3月27日(土) 2010 J2リーグ戦 第4節
熊本 1 - 0 岐阜 (16:03/熊本/4,714人)
得点者:45'+2 西弘則(熊本)


誰もがこのままスコアレスで終わるかと思っていた前半アデショナルタイム。岐阜のCB秋田のボールの収まりが一瞬悪かった。それを見逃さなかったのは西。左SBに出そうとするパスを出所で奪って自らドリブルでエリアに入っていく。慌てて追いかける秋田をうまく交わすとGKとの1対1を冷静に見極め、ゴールに蹴り込みました。ネットが揺れる。今季初の先制点。そしてこれがこの日の決勝点となりました。

岐阜 (先発フォーメーション)
27押谷 10パク
14嶋田7菅
4田中23橋本
17野垣内19冨成
6秋田3吉本
 1野田 

そこまでは、幾分熊本のほうにチャンスの数が多いものの、ほぼ互角の展開と言えました。JFL時代を通じてあまり相性がいいとは言えないJ昇格同期の岐阜との第4節での対戦。190センチを超える長身のパク・キドン、磐田からレンタル移籍中の押谷の2トップは、ポテンシャルも高く要注意でしたが、新生熊本の守備陣容ががっちり2列のブロックを作って攻撃を阻みました。24分に押谷のスルーパスから嶋田に抜け出されますが、南が勇気を持って飛び出し難を逃れます。

反対に熊本は39分、筑城のクロスに中央で井畑がつぶれてファーの宇留野のヘッド。しかしこれは大きく枠をオーバーします。この日、見るからに精細を欠いていた宇留野。突破力にもいつものキレがありません。「少し筋肉系の痛みが出たので、大事をとって替えた」と試合後、高木監督が明かしていますが、前半終了間際というタイミングで退き、代わって西森が入ります。互いにシュートまでには至らない、中盤での激しいせめぎ合いが続く展開。入ったばかりの西森と西が、互いのサイドをスウィッチする。前半も最後まで走り切る、そんな時間帯。西の前線での高い集中力から生まれた得点。2試合ぶりの先発起用に応えました。

後半は、思った以上に熊本に“風”が吹きました。高木監督のハーフタイムの指示は「カバーリングをしっかり。セカンドを拾って。2点目を狙っていこう」というもの。しっかりもう一度守備から入って追加点を、というコンセプトでした。一方の倉田監督は試合後も「前半は今までで一番いいというくらいの出来だった」と言っているように、失点は“出会いがしら”の不運な交通事故のようなものと捕らえていたのかも知れません。それにしても後半早々に、西川をサイドに配置するためにそれまで中盤の起点になっていたボランチの橋本を引っ込める。たしかにパクと西川の高さは驚異でしたが、これで熊本に中盤の支配権が完全に転がりこみました。ボランチに残された田中の負担が増える。そこに熊本のプレスがうまく機能していきました。岐阜がゲームを支配していた前半という見方からすれば、この交代で早めに追いついておこうという“主導権”を持った発想が出てくるのもやむを得なかったのかも知れませんが、結果的には熊本に幸いしました。

これまでもそうでしたが、熊本が守備重視といってもそれは決して引きこもってのそれではなく、奪われた後の帰りが早いということ。奪われた時のイメージを共有しながら、アタマのなかの体重配分を後ろにもかけているということ。すぐさま2つのブロックが形成されると、相手のパスに対して足が出る。複数で囲むと絡め取るようにボールを奪う。徐々にポゼッションは熊本のものとなりました。

53分、筑城がサイドで奪って左に展開した井畑に。クロスがこぼれたところに右から上がってきた市村がボレーシュート。両SBが今日は積極的に攻撃に参加できる。高い位置で奪ってから攻撃に転じる早さは、まさに”攻めるディフェンス”。特に今日の筑城の働きは出色の出来。自分のゾーンを犯されまいと果敢なスライディングでクリアするかと思いきや、判断よく攻め上がる。奪われれば切り替えよく全力疾走で戻る。「切り替えの早さ」をテーマとした今年の高木イズムを体現する選手でした。

