11月23日(火) 2010 J2リーグ戦 第36節
大分 1 - 1 熊本 (14:34/大銀ド/14,176人)
得点者:54' 井上裕大(大分)、56' 片山奨典(熊本)


この大分戦に前後して、退団する選手あるいは契約満了選手が公式に発表されました。毎年のことながら、心の中にぽっかり穴が空いたような、色んな思いが交錯するそんな季節です。しかし、その発表の一番最初が藤田選手だったのは、驚きとともに非常に残念でした。藤田俊哉選手に関しては気持ちを落ち着けて、いずれまとまった文章を書きたいと思っています。とにかく今回は、久しぶりに行ってきたアウェー大分戦をレポートします。

熊本から阿蘇を越えて車を走らせること3時間。今は大分銀行ドームと呼ばれる大分スポーツ公園総合競技場に到着しました。半オープンのドーム型スタジアム。アウェーゴール裏は半分だけに制限されていましたが、バス8台プラス自家用車組多数と伝えられた熊本からのファンが、逆に密集している分、ロアッソレッド一色。“声の束”もまとまって太く響きわたる。大分の青と、熊本の赤のコントラストが美しい。スタジアムは試合開始前からヒートアップ。バトルオブ九州。互いに勝利への意地がかき立てられます。そう、数日前に熊日夕刊に載った広告のコピー「決着をつける。プライドを賭けて。」という気持ちに。

試合前にアップする選手たちに向けられるゴール裏サポーターからの選手名コール。藤田選手にだけは2度繰り返されて。それに気づいて手を振る藤田選手。その姿を見ただけで、われわれロートルファンは胸を熱くしてしまいます。

熊本は前節と同じ先発陣。ただしベンチにはようやく怪我が癒えた市村の姿が。今シーズンに間に合ってよかった。チームが不調に陥るたびに、正直なところ、どれだけこの男の復帰を待ち望んだことか…。対する大分は3-4-3というシステム。東、キムボギョンという攻撃の2枚看板をアジア大会招集で欠くものの、昨年栃木にいた河原は運動量の多い嫌な選手。またワントップにはユースの為田をスタメンで起用してきました。スタメンの平均年齢も22歳前後という、ある意味で次を見据えたような布陣でもありました。

大 分
 28為田 
6土岐田19河原
21刀根4益山
32宮沢14井上
26池田36菊地
 33藤田 
 16清水 

熊 本
27ファビオ 10松橋
33片山13大迫
8原田22吉井
19堤24筑城
6福王16矢野
 18南 

開始早々、熊本にビッグチャンス。片山が左サイドからグラウンダーで入れたセンタリング。松橋がダイレクトで撃つとディフェンダーに当たったボールがこぼれて再び松橋の足元へ。ゴール前真正面だったのですが、シュートは左に反れて先制を逃します。この日、熊本は非常にアグレッシブに試合に入りました。セカンドをよく拾い、大分陣内に押し込んでいきます。とにかくまず“入り方”を意識したというような戦いぶり。

ただ12分頃から大分も徐々にペースを掴み始める。捕まえきれていなかった熊本の前線のマークが落ち着くと、DFラインを上げられるようになる。中盤4人が網を張ってボールを奪うと、前線3人が流動的に攻撃に転じる。19分頃、為田が右サイドを突破してPエリア侵入。そのまま撃たれるかと思ったのですが、ファーに走り込んだ土岐田へのクロスを選択してくれました。このボールに土岐田の頭が届かない。熊本としては難を逃れます。36分には左サイドから為田がファーにクロスを送る。河原がフリーでダイレクトボレーを撃ちますが、間一髪、クロスバーが跳ね返してくれて胸をなで下ろします。続いても大分のカウンターから益山のシュートが、福王に当たり南が逆を突かれるも好反応で抑える。危ない場面が続きます。

熊本もビルドアップはしていくものの、大分の3-4-3のシステムが前後左右でサンドしてボールを奪われる。アタッキングサードで何度もセカンドを拾い、最終ラインを崩そうと試みますが、最後の壁に阻まれる。一進一退にも似た攻防は、守備重視スタイルの両チームを象徴している様でもありました。前半のシュート数は公式記録では大分2、熊本1というものでしたが、後半俄然攻守の切り替えが激しくなって展開がガラっと変わります。

まず押し込んできたのは大分。運動量のギアをシフトアップすると、2列目3列目から次々と前線に顔を出すようになる。54分、大分右サイドから入ったボールを井上がPエリアに縦に入れる。福王のクリアが再び井上にはじき返したようにこぼれてくると、それに足を合わせたような井上のシュートはコースを突いてゴール左角に。南にもタイミングのとれなかった局面。福王のクリアも井上のシュートも、まるでピンボールではね返る玉のように、高木監督が試合後「イレギュラーなケース」と表現したゴールで大分が先制します。

