していきたいものです。

次に掲げられた目標は「個人協賛の拡大」。これは先に発表された「『ロアッソ熊本をJ1に』愛募金」によるものですが、目標額も明確に5,000万円とされました。次が入場者数1試合平均7,000人という目標。ファンクラブ会員3,000人。企業協賛(企業スポンサー)300社。いずれも数値目標が明確化されました。こういったわかりやすい数値が示されたことは、次に進むべき道標のように感じます。J1昇格へ一歩一歩登っていく、今何合目なのかという道標です。

しかし、このような環境面、経営面での明確な目標に比べて、チームについての数値目標ははっきりさせていませんでしたね。これは、高木新監督に長期的に任せるということと捕らえていいのか。チーム作りについては、昇格までの逆算で新監督に基盤づくりから託していこうということなのかも知れません。これまで蓄積してきたものの上に積み重ねるのだとはいっても、そこにはどこか“仕切りなおし”をするような大きな体制変換を感じる。池谷GMが、現場を預ける二人三脚の相棒として高木監督への厚い信頼感が伺えるようです。

昨年、空席だったヘッドコーチには、柏から清川浩行氏を招聘しました。長く柏の育成畑を歩いてきた人のようです。本人はトップチームのコーチは初めての経験のようですが、池谷監督時代の北野氏のように、高木新監督を陰で支えるポジションは、チームにとって非常に重要です。

もうひとつ目をひいたのは、これも柏からやってきた飯田正吾氏が就任したチーム統括部長という新たな役職。想像するに、これはGM職の下に置かれる、いわば強化部のようなものなのかと。スカウト担当だった森川氏が、コーチとして現場に移ったことでその役割はどうなるのかと思いましたが、この飯田氏の職が、その部分もカバーするのかも知れません。これも、J1昇格を伺うこれから数年において、競合チームに対して競争力のある“スカウティング能力”を組織的に強化する狙いなのではないかと思いました。

さて、肝心の戦力補強面を見れば、年明けから名古屋の平木良樹選手のレンタル、そして神戸を解雇されていた松橋章太選手の獲得が発表されました。平木は、西や山下と同期の流通経済大で10番を背負っていた逸材。松橋はいわずと知れた国見高出身のスピードスター。地味に見えるようですが、これは期待できる確かな補強ですね。

加えて会見で池谷GMは、まだ補強は終わっていない風のことをほのめかしています。昨年末お話したときに「補強は真ん中、中心ライン」と言っていた池谷氏。GKに南という大補強を実現したものの、CBやFW、まだまだ新加入発表があるのかも知れません。いつものようにそれは“相対取引”に持ち込まれるのか。ファンとしては、楽しみが残されました。

新体制発表会見もこれで何度目でしょうか、しかし、今回のこの会見を眺めていて、改めてこのクラブが“大きく”なってきたことを実感しました。それは、高木琢也や南雄太や松橋章太というビッグネームの加入ということだけでなく、コーチ、スタッフ、あるいは育成部門の陣容の充実など、このクラブは着実に成長してきたんだなあと。

九州リーグ。わずか3人の事務局スタッフ。何もないところからスタートしたことをすぐに思い出してしまいます。しかし、ややもすればその頃との比較で、今あるこの現状に満足し、甘んじがちになっていたのも事実です。例えば「J2でも、いやJFLでも充分楽しめる」あるいは「あの頃からすれば、雲泥の差だ」「今のこの状況自体がすごいことなんだ」などといった感傷的な現状追認…。今、改めてこのクラブのこの着実な“成長”と、その先の“躍進”へ向けたビジョンを見て、そろそろ、われわれもそういった懐古趣味的な自己満足を封印し、次に踏み出すべきところに来ているのだと省みさせられました。過去と比較していた現状から抜け出し、“ビジョン”との差を比べるべきなのだと。チームや選手に対しても、また、ひとつひとつのゲームに対しても、掲げられたビジョンと比べてどうなのか? という視点や“厳しい”評価も求められるということ。“ないものねだり”をするつもりはないと常々言ってきましたが、チームの成長とともにわれわれファンの側も成長し、大人になっていかねばならないシーズンなのかなと思います。「県民運動」を掲げているこのクラブ、そういう意味ではまだ何も達成していないのかも知れない、そういうところも忘れてはいけないと。
「Strong Will~強い意志~」。こうやって見ると、今年のスローガン、とても深くて、なかなかいい言葉だと思いませんか。

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