5月29日(土) 2010 J2リーグ戦 第15節
熊本 0 - 0 大分 (15:34/水前寺/6,067人)


PKのシーンはともかく、冷静に客観的にみてもチャンスの数がピンチの数を相当に上回っていた。引き分けでなく勝ちたかった、勝てた試合だったと正直思います。大分との初対戦。できればJ1の舞台で迎えたかったし、まさか6位対11位の対戦になるとは思ってもみませんでした。

前節・栃木戦の敗戦後、「(6失点した)福岡戦の敗戦よりも内容的には苦しい、厳しいゲームだった」「(戦術的なものの以前に)ファイトする選手がいない」などという、高木監督しては珍しい、選手への厳しいコメントをしていました。前節のエントリーではわれわれもかなり厳しい論調を張りました。しかし一方で、リーグも中盤に差し掛かるこの時期、どうしてもメンタルの緩みや疲れが出てくる時期。この指揮官の言葉は、これを敏感に感じ取った指揮官の心理マネジメントではないかという思いもしていました。熊本にとってはこの大分戦、“緩む”などありえないシチュエーション。そういったメンタル面の嫌な流れをはっきりと断ち切る意味でも幸運な巡り合わせと言えました。

水前寺競技場に着くなり青のレプリカユニの姿が目に飛び込んできました。スタジアムの約3分の1に区画は制限されているものの、時間を追うごとに、そのスペースが更なる青で埋まっていく。相変わらず“熊本時間”なホームファンは、試合開始ギリギリになるまで到着しない。「ホームジャック」は宣言されていたものの、それをはっきり認識したのはゴール裏がコールし始めたときでした。それはものすごい声量。まるで地鳴りがするような…。圧倒される。これがJ1仕込みなのかと…。
そういえば旦那は赤の15番のレプリカユニを着て、奥さんはエジミウソンの青のレプリカという、わが社の新婚夫婦は、一体今日はどこに座ったのだろう。そんなことも妙に気になる九州ダービー。久しぶりにソワソワしていました。

キム・ボギョンはW杯代表招集のために不在の大分。住田や松原など若手が初スタメン。熊本の松橋、宇留野の2トップは今季初のコンビだったでしょうか? 右サイドには4試合ぶり山内を入れてきました。会場につくなり席を探してキョロキョロと周りを見回していると、山内選手のお父さんと目が合って、これまた緊張感が顔に出ていて…。

大分 (先発フォーメーション)
11チェ・ジョンハン 18住田
22内田34梅田
32宮沢24カン・ソンホ
25小林27松原
21刀根36菊地
 1下川 

結果的にこの日の熊本のシステムは機能したと言えるでしょう。これまで試合の入りから序盤は、ロングボールで相手を押し下げる熊本でしたが、今日はDFラインから繋いで押し上げる。南も徹底してベースラインからの組み立てを選択します。宇留野が若干、誰か他の選手とかぶる場面はあったものの、作ったスペースに山内が飛び出す動きで大分を慌てさせる。DFラインぎりぎりで裏を突く、ボールを引き出す動きが見られる。やはり、松橋、宇留野、山内のスピードスターを3人並べた前線は、相手に一瞬も気を抜く時間を与えない。大分はスペースを与えまいとする警戒感のためか、対人的な出足に一瞬の遅れが。前半26分、この山内、市村とのコンビネーションワンツーからエリアに侵入しようとした市村が倒される。ビデオで見ても完全に足がDFに引っかけられたようにも見えましたが、ジャッジは逆に市村のシミュレーションを取りました。これで、市村は次節、累積で出場停止に。

大分の戦術は、早めに前線に入れてくること。サイドの起点に人を集めて、そこからは熊本の虚を付くようなトリッキーなプレーでの打開、あるいはカウンターに終始します。一瞬、ボランチとDFがお見合いしたところを宮沢が奪ってシュートされますが、南がパンチングで防ぎます。高い集中力を感じさせるプレー。今日も頼むぞ守護神。