どうだ見たか。とでもいわんばかりの大銀ドーム中の青いサポーターの歓喜。しかしそのわずか2分後には、その勢いは冷水を浴びせられ、沈黙させられます。56分、片山が中盤で貰うと一騎ドリブルで仕掛ける。キックフェイントでファーストディフェンダーを抜いたあと、スピードを緩めずもうひとり抜くと、角度のないところから左足を一閃。ゴールに突き刺し、熊本が同点に追いつく。今度は赤いサポーターが「どうだ見たか」とマフラーをぐるぐる回す番。今節のスカパー!アフターゲームショウのベストゴールに輝く、誰もが認める”技”でした。

ここからしばらくは勢いづいた熊本の時間帯でした。右CKからニアのファビオが反らして中の松橋。ヒールで触るが枠の左に反れる。ファビオが切り込んでシュートを放つも松橋に当たってしまう。こぼれ球を拾った原田の鋭いシュートはポストの左。しかし、この一連の流れ流れでミドルを放った片山が足を痛め退くと、それまで大分陣内を脅かしていた熊本の勢いが、みるみるしぼんでいきます。

矢野のパスミスを為田が奪うとPエリアに侵入。強烈なシュートは南がなんとか防ぐ。河原が何度もアタッキングサードを襲う。果敢にシュートを撃つ。熊本はこの日、古巣との対決で気合いが感じられる原田のプレースキックからカレンが頭で繋ぎ、ゴール前の福王がバックヘッドで流し込もうとしましたがキーパーの手中に収まる。両者決定機を棒に振って、さすがに中二日の疲れが見え始めます。

時間は残り10分を切る。ここで松橋を諦めて投入されたのが市村でした。右SBは筑城をそのままに。市村は一枚前の右SHに入ります。これは奏功しました。というより、ピッチの右半分に太く逞しい柱が立ったような感覚。右サイドを上がると、左足に持ち替える得意のパターン。クロスはファビオが頭で捉えますが惜しくもゴールマウスの右に外れる。続いても右奥に流れた西からマイナスのパスを得意の角度からシュート。枠をとらえた強烈なボールに慌てたGKがパンチング。ボールは詰めていたカレンの足元にはね返りますが、カレンがタイミングを合わせられず枠を外してしまう…。しかし、わずか10分でしたが、市村が帰ってきたことを思い知るには十分な存在感を示しました。

終了間際までカウンターの応酬。両者一歩も譲らない。残り時間数秒でも点は取れる。その1点こそ、この戦いに決着をつけ、勝ち点2を積み上げる重要な追加点でした。しかし、2度目となる大分との戦いも、また90分では決着つかず。痛み分けのドローという結果に、青も赤も違いなくため息をつきました。

ただ、後半、特に終盤にかけてのハードパンチの応酬のようなカウンター合戦は、見る者を飽きさせませんでした。終わってみればシュート数は大分9に対して熊本が12。そのうちゴールマウスを割ったのは確かに互いに1本づつとはいえ、シュートの度に歓声を上げたり悲鳴を上げたり。前回対戦時も感じた、まさにサッカーの醍醐味。それを堪能できたゲームではなかったかと思います。その戦いに決着はつきませんでしたが、確かに「プライドを賭けた」姿は存分に感じることができましたし、われわれ自身もその一員として“参戦”した。そんな気持ちを味わうことができました。

夕暮れ迫る大銀ドームをあとに、青いサポーターに囲まれながら駐車場まで歩く。何も臆することなく歩く。W杯開催スタジアムに圧倒されることも、J1経験のサポーター数に臆することもなく。そんな自信も、今季のロアッソがもたらしてくらたもののひとつではないだろうかと思いました。

前回対戦時にご紹介した奥さんが大分ファンで、旦那は熊本ファンといううちの会社の新婚夫婦も参戦。帰りの車のなかでも気まずくなくて助かったとか。あなたたちにとっては、最良の結果だったかも知れません…。しかし、来シーズンに持ち越されましたが、今度こそは決着をつけさせてもらいますよ。

さて、次節はいよいよホーム最終戦。ロアッソOB対ユースチームというお楽しみもありますが、退団セレモニーでは、間違いなくタオルマフラーをハンカチ代わりに、涙腺が全開になることをもう覚悟しています。その前に、北九州との勝負事にはきっちりカタをつけましょう。

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