3月7日(日) 2010 J2リーグ戦 第1節
熊本 1 - 1 千葉 (15:05/熊本/9,101人)
得点者:60' 倉田秋(千葉)、90'+4 市村篤司(熊本)


最後の最後に待っていた嵐のような歓喜。ゲーム内容に寒さも手伝って、90分間緊張して、硬直したように座っていたせいか、ゴールの瞬間雄叫びを上げて立ち上がった際に、あやうくぎっくり腰になりそうでした(笑)。90分間、蓄積されたエネルギーが爆発するように解き放たれる。飛び跳ね、右手を突き上げているのは自然な行動でした。

3年目のJ開幕戦を迎えるにあたって、少し考えることがありました。相手はJ1から初めて降格してきた千葉。これまでのわれわれであったら、「“あの”千葉と開幕戦を戦えることが嬉しい」などと書いていたはず。しかし、「新体制発表。強い意志」というエントリーで書いたとおり、これからは「懐古趣味的な自己満足を封印し、次に踏み出すべきところに来ている」と。「ひとつひとつのゲームに対しても、掲げられたビジョンと比べてどうなのか?という視点や“厳しい”評価も求められる」。仮に強豪・千葉に大差で敗れるような結果になったとしても、そこにある“差”をしっかりと受け止め、そのギャップを埋めるための次のステップにしていきたいと思っていました。

「『相手が千葉だから』という言葉は好きではない。J2で上位にくるチームとは思っているが、千葉とやれて嬉しいとか、ビッグクラブにすがるとか、そんな気持ちはない。勝つためには、最後まで走ること、切り替えを早くすることが大事」という戦前の高木監督の言葉にも勇気づけられたし、千葉と戦えると言ってもそれはわれわれが昇格してではなく、あくまで“落ちてきた”千葉と戦うということ。そして、それならば、われわれの目指している先へ、足りないものを見極めて進んでいく、そんなJの3年目のスタートには願ってもない相手なのだと思うことにしました。

千葉 (先発フォーメーション)
 18巻 
9深井16谷澤
7佐藤勇人10工藤
 6山口慶 
3アレックス2坂本
23益山33茶野
 1岡本 

降格。そして初めてJ2の舞台に立つ千葉。慢心はなかったと思います。「決勝戦のつもり」「全力をぶつける」。そんな敵将・江尻監督の言葉にも表れているように…。しかし、キャンプ中にTMを行って4-0の“大差で下した”熊本、でもあります。ところが、この日の熊本。あのときとはちょっと様子が違っていたのではないでしょうか。前半、ボールを繋いでこない。前線の井畑、松橋にDFの裏を狙わせるように長いボールを運んでくる。それは千葉のラインを下げさせることと、あのTM時に体感した厳しいプレスから逃れる策だったのでしょう。

今日の井畑、相手DFを背負いながら、身体を張って必死に競る、収める。もちろん、周囲との位置関係がもう少しいいものだったら、もっと裏をとる攻撃の脅威が増したのだろう、という見方もありますが。とにかく、ここを相手に支配され、あるいはセカンドを拾われていたら、千葉が「押し上げられなかった」と悔やんでいる部分の形勢が変わっていたのではなかろうかと。もし押し上げられていたら持ち堪えきれただろうかと。TMでも目の当たりにしたように、あれだけ細かいパスを回してくるチーム。少しでも陣形を間伸びさせることが、“相手のいいところを消す”という戦術の根本にあったのかなと思います。

なんとなく調子の狂った千葉は、21分頃アレックスのFKから前線が触れば1点というチャンスはあったものの、その後は西森のクロスに宇留野からフリーで撃たれたり、松橋の前線でのチェックからドリブルで切れ込みポストに嫌われる惜しいシュートがあったりと、数度熊本に脅かされます。熊本は一見、引いているように見えるが、攻撃時の最終ラインはハーフウェイライン近くまで高く上げる。前線から無闇に追いかけたりはしないが、機能しているのは組織的な守備。陣形をコンパクトにして、相手のボールホルダーに対して二人、三人と寄せる。パスコースに足を出していく。あるいはプレスバックで奪う。ピンチではシンプルにサイドに蹴り出し、敵のリズムを切っていく。巻の高さは脅威でしたが、矢野と福王がうまく体をあてて自由にさせない。空中戦に対するGK南の安定した対応も忘れてはならないポイントでした。

