5月15日(土) 2010 J2リーグ戦 第13節
水戸 0 - 1 熊本 (13:04/Ksスタ/2,341人)
得点者:79' 松橋章太(熊本)


スタメンにもベンチにも、前節の“ニューヒーロー”の姿はありませんでした。どうも先週の練習中に足を痛めたらしい。どの程度の故障なのかは不明ですが、J初先発、決勝ゴールに両手の人指し指をかざして感謝したファビオに、フットボールの神様は、まだまだ試練を与え給うたのか。いきつけのスポーツ整体院でそのことを話題にすると、「骨太だと俊敏性が失われるが、細いと痛めてしまう。サッカー選手にはサラブレッドの細くしなやかな筋肉だけではなく、農耕馬のような太くて強靭な筋肉も必要なんです」と院長。「FもMも、熊本に来たばかりのころは細かったですよ」。時どき選手達の面倒も診ている院長はそう話してくれました。

さて、水戸とのこの一戦。われわれには、ちょっと心配していた“ジンクス”みたいなものがありました。J昇格以来の過去2シーズンを振り返ると、ゴールデンウィークのあの過密日程が終わった途端、それから8試合、9試合と勝てないというのがこれまでの“ジンクス”だったからです。おそらくはフィジカル面で、根深いダメージを残してしまっていたのだろうこの過密日程。この試合は、そういったシーズンの流れという意味で、今年はどうなのか、というところにも関心を持っていました。

先発のワントップには松橋が復帰。「福岡戦で個人的にチームに迷惑をかけた」(試合後のインタビュー)と自認する彼にとっては、間違いなく「なんとか結果を」出さなければいけなかった試合。しかし、値千金の1点をもぎ取り、熊本に連勝を呼び込みました。トップ下には藤田が2試合連続で先発。彼もまた筑波大の同級生・木山監督との対戦に静かな闘志を燃やしていたに違いありません。

確かに、スカパー解説の菅野さんも指摘するように、両チームともに重たい印象でした。不思議なことに前節休みだった水戸にしてもそうでした。公式の記録では気温15.8度。おそらく現地はひんやり(あるいは寒いほど)していたのでは。それが選手達、特に熊本側にいい影響があったのではないかとも思いました。

水戸 (先発フォーメーション)
39片山 11遠藤
19森村10大橋
16下田8村田
22森2藤川
32大和田4作田
 1本間 

序盤は水戸の攻勢。いくぶん風上という影響もあったかも知れませんが、ポゼッションを保持して形づくる。このチームで一番の要注意人物は大橋。かつてマリノスでは、中村俊輔の後継者とも目されていた逸材。その大橋をサイドに置き、臨機応変で中央エリアに。その動きを菅野さんもかつて率いた湘南のアジエルに例える。ここはひとつの抑えどころでした。今年の水戸は、ここから前線の吉原に預けるのがひとつの形。しかし、今日、吉原の代わりに先発した片山、遠藤にはまだなかなか収まらない。

20分頃からは熊本にもポゼッションの時間帯が訪れます。西の左サイドの崩しから中で繋いで右にこぼれたボールを松橋がボレーシュート。強烈でしたがGK本間がクリア。水戸の中盤がゆるくなる。こぼれ球を熊本が拾う。福王が右サイド奥のスペースにロングボールを送ると、市村が走りこんでダイレクトで中に入れる。ニアで宇留野がスルーして藤田がシュート。枠の左に反れるボールに西が詰めますが届かず。

松橋が個人技で切り返すも中央で潰される。こぼれたボールを吉井が渾身のミドル。これはバーに嫌われる。実に惜しい場面が続く。形は作れている熊本。藤田が自由自在なポジショニングで中盤を崩している。守っては組織された守備。前から行く場面、行かない場面。明確に指示が出ているかのような統一感。軽いプレーがない 確実なプレー、思い切ったプレーが目に付く。安定感と表現していいかもしれない。先制点まであと少し。スコアレスでは物足りない。そんな内容の前半でした。

後半の水戸。打開策は、まずボランチの下田に代えて西岡を入れることでした。2人のボランチが共に1枚ずつイエローを貰ってしまい厳しく行けなくなったことで中盤を支配されている。との認識からでした。熊本は藤田のヒールパスを受けた原田がDF裏にスルーパス。西がスッと抜け出してシュート。しかし、今一歩、踏み込みが足りなかったのか、枠を反れる。対する水戸は、中盤で奪って大橋がスルーパス。右サイドから裏をとった遠藤がすばやくシュート。これはポストに当たって事なきを得ました。

