2010.02.27 開幕1週間前
3月。人事異動の季節。われわれも新たな職場を与えられることになり、ことのほか慌しい2月でした。デスクの引越しついでに自宅も整理していたら…、古い雑誌のなかに興味深い記事を見つけました。2006年の「Number」10月5日号の「高木琢也 横浜FC新人監督の奮闘~手探りで得た信頼と成果」という記事。井川仁という人の文章です。

「クラブ崩壊寸前、準備期間もない悪条件の下、未経験だった監督の座に。にもかかわらず、J2で『最も負けないチーム』に仕上げ、悲願のJ1昇格はいまや夢ではない。」その高木監督の手腕を分析してあるのですが、まず注目したのは以下のくだり。

「これまでチームは『リスクを冒してでも攻撃にいく』スタイルの構築を図っていた。だが、形を作る上での約束事 が山のようにあり、選手たちは混乱してグラウンド上で立ち尽くしてしまう場面がしばしばあった。高木は、無数の約束事を簡素化した上で、その徹底を図った。重きを置いたのは『守備』だった。」

なんか、まるで今の熊本のことが書かれているのかと錯覚してしまいそうです(笑)。「『攻撃は実は手が付けにくく形になるまで時間がかかる。守備は11人全員が意識すればできる』まずは、『守備のブロックを作る』意識を徹底させた。」とある。これは熊本の年明けからの練習あるいは練習試合でも同じことが行われているのだろうと想像させます。

興味深いのは「メンタル面のケアなど選手への接し方にも独特のものがあった。」という点。「高木のコミュニケーション術に関して、『話の伝え方がうまい。モチベーションを高めてくれる』と内田(選手)は明かす。」「城(選手)は『今まで初めてですね。選手の気持ちを一緒に高めようと、素直にそういう言葉をかけてくれる監督は』と尊敬の念を表す。高木は“モチベーター”としても大きな存在感を示した。」と。

当時の選手たちから慕われていた様子が伝わってきます。それは例えばこんな言葉。アウェー仙台戦。満員のスタンドを前に「『何もビビることはない。この大勢のサポーターの前で、お前たちの力を見せて相手を黙らせてくれ。俺たちの力を出せれば最高じゃないか。』」と。

あるいはこんな逸話も。19節で初めて水戸に黒星を喫した試合後、数人の選手が監督に「すいませんでした」と言ってきたのだそうですが… 「スタジアムを後にし、移動のバスのなかで高木は言った。『謝りにきた選手が何人かいたが、そんなことは言わないでほしい。みんなは精一杯、戦っている。ピッチ上でのことはすべて俺の責任。だから負けたのも俺の責任だ』」と。

そして何よりも選手に求めたのが「勝負へのこだわり」。「『根っからの負けず嫌い。解説者のときは日本一の解説者を目指したくらいに』と自ら言うほどだ。」「『自作の解説ノートを作成し、番組開始の5、6時間前にスタジオに入っては試合に関するビデオを何度もチェックし、印象に残ったシーンや疑問点をくまなくシートに書き記していました』と当時から親交のあるJスポーツの渡邊穂高氏は言う。」

「その努力のさまは監督になっても変わらなかった。対戦する相手は3試合までさかのぼって自らビデオを分析。分析を終えても、『まだ何かし残したことがあるかも知れない』とぎりぎりまで見続けるのだ。」
記事には試合を綿密に分析してある解説者時代のノートの写真が添えられていました。

このあと高木・横浜FCはJ1昇格へと着実に突き進んでいきます。それは丁度ロッソ熊本のJFL1年目。われわれのJ昇格に黄色信号が灯り始めた頃のことでした。このNumberの記事の存在はすっかり忘れていたのですが、「高木琢也氏 新監督就任」というエントリーを書いたとき、この記事を読んだときのイメージがベースになっていたのだと改めて思いました。

さて、熊本へ着任後、数々のイベントやTV等のインタビューを見ていて感じることは、実に聡明な人だということ。何より、話しが“わかりやすく”説得力がある。それは選手達も同じなのではないかと。例えば「奪ったあとの3本のパスを丁寧に繋ごう。そうすると攻撃の態勢が整ってくる」(富山戦のTM時)という指示に見られるように。

高木ロアッソの船出まであと1週間に迫りました。直前の練習試合(28日)は非公開というのも、なんだか謎めいていて余計にファンの期待を高めます。練習試合で当たった感触や「ちばぎんカップ」の結果を見ても、今季のJ2、千葉と柏が頭ひとつ抜きん出ているのは間違いないでしょう。それに甲府が絡んでくるという展開かなと。

わがロアッソは開幕からいきなりその一角・千葉との戦い。しかし、あたり前のことがあたり前のように起こらないのもサッカーの醍醐味。だからこそサッカーは面白いのです。「最後の怪我人だった僕も3日前にチーム練習に復帰しました。高木監督の厳しい練習を乗り越えて、一人の故障者もない状態で開幕を迎えられるのはチームとしは大きいことだと思います。」昨日はJリーグキックオフカンファレンスで上京し、今日は「スポーツフォーラムinくまもと2010」というイベントに出演していた藤田俊哉。多忙を極める熊本のキーマンはそう言っていました。そこに南、渡辺、松橋といったベテランのニューフェイスがスタメンに絡んでくるのだろう新生・ロアッソ。

早く見たい。そんな高まる気持ちを静める、難しい作業をこの1週間行わなければならない。春一番も吹き抜け、抑えきれない新シーズンへの期待。これはもはや苦行のような気分です。

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