再三、右サイドを切り裂く山内。くさびで受けるとみせかけてスルー。一発で裏を取る。確実にプレーの引き出しを増やし、成長を感じさせます。たまらず手を出す大分ディフェンダー。勢いよく転げる山内に、これまたシミュレーションか?!と苦笑いしましたが、今度こそがPKの判定でした。真っ先にボールを置きに行ったのは松橋。古巣相手の“恩返し”ゴールを期しましたが、松橋の蹴ったボールは、横っ飛びのGK下川が“残り足”になんとか当てて防ぐ。前半終了間際の絶好の時間帯。45分間を支配した報酬がスルリと手からこぼれ落ちてしまいました。

後半、小林に代えて村山を入れた大分は、少しアグレッシブに押してきます。住田が裏を狙う。サイドからクロスを入れる。いずれも福王がきっちり対処。大分にポゼッションを奪われることなく、熊本が流れを引き戻し、ボールを回してスペースを狙う。たまらず大分は住田に代えて高松。元日本代表FWをようやく引っ張り出しました。

熊本も筑城に代えて西。もうおなじみになった西森をSBに下げる布陣に変更。いきなり西がファーストタッチで仕掛ける。大分は松原、梅田で挟みこむがたまらず倒してしまいます。ゴール左45度で得たFK。西森のキック。こぼれ球を山内が撃ちます、得点の匂いを感じさせる軌道でしたがボールはポスト左に抜けてしまいます。さらに原田が右サイド奥のスペースに市村を走らせる。切り返して市村がクロス。こぼれ球を吉井がシュート。しかし枠を捉えられません。

残り15分を切って、お約束の1点勝負。熊本は宇留野に代えて井畑。がんばりどころの時間帯。ところが大分もここは同じ考え。それまでボランチも最終ラインに吸収されるように引いて守っていたのが、最終ラインから中盤も押し上げて、俄然前線に人数を掛けてきます。

お互い譲らず。残り5分になったところで松橋に代えて藤田。大分・梅田のクロスにファーから内田が飛び込む。危ない!アディショナルタイムは3分。大分はチェ・ジョンハンに代えて前田。その前田がバイタルから強烈なミドル。バーを直撃して難を逃れます。熊本は藤田が魅せる。ワンタッチパスでチャンスを作る。西もドリブルで仕掛ける。それを藤田がフォローする…。

最後の笛が鳴るまで、いや鳴り終わるまで諦めず攻める、守り抜く。J1での死闘を経験しているからこその大分の戦いぶりでした。そしてそれに全く引けを取らない(いや、もうそんな言い方は選手たちに失礼ですね)熊本の戦い。むしろ勝利の女神は若干こちらに微笑みかけたのに…ツレないなあという思い。
大分との初対決。初めて体験する赤と青に塗り分けられた“戦いの場”としてのスタジアム。スコアレスドローながら、いいゲームを見せてもらったなあと。試合終了を告げるホイッスルを聞いて、われわれも思わず“ナイスゲーム”と叫んでいました。それはきっと、ワンプレー、ワンプレーに場内が呼応して作られる独特の雰囲気。(キーパーやDFラインでのボール保持に関しての、いちいちのブーイングには多少辟易したものの)選手の一挙一動に対して声を絞り出す大分サポーターの一体感。あの“ビッグアイ”での風景が思い浮かぶ。負けじとばかりに声を枯らす赤のサポーターたち。ダービーなんて煽らなくても感じられる、これがサッカーの醍醐味。ホームチームを応援する喜び。それを教えてくれる。

勝ちたかったなぁ…。だからこそ、そういう思いが募りました。できれば大挙してやってきた大分サポーターを沈黙させたかった。件の新婚さんに、「夫婦仲的には引き分けでとりあえず良かったんじゃない?」と尋ねたら、「今の大分、熊本に引き分けで“御の字”と妻に言われました」とのこと。それを聞いて、なんだか悔しさが更に募りました。


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