12月4日(土) 2010 J2リーグ戦 第38節
札幌 4 - 0 熊本 (12:34/札幌ド/14,299人)
得点者:31' 三上陽輔(札幌)、64' 砂川誠(札幌)、75' 西嶋弘之(札幌)、86' 三上陽輔(札幌)

「要はまだまだ大人のチームになりきれてなかった」(J‘sゴール)ということだと、高木監督は今日の試合を言い表しました。前半と後半で別のチームになってしまった。3点目のミドルシュートに身体を張る選手がいなかったと。つまりは、アゲンストの状況のときに気持ちの表れる選手がいなかった。ひっくり返そうとチームを引っ張る選手がいなかった。そう言いたいのではないでしょうか。同じように、このことが今シーズンを通してのチームの課題であったし、その象徴的なゲームを最終節で見たということだと思いました。

札 幌
 31三上 
 32高木 
8砂川7藤田
18芳賀23岩沼
3藤山6西嶋
4石川2吉弘
 1佐藤 

熊 本
32カレン 10松橋
33片山23西
8原田30渡辺
19堤24筑城
6福王16矢野
 18南 

試合の入り方もよく、前半は五分五分か幾分熊本の方に部がありました。中盤で奪ったボールをカレンがドリブルで持ち込むと、市船の同級生、札幌のGK佐藤に挨拶代わりのシュート。枠は外れますが、まるで前節の2ゴールで吹っ切れたかのように、積極的にゴールを目指します。西のドリブルから松橋をポストに使い片山がミドルを放つ。今度は右サイドでカレンとワンツーから抜け出した西がドリブルで切り裂きGKと1対1。シュートはGKがパンチングで逃れますが、これを拾った松橋から原田。原田のミドルがDFラインでこぼれてきたところをカレンがすばやく撃つ。しかしGK佐藤がしっかりキープしました。

「あそこでしっかり決めなければ苦しくなる」。試合後カレンがコメントしたのはこの時間帯のことを指していました。その後もセカンドを拾い、繋いでいく熊本でしたが、札幌のプレスに少しずつ遅れ始める。両者アグレッシブに戦い、攻守入れ替わりの激しい展開。まさにそのせめぎあいの最中でした。

札幌、DFラインから出たロングボールを、左サイドで高木がタメながら砂川の上がりを待つと砂川に預ける。熊本守備陣がニアに入ってきた札幌の選手に引き寄せられると、スピードに乗った砂川がダイレクトにクロスを入れた先にはフリーの三上。弱冠18歳。これをダイレクトで捕らえてボレーシュート。南も横っ飛びで防ごうとしましたが、ゴールに突き刺さり、札幌が先制点を上げました。

その後しばらくは札幌の時間帯。ロングパスに砂川がDFの裏を取ると南と1対1。しかしこれは南が果敢に飛び出してセーブ。熊本は福王のサイドチェンジに筑城を走らせ、松橋に繋ぐと強烈なミドル。これはパンチングで防がれる。札幌も岩沼からDF裏へのパスに高木が反応。Pエリアに入って撃たれますが、シュートはポストの右に反れて事なきを得ました。

1点のビハインドを追う熊本は、後半開始から筑城に代えて市村を投入。SBながら高い位置を取らせます。右サイド奥にドリブルで仕掛けるものの、DF二人に阻まれる。カレンのポストプレーなどから片山が得意のミドルを何本も放ちますが、今日は枠を捕らえきれない。逆に、最終節ホームのサポーターのドーム中に反響するような声援を後ろ盾にした札幌の圧力は衰えるどころか増すばかり。高い位置でのボール奪取を狙っている。

渡辺を諦めて、中盤運動量の多い吉井を投入したその直後でした。DFラインでポスト役を演じようとした砂川を矢野が後ろから倒してファール。Pアークやや左からのFKに立ったのは砂川自身。右足で放たれたボールは、ギリギリ壁を越えるとゴール左に突き刺さる。南も見送るしかない絶妙のFKで追加点を上げます。

そしてここが冒頭述べたような分岐点。せめぎ合いのバランスがセットプレーという“アクシデント”で相手側に傾いたこの試合の潮目。決してチーム力として劣っているわけではないのに、しかし、ここからこの2点を追い、それを覆してやろうという気力と体力が熊本には感じられませんでした。札幌のプレスは衰えを知らず、熊本は自陣から押し上げが効かない。中盤で前を向かせてもらえず、最終ラインからのロングパス頼みの展開。そして前線では納めきれず、選手間の距離は開くという悪循環。守っては組織的なプレスが寸断されたように、札幌の動きの方が早い。さすがに遠いアウェー移動に疲れがあるのかとも見えました。

札幌の波状攻撃を跳ね返し続けたものの、再び拾われ続けると、75分、浅いクリアボールを上がってきたDF西嶋に中央からミドルで撃たれて3点目。86分には、カウンター気味に持ち込まれると左サイドを藤田にえぐられマイナスパスを送られる。中央で待っていたのはまたしても三上。ダイレクトで撃たれるとポストに当たったシュートは、ゴールマウスに転がりこみ4点目となりました。

