前日まで年甲斐もなく自家用車交代運転での弾丸ツアーを決行しようかと迷っていましたが、最終的には断念しました。初めて熊本がJ1勢それも王者・鹿島と戦うその試合をこの目で確かめたかったのももちろんですが、試合レポートに穴が空いてしまうのが不本意で。ただ、振り返ってみれば2年前の天皇杯・栃木戦のときも、散々NHKに毒づきながら試合自体はレポートできていないことに気づきました。(しかし、皮肉にもそのとき書いたエントリーが、今でも越えられない記録的な拍手をいただいているんですが。)

まぁ、NHKがこの日、ソニー仙台×C大阪、新潟×町田というカードを中継に選んだのは仕方がない。アップセットが醍醐味のこの大会において、JFLのチームがJ1チームに挑むのですから…。それに滅多に電波に乗ることのないJFLのチームですから、ファンとしても大喜びだったでしょう。われわれがそうであったように…。ただ、あれだけ放送帯を持っているのに、生放送もなし。生と録画を駆使すれば、倍以上のカードが放送できたはずです。もはやここまで試合放送が少なくなってくると、この天皇杯というコンテンツを、放送局NHKが独占していること自体が罪のような気がします。

ところがそこに救いの手が差しのべられました。なんと鹿島の公式ウェブサイトで、インターネットラジオでのライブ中継があったのです。ラジオだから独占的なNHKからも許されるのか、クラブの公式サービスだからなのか…。ま、細かいことはどうでもいい。とにかくありがたくPCの前に座りました。

この実況自体傑作でしたね。鹿島公式ゆえに、完全に向こう寄りなのはあたり前として、主審のジャッジに対してあからさまに不満を示す。しかも、場内アナウンスと兼務しているために、点が入ったとたんスウィッチを変えて「ただいまの得点は…」と場内へアナウンスする声も入る。両チームのチャントも聞こえるし、目の前にあの鹿島スタジアムが浮かんでくるようでした。いやぁ、ラジオでサッカーを聴いたのも何年ぶりかわかりませんが、手作り感満載なのに実況自体は的確で、なんというか鹿島の懐の深さというのか、重ねた年輪というのか、妙なところでJ1を実感してしまいました。そして同時に、われわれが掲示板にケータイから稚拙な試合速報をしていたあの頃のことも思い出す。

マーケットのニーズには逆らえない。メディアが多様化した今、どんなにコンテンツを独占しようとしても無理なのではないか。特にJリーグを頂点としたサッカークラブは、地域コミュニティを土台としたもの。これからもどんどん細分化、深化されたニーズに適応した新たなメディアが現れてくるような気がするし、そのキャスティングボートはコミュニティ側、われわれファンの側が持っているような気がします。天皇杯に関してNHKに感じる違和感も、きっとそんな過渡期の状況を表しているのかも知れない。なんてことも思ったりしました。

試合のほうは、やはり鹿島に支配されている時間が長く続いたようですね。早々にマルキーニョスにゴールを割られる。しかし熊本もセットプレーのこぼれ球を繋いで、福王が中央からミドルで同点。その後しばらくは熊本も攻勢だったようですが、前半のアディショナルタイムのCKで岩政の頭にやられました。ここを守り切れていればまた後半の展開も違っていたのかも知れません。

松橋もファビオも藤田をも欠いた熊本は、カレンをトップに置いた4-5-1という布陣だったようです。鹿島の選手の多くが言及し、先の実況アナも「引きっぱなしで出てこない熊本」みたいな言い方をしていましたが、J1王者・鹿島相手に守備的な戦略で臨むのはあたり前のこと。「持たされるより持たせているような状況を自分たちからつくっていって、カウンターもしくはセットプレーでなんとか点を取るということが目的」だったと高木監督も試合後はっきり明言しています。支配しながら崩せない鹿島側のイライラが、そんな言葉や主審への不満に表れていたのだと感じました。

高木監督は、とにかく鹿島という“力の差のある”チームに勝つために、勝機をうかがうためのシステム、戦術を駆使し、選手はこれを十分に理解し、応えた。愛媛との二回戦で“ますます複雑なモチベーション”と書いたような空気はなかったようです。まだまだ続くリーグ戦に向けても、また昇格への長い戦いに対しても、確かなものを持ち帰ったのではないか。そんな戦いだったような気がします。

最後に、敵将オリベイラが、熊本についての印象を尋ねられたコメントを全文書き留めておきます。この王者・鹿島との対戦を“記念”とするのではなく、近い将来、同じカテゴリー、もちろんJ1で戦う日のための“記録”として…。
そして来るべき日にこの初対戦をしっかり思い出すために、この観戦記ともつかないエントリーを「対戦レポート鹿島」の第1回目としておきたいと思います。

10月9日(土) 第90回天皇杯3回戦
鹿島 2 - 1 熊本 (13:00/カシマ/3,834人)
得点者:14' マルキーニョス(鹿島)、26' 福王 忠世(熊本)、45'+2 岩政 大樹(鹿島)

Q=熊本についてどういう印象を持ちましたでしょうか?
「おもしろいチームです。今日はトーナメント方式ということでやり方を変えているということが明確にわかっていました。J2の前節の試合も見ましたし、その他の試合も見ました。まったく違うやり方であって、もっと攻めの部分でもいろいろな方策を取っていて、組織的なプレーやポジションチェンジといういろいろな狙いを持っていました。今日は、この大会方式も影響してやり方を変えているのだと思います。選手個人でもおもしろい選手が存在しますし、将来的にはおもしろみのあるチームではないかと思います。リーグ戦とは全く違うやり方を取っていることは把握しています」(J‘sゴール)



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