10月17日(日) 2010 J2リーグ戦 第30節
徳島 1 - 0 熊本 (19:04/鳴門大塚/3,322人)
得点者:5' 津田知宏(徳島)


時間は開始からわずか5分というところでした。バイタルが少し緩くなったところで曲者・柿谷が収めたあと、中央に小さく軟らかいパスを送る。そこに走りこんだスピードという“力”をボールに伝えるように津田が鋭く振りぬくと、グラウンダーのシュートは南の手をすり抜けてゴール右角に突き刺さりました。J2得点王を争う津田の、見事という他にないようなシュート。いつもなら早い時間帯でのこの事故にも似た1失点は、すぐに切り替えて臨むのに十分な時間が残されていたわけですが…。しかし今日のこの失点は、「守備から入る」ことを信条としているチームにとって、ゲームプランの変更を余儀なくされるだけでない、予想以上の大きな“ビハインド”になりました。

天皇杯を挟んで再開されたリーグ戦。相手は3連敗中の徳島とはいえ、アウェー鳴門では過去、勝ち点どころか、まだひとつのゴールも取れていない熊本。まさに鬼門の地と言えました。

徳島 (先発フォーメーション)
19平繁 11津田
13柿谷7徳重
8倉貫14濱田
24井上25平島
2三木20ペ・スンジン
 23日野 

熊本 (先発フォーメーション)
32カレン 10松橋
33片山11宇留野
30渡辺22吉井
19堤24筑城
6福王16矢野
 18南 

熊本も決して入り方は悪くはなかったのです。特に今日は徳島の弱点を左サイドとスカウティングしたうえで、右の宇留野を起点に次々とチャンスを作る。そんなジャブの撃ち合いのような時間帯での早い失点に、昨年の0-6の展開が頭をよぎる。一方で、今季のサッカーなら必ず勝機が訪れる。そんな相反する緊張感とともに試合を見つめます。

吉井が右サイドで作って、中の松橋にパスを送る。松橋のシュートは惜しくもDFに当たって枠の左。続くCKにファーの福王がヘッドで中に入れる。ゴール前の松橋が頭で押し込みますが、ゴールライン上にいた倉貫が跳ね返す。なんとも惜しい場面。相次ぐCK。片山のキックに再び福王のヘッド。これはゴール前でバウンドしてピンボールのようにポスト、バーに跳ね返される。そこに松橋が反応して蹴りこむが決まらず。続いて福王が、片山がこぼれ球を蹴り込むがそれでも徳島ゴール前の厚い壁に跳ね返されて、決めきれない。

熊本の猛攻に対して、「もう一点取らないと、この試合勝てないぞ」と敵将・美濃部監督はハーフタイムに檄を飛ばしたそうです。自陣に押し込まれていた徳島でしたが、徳重や平繁がときおり鋭いカウンターで好機を作ります。しかし南を中心とした守りで熊本ががっちりブロックするという展開。

宇留野に代えてファビオを投入。一気に圧を掛ける熊本。ファビオが溜めて、吉井も上がれるようになります。中央で奪うと速攻。左から入れたパスをカレンがスルー。ファビオが繋いで右に走り込んだ松橋が奥深くからクロス。これはDFがクリア。続く左CKからファビオの高い打点のヘッドは惜しくも右に反れる。筑城が右サイド抜けてグラウンダーのクロス。クリアボールに詰めた吉井のミドルは跳ね返されます。

自陣に釘付けにされている徳島は、打開策として平繁に代えてドゥグラスを投入。早速そのドゥグラスがカウンターで抜け出しますが、シュートは南がセーブ。熊本は堤を下げて西森を右SB。筑城を左にスウィッチして更に攻撃的に。これに対して徳島は完全に引いてしまう。西森が右サイドドリブルから左足に持ち替えてクロス。飛び込んだ吉井、フリーのヘッドは狙いすぎたのか枠の左。ほとんど1点。状況は悪くない。悪くはないが時間もどんどん過ぎていく。

残り10分になって、徳島は柿谷に代えてさらに六車で守備固め。熊本は松橋から西に交代。西森のCKをGKがパンチング。これを拾った福王がシュート。跳ね返りを左から矢野が押し込むが決まらない。

