7月18日(日) 2010 J2リーグ戦 第18節
北九州 2 - 2 熊本 (18:03/本城/5,072人)
得点者:22' 西弘則(熊本)、32' 池元友樹(北九州)、66' 松橋章太(熊本)、90'+4 佐野裕哉(北九州)


時間は第4審判が示した「3分」を既に回っていました。自陣のゴールに近いタッチラインからのスローイン。ヘッドで跳ね返したボールが、Pアーク付近にいた北九州の佐野の足元に収まり、撃たれる。そのシュートは味方のレオナルドの身体に当たって跳ね返される。しかし、再びボールは佐野の足元に。「ニアサイドが空いていたので冷静に蹴れた」というシュートは南の手をかすめ、熊本のゴールに突き刺さりました。沸きあがる本城の北九州ファン。センターサークルにボールが運ばれ、試合が再開されても、もうすぐに終了の笛が吹かれるのがわかっていました。勝ち点2がスルリと手のうちからこぼれていった瞬間でした。

実に1ヵ月以上に及ぶW杯による中断を経て、迎えた“リーグ再開”の試合。北九州・本城陸上競技場には、アウェーにもかかわらず1500人近くの赤い群衆が詰めかけました。それは中断期に日本代表の活躍に歓喜したものの、わがホームチームのゲームに飢えていた人々、ようやくの“再会”に歓喜している人々の姿に違いありませんでした。

中断期に敢行した島原キャンプでは、徹底的に身体を虐め、そして前半戦でもの足りなかった部分、主に攻撃の組み立て、得点力の改善について突き詰めたのだといいます。その“磨いて”きたものが見られるのか。ファンの興味はその一点につきました。

市村が痛んでいることもあり、右SBには筑城を配置。左にはこの中断期に浦和から期限付き移籍の堤を先発で起用してきました。そして左SHに平木、右には西。松橋と宇留野の2トップ。メンバーも布陣も、かなり手を加えた、新鮮な熊本の姿でした。

北九州 (先発フォーメーション)
 17中嶋 
 25大島 
9池元15ウエリントン
10佐野5桑原
8日高10重光
4長野13河端
 1水原 

序盤は北九州のウエリントンや大島が、上がった堤の左サイドのスペースを使ってきます。あるいは中盤で池元が奪ってロブ一本。大島が中央を破ってシュート。GK南がこれを防ぎました。北九州もこの再開の第一戦に期するものが高いのは間違いなく、アグレッシブに来る。ちょっと手こずる時間帯が続きます。

しかし熊本は22分、平木のくさびのボールを松橋がスルー。宇留野が受けて松橋。松橋から今度は左の西に繋ぐと、「トラップがうまくいったので」と言うとおり西がゴールを向いて打ち抜く。ため息がでるほどの美しい崩し。ボールは北九州ゴールに突き刺さりました。

ようやく火が付いた熊本。流れを掴みます。北九州のDFラインが下がり始める。松橋が左サイドに飛び出してマイナスパス。それを西がエリアに持ち込みまたマイナスパス。最後は松橋が撃つ。これはGKがクリア。右から持ち込んで吉井から西。西が左にはたくと宇留野がダイレクト。これは惜しくも枠を越える。熊本のアタッキングサードのギアチェンジが見られる時間帯。2列目、3列目から攻撃参加して数的優位を作る。サポーターのチャントのリズムも自然に上がってきます。

しかし32分、北九州の攻撃。重光のアーリークロスに、ちょっと慌てて帰る熊本のDF陣。エリアに入ってきたのは大津高で矢野や山内と同級の中嶋。この中嶋を筑城が倒したという判定。イエローが示されPKを献上します。これを池元が決めて同点。池元の今シーズン初得点でした。

振り出しに戻った試合。しかし高木監督にも選手にも(そしてわれわれにも)動揺は見られませんでした。相手の様子を見ながら、行くところと行かないところの判断。それは「果敢」という言葉とときにして同義語になりがちな「無謀」を戒める判断。見るものからすれば打開策のない時間帯にも見えました。そして全く前半と同じように熊本の時間帯とも言えないような瞬間。北九州の度重なるCKを遮ると、南のクリアを拾った平木が松橋に渡す。松橋が再び平木。平木が今度はサイドを駆け上がる西に。左サイドでもらった西、一瞬、タメをつくると、次の瞬間、勝負のアタック。北九州のDF二人を引きずってゴールラインぎりぎりでクロスを上げる。ファーに飛び込んでいたのは松橋。どんぴしゃのヘッドが突き刺さりました。追加点。「行くところ」の判断。単純にカウンターと片付けてしまうには、その構成感は格別なものがありました。全員のゴールに向う意識が統一された「果敢」な攻撃姿勢の結集でした。

リードを許した北九州。ベンチワークでなんとか反撃を試みます。レオナルド、関、小森田を入れてくる。しかし、熊本が作る2ライン3ラインのブロックが、それを防ぎます。北九州の攻撃にさほどの怖さは感じられず、想定の範囲内できっちり守っている。熊本も前線に少し“タメ”を作るために藤田、ファビオを相次いで投入。もしもう一点奪えれば駄目押しとなって北九州の息の根を止められるという感じでしたが、北九州の足もさすがに止まらない。残り5分になっての渡辺の投入は、ピッチ上の選手だけでなくファンにとっても“守り抜く”メッセージでした。そしてそのゲームマネジメントどおりの時間が過ぎていった。そんなロスタイムでした。

得点のシーンは、確実にこの中断期の厳しい練習で培ったもの、その成果を存分に見せてくれました。PKの判定は誰が見ても(スカパーの解説者自身も言っていたくらい)厳しすぎると言わざるを得ないものでした。いわば“事故”のような失点。それでもなおわれわれのチームは、その事故をも“織り込み済み”であるかのような微動だにしないメンタリティーを保ち、完璧にゲームをコントロールし、行くべき瞬間に勝負をかけ、さらに美しい追加点で突き放した。しかし。しかし、最後の最後で再び“事故”のような失点で勝ち点2を失いました。

「選手たちは責めることもできませんし、責めたいとも思っていません」。試合後の高木監督のコメントは、そんな気持ちを表しているのだと思うのです。「サッカーでは事故のような失点は1点は必ずおこりえるもの」というのが持論の高木監督。それが今節は2点もの事故に見舞われたのだという実感。これもサッカーの怖さなのだと…。

「つくづく試合に勝つことの難しさを痛感させられました」とブログで吐露している宇留野。南は「“詰めの甘さ”を克服していない現実を突き付けられた」と言うと同時に「あともう1歩。そういうところまでチームが成長してきてる」とも言っています。われわれが肌で感じたチームの“進歩”と“可能性”は、選手自身が一番、実感しているのでしょう。今は(今日のような日は)それが一番重要なことだと思います。結果に一喜一憂するのもファンの楽しみなら、この底堅い進化、チームのコアな部分が確実に強さを増してきている。本当に強いチームになろうとしている。こんな手ごたえを密かに噛み締めることもファンとしての醍醐味でしょう。サッカーの神様のいたずらを恨みながらも、待ちわびたホームチームの試合を満喫したこの週末。さぁ、われわれのリーグが再開しました。

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