熊本はその前に西に代えて宇留野を投入しましたが奏功せず。終盤、カウンターからカレン、松橋と渡ってエリアに入りますがシュートは枠の上。あるいは原田のFKをGKがパンチングで逃れたボールが福王にこぼれ、これをループで狙いますがバーの上。市村が右サイドをえぐって上げたクロスに、カレンがジャンピングボレーで合わせますが、これも大きく外れる。とうとう一矢も報いることなく、大敗で敵地に膝をつきました。

振り返ってみれば、熊本はこの札幌ドームのピッチに立つのは初めての経験でした。1万4千人が詰め掛けた最終戦。その発するチャントが、天井に反響し怒涛のように押し寄せるドームならではの独特の雰囲気。少しその雰囲気に臆し、あるいは選手どうしのカバーや指示の声も届き難かったのかも知れません。それよりなにより、今日は8年という在籍期間を終え契約満了になった札幌・砂川に対して、試合前に示されたゴール裏の「8」の字のコレオ。「オレたちの砂川」のチャント。それに応えるような砂川自身の奮闘と、それに鼓舞された周りの選手たちの勝利への渇望が熊本を上回ったような気もします。試合終了間際にも再び示されたゴール裏の「8」のコレオを見て、画面に映し出される砂川の目も少し充血しているように見え、ファンから愛された選手だったことが痛いほどわかりました。

冬の到来を感じさせる悪天候の中、北の大地まで応援に駆けつけた熊本のゴール裏のサポーターたちは、敵地で肩を落とす選手たちに拍手を送ってくれました。それはテレビ画面越しに声援を送った多くの熊本に居るサポーターたちの気持ちも代弁した、本当の最終節に贈られた、選手たちへのこの1年の慰労と感謝の拍手でした。

シュート数は札幌の9を上回る16。しかし、いかんせん完全に崩しきったシュートではなく、ゴールを割ることはできませんでした。もちろん、この試合は、その総括とは別に、今季全体の総括がいずれ色々なメディアでなされ、また当然われわれも考察したいと思いますが、現時点では、当日の自身のブログで南が「最終戦」と題して書いていることに言い尽くされているように思います。

「今年の悪い試合を象徴するような展開だった」としながら、来季への課題については今季の数字が物語っていると。それは①得点の少なさ。それは一概にFWだけの責任ではなくボランチを含めた2列目の得点が少ないと。②セットプレーからの得点が少ないこと。③もっと攻撃の時間を増やし守備の時間を減らすこと。そしてこの試合がそうであったように、④逆転勝ちが極端に少ないこと。「それにはリードされても慌てず折れない強いメンタリティーと自分たちへの自信がもっともっと必要」だと書く南。それは冒頭の「まだまだ大人のチームになりきれていない」という高木監督の言葉とも相通じるものがあるように思います。確かにリードした側が、いつ逆転されるかとビクビクするようなチームってありますよね。

またまた記録を遡れば、J昇格後の過去3シリーズ。終盤負けなしの好調を続けながらも、最終節は1年目が広島、去年が甲府、そして今年はこの札幌と必ず黒星を喫している事実が浮かび上がります。これもまた、慢心に陥らず次季に課題を持って繋げることだと思えばそれも良しなのですが。昇格から3年。今年もまた“積み上げたもの”と、まだ“足りないもの”を知ったという意味で…。

それは特に今季、最終的に落ち着いた7位という順位。これは目標の10位以内を確実に勝ち取ったものであり、前年の14位から確実に“積み上げたもの”の大きさ示すものです。また連敗は第28節・29節の一回だけ。いかに積み上げた土台がしっかり固まってきたか…。しかし、一方では同時に柏、甲府、福岡というJ1昇格組との間にある、歴然とした力の差をハッキリと認識したシーズンでもありました。まさしく“足りないもの”を…。

最終節で苦杯を舐めつつ今シーズンを振り返る、そんな複雑な心境を一番言い表している言葉は、今季2年目の熊本のシーズンをおくった宇留野のブログにありました。「過信したままで終わらなくてよかった」「じゃなきゃ来年J1を意識して戦う上で痛い目にあうから」と言いつつ、しかし「このクラブ、選手はこの一年で見違える程成長した」「そして『ロアッソ熊本』には無限大の可能性を秘めている」と記した宇留野。

“有終の美”は来年までお預け。いや、ある意味では今季のわれわれの戦いは前節ホーム最終戦で終わっていて、札幌戦はすでに来期への第一歩だったのかも知れません。ここで見えた課題はなかなかやっかいで、しかしここを乗り越えないと次には進めない。オフシーズン、チームがさらに進化していくためのモチベーションにしたいものです。それこそ来季の目標=“昇格”を現実のものとして語れる骨格ということでしょう。来季が待ち遠しい。すでに思いはそこに飛んでいる。完敗ではありましたが、逆にそんな気持ちをかきたてられた最終節でした。

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