残り5分。もう徳島は出てこない。西の一騎のドリブルが潰される。味方に何か要求している西。このシャイな男も熱くなっている。徳島は津田に代えて羽地を投入。担架を要求した津田のあからさまな時間稼ぎに、アディショナルタイムが3分から4分に修正される。点差がわずかに1だからこその徳島の狡猾さ。同時に熊本にとっては1点取るには十分な時間。しかし、片山が入れたクロスも跳ね返されると、ドゥグラスにカウンター攻撃をくらう。強烈なシュートを南がなんとか防いだところで終了のホイッスルが鳴ってしまいました。

1点を先取したあと、時間を追う毎に自陣深くに引いていった徳島。ゴール前で身体を投げ出すようにシュートをブロックし、泥臭いまでの守りのサッカーを実践した。内容を問わず勝利に執着した姿は、とにかくこの3連敗という悪い流れから抜け出したい。そんな気持ちの表れだったのでしょう。熊本はいわばその気持ちを上回ることができなかった。12本のシュートを打ちながら、この1点を覆すことが最後までできませんでした。

テレビカメラは試合中、時間とともに歪んでいく高木監督の表情を映し出していました。彼は果たして何を思っていたのか。

試合後には「内容的には悲観するようなシーンはなかった」とコメントしました。立ち上がりの失点に関しても、徳島に関するスカウティングの「誤算ではない」と。ある意味、あのゴールは相手を褒めるしかない。そんな意味にも受け取れます。結局は「こういうゲームをひっくり返すこともこれからの我々の課題」であり、ひっくり返す意図を持った攻撃を組み立てることはできていましたが、結果としてひっくり返すことができなかった。その力が今の熊本には無かったということなのかでしょうか?

先発の選手起用に問題はなかったのか。繰り出したカードは奏功したのか。あの終盤の何とも言えない歪んだ表情。この試合について、監督は相当考え込んでいるのではないでしょうか。試合後のスタッツを見るまでもなく、相手とはほぼ互角。そのなかで1-0という最小点差で敗れた事実には、選手起用を含め今持てるだけのチームの総力を出し切れたのか、引き出せたのか、指揮官自身の能力が浮き彫りにされたゲームだったからです。

もうひとつ、この試合の結果論、善し悪しとは別の次元で、今われわれが注視している点がいくつかあります。片山の先発出場とともに原田がベンチを温め、渡辺が起用され始めたこと。ほぼプレースキッカーは片山が努め、同じく左足の平木も呼ばれなくなったこと。片山に試合中アクシデントがあったときに備えて、左足キッカーとして原田を温存しているのか。堤を下げての西森投入も、攻撃的意味合いより、右足キッカーの交代に見えます。もちろん、相手が完全に引いてしまったこの試合展開のなかで、セットプレーは大きな得点機であることに違いありませんが。

さらに言えば、カレンがやりたいことと周りの選手から見た彼のプレーへの理解が未だにかみ合っていないことのジレンマ。それでも使い続けるのは、ここをブレークスルーしなければ意味がないということなのか。では、松橋との相性はどうなのか。ファビオはやはり後半途中のカンフル剤なのか。FW3人を選ぶとすれば、やはりこの3人になり、この順番になってしまうのか…。相手が引いているからこそ、打開策の引き出しを持っているのは藤田ではなかったのか。また藤田こそ、カレンを活かせる選手ではないのか、などと。しょせん、素人ファンの、結果論的堂々巡りに過ぎませんが。

「内容はよかった」「惜敗だった」という声もある。もちろん監督も言うように悲観する必要は全くない。確かに、このカテゴリーでこれだけ引かれて、守られてしまったことはほとんど初めて。しかし、こんな相手、こんな試合こそ力づくでも逆転で勝ちきれるチームにならなければ、J1の扉を口にするのは、まだまだおこがましいというのも実感でした。1-0という試合を自分のサッカーの美学だとも言う高木監督が、その典型的ゲームを相手に演じられて何を思うのか。考えろ、考えろ。次節は柏戦。決して勝てない相手ではないと監督も選手たちも思っているだろうし、われわれファンもそう思っているのだから。


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