8月8日(日) 2010 J2リーグ戦 第21節
岐阜 1 - 1 熊本 (18:04/長良川球/2,506人)
得点者:59' 嶋田正吾(岐阜)、60' 藤田俊哉(熊本)


前半と後半ではまるで別のチームになったような変貌ぶり。逆転はならなかったものの、相対的なチーム力の向上を感じ取れた試合ではなかったでしょうか。

8度目となったJ昇格同期対決は、長良川球技場メドウという場所。これまでホームとなっていた同競技場が改修工事中のための応急措置とはいえ、テレビ画面に飛び込んできたのは、大津球技場とも較べるべくもないとてもこぢんまりとしたスタジアム。住宅地のなかにあるらしく、鳴り物を禁止されたサポーターの声は、まるでJFLや地域リーグ時代を彷彿とさせます。われわれにとってもまだ埋めきれないでいるKKウィングという前節の大きな器からは、随分とギャップがありました。それにしてもスタンドが近い。試合中の画像の背景に同じぐらいの大きさで観客が映り込んで、なかなかゲームに集中できない。芝の緑は濃いものの、土台となるグラウンドはかなりデコボコしているようで、熊本の選手たちの動きからもボールコントロールに難儀しているのが伝わって来ました。

前節の“完敗”から、どう修正してきたのか。注目はその一点にありました。しかし、前半だけを見れば、まだ前節をそのまま引きずっている感じでしたね。熊本はリーグ戦再開後一貫して敷いていた4-4-2というシステムから、今節は4-2-3-1に変えてきました。カレンのワントップに、藤田のトップ下。「ちょっと雰囲気を変えたい面もあった」と高木監督は言っているそうですが、そういえばいつものアウェーでのカチッとしたスーツ姿ではなく、今日はプーマのチーム公式ポロシャツ一枚。そういったところにも、ちょっとした変化を求めていたのかも知れませんね。

岐阜 (先発フォーメーション)
14嶋田 16西川
15永芳27押谷
23橋本29池上
24村上33新井
6秋田3吉本
 1野田 

藤田の起用は岐阜の要注意人物・橋本への“牽制”もあったようですが、いかんせんもうひとりのキーマン・嶋田を自由にさせすぎました。押谷のスルーパスに嶋田が南と1対1になるも南の好セーブで防ぐ。熊本は、岐阜のチェックの罠にまんまとはまったようで、なかなかボールを前に運べない。グラウンドコンディションによるものなのか、サイドチェンジのパスもミスが目立つ。PA前から永芳がふわりとパスを出すと、ファーに飛び込んでいたのは長身の西川。この至近距離からのヘッドも、なんとか南が防いでくれる。全くいいところなく前半終了。押し込まれているというより、ウチ、どうかしたんじゃないか…、というような展開。「このままだとまずいな」という感じがヒシヒシとしました。

後半に入っても熊本のピンチが続きました。押谷との1対1の場面。西川のエリア内での強烈シュート。本当にこの日、守護神・南が何点防いだことでしょう。しかし59分、中盤で奪った岐阜は、右サイドを嶋田に駆け上がらせる。福王を交わすと、わずかに開いたシュートコースに迷わず一蹴。ポストに当たったもののゴールに吸い込まれてしまいました。佐川急便時代から何度も見たような気がする「嶋田の角度」でした。

ところが岐阜の喜びも束の間。熊本も次のリスタートから左サイド深くにカレンが走り込み、納めたボールを迷わずスペースに返す。そこにスピードに乗った藤田が走り込んでシュート。一瞬で同点にしてしまいます。戦前「藤田のアシストからカレンの得点」というシーンを想像していたのに、いい意味で裏切られる。磐田じこみの“無言の”連係を垣間見せました。ここから一気に攻守が逆転。熊本が息を吹き返します。後半から、堤に代わって入っていた左SBの西が、得意のドリブルでアクセントを付ける。藤田に代わって入ったファビオは、入っていきなり宇留野からもらってシュート。岐阜のDF陣を脅かす。ファールからの早いリスタートでリズムを作っていく。縦にパスが通り、縦に次々と人が絡み、入り込む。CKからファビオが高い打点でヘッドするも右に反れる。平木の枠を捉えた無回転ミドルシュートはGKがなんとかクリア。この勢いに対して岐阜はとにかくなんとか跳ね返し、やっと凌いでいるといった状態。ファビオのパス&ゴーの動きに混乱している。それはまるで、チェスの盤面上を縦横無尽に行き来する馬の形のナイトの駒のように見えて…。西が突っかける。平木がさばく。カレンが流れてためを作る。これはこのまま追加点が取れる。時間の問題。必ず逆転できる。久しぶりにそんな匂いがプンプンしていたのですが…。

昔よく見ていたJ1の試合。90分間のなかで時間帯によって主導権は行ったり来たり。繰り出した交代カードが奏功しての大逆転劇、といったドラマをよく見た覚えがあります。そんな試合を彷彿とさせる。切るカード、切るカードで、これほどまでに流れを変え、勢いづいた熊本を見たことがあったでしょうか。昨シーズンのエントリーで、「まるでギアをシフトダウンするように」と例えた選手交代とは雲泥の差でした。それほど控えの選手層が厚く、個性的で充実してきた証なのでしょう。今シーズン当初からの選手起用の根底には、そんな「試合の流れを変えられる選手」は“藤田だけ”ということがあったと思います。だからあえてベンチに温存していた。今、試合の流れを変えるカードが複数枚ある。だから藤田のスタメンが実現した。そんな後付けのような推測までしてしまいます。

ただ、しかしこの試合、圧倒的な勢いはあったけれど逆転はなりませんでした。それもまた今の熊本の実力なんだということでしょう。なんとか勝ち点1を分け合って、順位はかろうじて6位のまま。次節、3位千葉への挑戦権はまだ失っていない。そんな変な理由付けをして次の試合へのモチベーションをつないでいるわれわれです。

今日のスカパーの解説も「熊本にとって、J1昇格を考えると、絶対に勝利が欲しい試合」といったことを何度か口にしていましたね。第三者から見れば特に、そう言わしめるようなものがあるのでしょう。今日の前半にしても、“よく研究されている”感じがしています。少しづつですが、これまでと微妙にリーグ内でのバランスが変わってきている。自分達が意図していないうちに、「一泡吹かせてあげよう」という対象になっているような。相当スカウティングされているような…。高木監督も、それは感じているのでしょう。だから裏をかくようなことも意図して、色々なことを試しているのではないでしょうか。
われわれは、まだまだJ1の扉のその“隙間”から覗き見している、そんな意識であることには変わりありません。昨年の水戸が感じたように、一昨年の鳥栖がそうだったように、本気で開けようとして、それでも簡単には開かないJ1への扉。われわれファンも心して、まず、扉に手をかけ、力を込めて挑んでみること。その扉の重さを本当に実感するのはそれからなのでしょう。

TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/264-5cf2db43