ここからベンチワークの勝負も。宇留野に代えて井畑。水戸は遠藤を諦め吉原を入れてくる。互いに譲らないこう着状態に似た時間帯が続きます。

均衡が破れたのは79分。筑城に代わって西森が入ってすぐ。“残り15分のスウィッチ”がチーム全体に入ったのか。南からのゴールキックを井畑が競り勝って松橋へ、そのポストプレーから藤田にボールが収まり中に入っていく。DFの注意が藤田に引き寄せられる。2人、3人。十分引き寄せたところで、体制を崩しながらも再び松橋に出す。それがラストパス。松橋はここぞとばかりにダイレクトで振り抜く。ボールはGK本間の手をすり抜け、ネットに突き刺さりました。

水戸は森村に代えて小池を入れますが時すでに遅し。熊本は殊勲の藤田を渡辺に代えて逃げ切りの体制。ベンチに退く藤田が一瞬、相手ベンチをちらっと見たような気がしました。同級生の木山が監督として率いる水戸。同級生の藤田がピッチで指揮する熊本。今日は藤田に守られ、藤田に入れられたようなもの。アディショナルタイム、審判の判定に珍しく苛立つような身振りを見せた木山監督。何を思っていたのでしょう。

終わってみれば互いのシュート数は前半9-2、後半10-7。戦前、シュート数に関して「これまでの一試合平均10本を15本に上げたい」と語っていた高木監督。今日は確かにかなり早いタイミングで、撃っていた。まさに、シュートコースが空いていて撃てる状況であれば、第一選択肢として撃っていた。現時点でわが熊本、攻撃面に課題があることはわかっているわけですが、まあ、一番手っ取り早いと言ってはなんですが、攻撃の組み立てとか言う前に、とにかくシュートを撃つことを徹底させるという“わかりやすい”指示を出したと理解していいのかも知れません。あれもこれも多くの課題を与えない。まずシンプルに考えることを。

守備に関して言えば、今日の試合、セットプレー以外は安心して見ていられましたね。おそらく、一度もカウンターを食らっていないのではないか。“食らう”というような、守備の枚数不足の状態は作らせなかった。前節・愛媛戦で見られたような、危険なエリアでのボール回しのミスもきちんと修正されていました。

対して、水戸というチーム。明らかにこれまで対戦した水戸とは違っていました。選手の入れ替わりの激しさは確かにある。あの荒田もいない。しかし一体いままでの水戸はどこへ行ったのか。去年の戦術はどうなったのか。攻撃面では高さの脅威が無くなって…。木山監督はどうしたいと思っているのか。素人分析で失礼な話しとは思いますが、今シーズンの意図が全く見えない。そんな印象を持ちました。

1-0の勝利。虎の子の1点を守りうまくクロージングしたゲームマネジメント。それはしたたかな勝負強さという表現もできますが、やはり辛勝という見方もあるでしょう。高木監督は試合後、「1対0で勝つというのは大変難しい。たとえばレフェリーのジャッジや風や環境で変わってしまう。1点は覚悟するゲームなので、無失点で抑えるということはいいことですし、守備の安定も非常に評価できる」と述べてチームの堅守を称えましたが、しかし、やはり2点目が遠い。2点目の匂いがしないのも実感です。ギリギリで勝っている、という状況はまだまだ変わってはいません。もちろん、このカテゴリーで“余裕を持って勝つ”ようなことは望むべくもないのですが…。

「まだまだ課題ばかりでした!チャンスをもっと作りたいし、少ないチャンスでも決めたいし、余裕をもてるゲーム展開も作り出したいし…」。藤田が自身のブログで述べているこの言葉が、今のチーム状況をうまく表現しているのかも知れません。けれど一方で、松橋の言う「前節のファビオの活躍はスタンドから見ていて刺激になった」「今日は危機感を持ってプレーができた」という“危機意識”。選手たちのなかにあるそういった絶え間ない“競争意識”がチーム進化のエネルギーでもあります。心理マネージャーとしての監督。大敗、主軸2枚の出場停止という危機を見事にマネジメントしましたね。

リーグ戦も序盤から中盤に差し掛かるところ。混戦の中位同士。上位に喰らいつく戦い。J’sゴールのレポーターはプレビューで、「J2の『台風の目』を懸けての対戦」と位置づけていました。とりあえずそのポジションは熊本のほうがキープした、というところですが…。「台風の目」。ちょっと心地よい響きですね。

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