スコアレスに終わった前半。全く互角の神経戦を、スタンドのファンが固唾を呑んで見守っているという様相でした。

状況を打開すべく、最初にカードを切ってきたのは江尻監督でした。後半早々、右サイドの谷澤に代えて倉田秋。この交代が功を奏して、千葉の前線が活性化する。左SBのアレックスもどんどん攻撃に参加し始める。掻き回され始めた熊本。60分、右からふわっと入れられたクロスはDFの頭を越えて詰めていたアレックスの足元に。至近距離からのこのシュート。一旦は南も触ったのですが、こぼれ球を倉田に押し込まれてしまいます。

同時期、熊本の運動量も目に見えて落ち始めていました。攻撃に人数をかけ、圧を強める千葉に対して、自陣での防戦が続くようになる。その打開策として熊本は西森に代えて西、宇留野に代えて山内と両SHを交代投入。それまで先頭でターゲットになりよくボールを収めていた井畑に加え、西、山内を飛び込ませることによって押し戻そうという考え。しかし、千葉の勢いは収まらない。タレントの揃った中盤は堅い。残り10分もないこところで、熊本は井畑を諦め藤田を投入。松橋と前後の関係を作ります。

後半44分、千葉はMF工藤に代えてDFミリガン。「残りの時間で追加点は取れるだろう」という思いが、「このまま1点リードを守って逃げ切ろう」という思いに変わったのでしょうか。ピッチから出ていく工藤の表情にはホッとしたような、安堵を感じさせる笑み。彼らがこの開幕戦で背負っていた重圧の大きさを垣間見たような。アディショナル・タイムは4分。更に村井を入れて時間かせぎ。それはもう全く勝利への定石どおりの采配でした。

ところが藤田に託されたこの短い時間は、千葉にとっては相当やっかいなものになりました。早く終わらせたい“時間”に、藤田のワンタッチの正確なつなぎで、守りをズラされ、走らされる。西が水を得た魚のようにドリブルで切り裂く。立ちはだかる相手DFの間にまるで彼だけが見える“道”があるかのように、ボールを持って抜けていく。四角いピッチを、見事に斜めに横切って。もう残された時間は1分もないというその瞬間。藤田、山内が引き寄せた相手DFの空隙に右から猛烈なスピードで侵入してきた市村。そこに西からのラストパス。マークについていたのは直前に交代したMF村井でしたが、位置取りが逆。市村が絶妙なトラップから一気にゴールに流し込みました。

すんでのところで勝ち点2を失った江尻監督。試合後、「熊本は最初から同点狙いの策だったのだろう」と悔しがりましたが、高木監督は間違いなく勝ち点3を取りに行くプランでした。キャンプ中のTMでしっかりスカウティングを行ったうえで、こちらの手の内は完全には見せていない。強烈なプレスに対抗する策を講じ、DFラインを上げさせないように井畑を鍛えた。(なんだかまるで日本代表時の高木の役割を見るようでもあり。)そして怪我があったにせよ藤田と西は、あのTMには出ていなかった。千葉にとっては初めて見る「選手」でした。

いやはや、それにしても開幕戦から素晴らしい、われわれ好みの神経戦を見せつけられて、夕べは酒量も増えました。しかし、千葉はやはりJ1仕様のチームだったし、なによりアウェーに駆けつけた600人にも及ぶという黄一色のゴール裏。その地声の大きさにも肝をつぶしました。こんな具合に柏や大分も同様に大挙してやってくると思うと、(それがJ1では当たり前だったのだろうけれど)今から落ち着かなくなってしまいます。今季のリーグ戦、36試合と昨年から比べればいささか少なくは感じるものの、逆に一戦一戦がその分だけ楽しみで、重みがあり、見逃せない。そんなシーズンになりそうですね。

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