5月22日(土) 2010 J2リーグ戦 第14節
熊本 0 - 2 栃木 (13:03/水前寺/2,803人)
得点者:50' 崔根植(栃木)、66' リカルドロボ(栃木)

本当に久しぶりの感覚ですが、一瞬、昨年のサッカーがフラッシュバックする場面が何度かありましたねぇ。相手も確かに9戦負け無しと好調だったとはいえ、覆いかぶされるような巧みな試合運び。高木監督が試合後言うように「練習するしかない」。われわれのチームを見ていて、つくづくそう思いました。

栃木 (先発フォーメーション)
18チェ・クンシク 9リカルド・ロボ
16杉本10高木
7佐藤23米山
6入江19赤井
3大久保30ヨ・ヒョジン
 1柴崎 

序盤はロングボールから切り込んで相手を慌てさせ、ポゼッションを奪ってからは原田からの大きなサイドチェンジに市村がクロスを入れ松橋を飛び込ませる。続くショートコーナーから藤田、宇留野とつなぎ福王が詰める。点にこそならなかったものの、何度かゴールを脅かしている熊本の前半の印象はそう悪くなかったのですが、じっくり振り返ってみると前半終了間際あたりから、集中力を切らしたミスが出始めていましたね。

戦前からサイドの攻防が鍵だと思っていたのですが、熊本は市村、西森の両SBを高く上げて攻撃的に仕掛けることで相手サイドを押さえ込みにかかります。相手の要注意人物・高木は右サイドに位置していて、西森に何度もベンチから指示が入りますが、うまく対処しているように見えました。しかし、全体的なこのバランス変化や“負担”が、高木監督に「普段の車から新しい車に乗り換えて、その“欲”のようなものが足を止める原因になったのかも知れない」(23日付・熊日)。と言わせたのではないでしょうか。

徐々に、徐々に、ボールは回せているものの、縦に入れるタイミングを逸していく熊本。対する栃木は自陣のアタッキングサードに入る時点でチェックを怠らない。熊本は、そこを突破して侵入するも、勝負せず、味方の上がりを待つために、早い栃木の戻りに潰されてしまう。スコアレスドローで終わった前半は、決して今日の熊本のゲームプランではなかったはずです。

「後半の頭が勝負。」ハーフタイムでそう鼓舞した松田監督の言葉を栃木イレブンが形にします。ボールへの出足が格段に上がってくる。高木が今度は左サイドに移動している。50分、中盤から繋いでチェにくさびのボールが入ったと思った瞬間、福王を交わして反転したチェ。左足を豪快に振りぬいたシュートがゴールネットに突き刺さりました。奪われた先制点。堅守を持ち味とする両チームにとって、この先制点の意味するものはとても大きい。ただ、時間はまだ十分ある。下を向くにはまだ早い。負けるわけにはいかない。ファンの気持ちはピッチの選手にも伝わっていたはずです。

しかし栃木は中盤でしっかり蓋をしてきます。降り出しそうで降らないこの日の天気。湿度の高いピッチ上で、必ずや米山、佐藤の両ボランチ、あるいは前線の両FWの足が止まる時間帯が来るものと見ていたのですが…。いや逆に、栃木の堅守を支えているのは、彼らの果敢なまでの運動量。特に佐藤のそれには目を見張りました。あの攻撃的プレーヤーの佐藤に、ここまで守備をさせている松田監督。昨年までは左SHで使われることが多かった印象ですが、高木を獲得することによって、ゲームを読めるボランチをもう一人獲得していました。

今日の藤田は米山あるいは佐藤に完全に封じられて、いつものようなワンタッチで打開するパスが出せない。高木監督は藤田を下げて、井畑をターゲットマンにすることを選択します。その井畑が右サイドでDF二人と競ってCKをとる。しかしファーに飛んだボールはクリアされる。

サイド奥までは運ぶが、それからどうも手間をかけすぎる熊本。十分に栃木のDFラインが整う時間を与えてしまっている。逆に熊本の戻りが遅くなってきたかなと思っていた時間帯でした。バイタルエリアでチェ、高木、ロボとショートパスで繋いで最後はロボが中央突破。華麗な切り崩しで追加点を決めます。

2点のビハインドを堅守の栃木から挽回する力は、今日の熊本にはありませんでした。宇留野に代えて平木。最後は渡辺を入れて3バックと攻勢を試みますが、指揮官が「相手と戦っている選手が、正直、僕の中では1人もいなかったのが残念です」と言ったように、守備に林立する栃木ゴール前でただボールを回すだけ。フィニッシャーどころか、“仕掛け”も譲り合うような消極的な攻撃に終始。終了間際に原田のボレーシュート、続くCKから井畑のヘッドと惜しいシーンはあったもののゴールマウスを割ることはできませんでした。

「今日の試合は対戦相手の栃木に負けたのではなく、自分ら自身に負けた試合だったように強く感じます」。宇留野が自身のブログで吐露している言葉が、選手全体のメンタルを表しているような気がします。そこにはしかし、これまでの対戦成績からする栃木への油断がなかったのか、久しぶりにプレッシングサッカーという言葉を思い出させるような栃木の球際の強さ早さに腰が引けなかったのか。自らミスを繰り返してリズムを崩した要因はなんだったのか。選手たちは何にあれほどいらついていたのか。誰と戦っていたのでしょうか…。

栃木の両FWがきっちり仕事を果たしました。それは個人技のようにも写る。しかしその得点は、一番ゴールに近い選手(FW)に、全員が気持ちを込めて繋いだものでした。代わって入った廣瀬にしても林にしても、前線からのチェイシングが役割であることを理解していました。栃木の守備は誰ひとりさぼることない組織性からできている。最後まで走り抜くことからできている。そこから攻撃が生まれていると確かに教えてくれました。

高木監督はこの結果をとらえ、「福岡戦の敗戦よりも内容的には苦しい」と言います。たとえばわれわれも、福岡戦の大敗は、選択していない入試科目の試験結果のように、いわばあっさり捨て去ることのできる内容でした。しかし、今日の試合は、大事な科目の基本問題を“ケアレスミス”で落としたときのように、無念さだけが重くのしかかってくる。対戦相手という意味ではなく、試合内容がその違いを感じさせるのです。

果たしてこの思いを払拭できるのか。指揮官は「幸いなことに時間がある」と言っていますが、この1週間での課題修正力がまた問われます。どう整理するのか、どう修正するのか。再びとても大事な節目を迎えたというのが実感です。

さて、次節は大分を迎えてのバトルオブ九州。大分も波のあるチームで、最近は調子を落としているようですが、J1仕込みの底力と火か付いたら手に負えない爆発力を秘めているような印象です。同時に、「熊本は大分の支部」と豪語して“水前寺ホームジャック”を高らかに宣言している大分サポーターが、大挙してやってくることも予想されています。スタンドで後押しするわれわれもまた真価が試される重要な試合になりそうです。水前寺をありったけの赤で染めて、“武者返し”といきたいところですね。

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