途中投入の西森の運動量も半端ではない。“迷いがない”とでも言っていいのか、判断よくディフェンスに、攻撃に加担している。「レギュラーポジションが欲しい。」「試合に出たい。」そういったチーム内にある“熱い競争心”がプレーに現れていました。後半31分、チャンスを逸した後、最前線左サイドで執拗に相手MF嶋田を追いかけ、結果、カードを貰ってしまった井畑のプレーも、違った意味で競争心、危機感を感じさせてくれるものでした。“ここで結果を出さないと次のチャンスはない”とばかりに。

岐阜はパク・キドンを諦め佐藤を投入。ルーキーイヤーの昨年17点を入れたこの男の怖さはさすがに知れ渡っている。けれど熊本の守備は強固でそうそう破られる感じがしない。これまで岐阜に何度もなく切り裂かれたDFラインでしたが、今日は岐阜の単調なアタッキングサードのボール回しもあって、安心して見ていられました。

次第にイライラが募ってくるのは岐阜の方でした。ファールが増える。熊本は80分、井畑に代えて前線に渡辺を入れることによって、最後の岐阜の“圧”を防ぎにかかります。82分、ペナルティエリアで押谷が筑城と交錯して倒れる。ピッチに鳴り響く主審の笛。一瞬で凍りつく熊本サポーター。しかしイエローカードが示されたのはシミュレーションを犯した押谷の方。スタジアムに覆う安堵のため息。

熊本の最後のカード。残り10分で投入された藤田には、今日もまた“クローザー”としての役割が託されました。最後の最後の時間帯。まぎれもなくバタバタした味方の気持ちを落ち着かせるキープレーヤー。多くのファンが知っている、熊本がこれまで何度も苦渋を舐めたこの危険な時間帯。しかし今季は、もはや“勝ち点請負人”とも言えるだろうこの男の投入で、“時間”はわれわれのものとなっていきます。孤高の男のワントップが前線でタメを作る。それは熊本が昨年から敷いている藤田のゼロトップに違いありませんでしたが、今季のこれは、残り10分をマネジメントする“高木流・応用編”に進化していました。一本、二本、軽快にボールをさばいたたけで不思議なリズムが生まれ始めます。

藤田の「残り10分の起用」。われわれも含め多くの藤田ファンにはもったいないように思えますが…。この重要な時間帯、試合に“勝ち点”をもたらすこの時間帯は格段に密度が高い。そしてここで起用すべきキープレーヤーは今、藤田しかいない。藤田がふたりといないプレーヤーなだけに、こういう“やりくり”になってしまうのが現在のロアッソの実情だとも思うのです。

あの感激の開幕戦から3週間ぶりのホームゲーム。そこできっちり勝利という結果をファンに示してくれたロアッソ。親しくさせていただいている関東サポ・某氏の拍手コメントは「勝ちグセをつけたり、負けない戦い方はメンタル的にも大きく成長させてくれる(選手もサポーターも)」というものでした。まったく同感。そして第4節にして負け無し。5位という順位もまんざらではないものの、何より「得失点差+2」という数字の重さは、心に沁みるものがありますね。失点を減らせば「勝てる」。「上位に行ける」。それはあたり前の話しではあるにせよ、実際に得失点差が“プラス”という状況は、J昇格以来、初めてのことですから。

終わってしまえば1-0の辛勝。後半はポゼッションを奪いながらも、幾度とあったチャンスに追加点を決め切れなかった反省は、監督だけでなく選手ひとり一人が感じているようです。まさに辛勝でした。今日は勝てたが、という感じですね。橋本、嶋田、西川、佐藤、そしてパク…。今日、登場したメンバーを見てもそのポテンシャルは相当なものが感じられる今季の岐阜。攻守の切り替えもそうですが、今日の試合の勝利の感慨も次回の対戦へ向けて早々に“切り替え”が必要なのでしょう。

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