2011.02.02 カレン
先週、先々週と練習試合を観てきました。ユース相手の先々週はひとり落として10人で戦い、この前の九州大学選抜とのTMはフルで戦っていましたが、どちらも中盤はダイヤモンドでワンボランチ。これは格下相手だったからでしょうね。エジミウソンがそこに入っていましたが、いやはやなかなかの存在感。運動量、キープ力、球捌きとも“唸らされ”ました。他にも長沢と斉藤のゴール前での落ち着き。仲間も前線に入ってのアピール。武富の技術とアイデア。廣井は残念ながら別メニューでしたが、今年の新加入はいいですよ。スタメン争いが実に楽しみです。まだまだ今のTMは、チームとしての戦術や連係という段階ではなく、選手の個性を見極めるというところに力点が置かれていると思います。あっという間にもう2月、順調に仕上がっていくことを期待しています。

さて、この間、われわれもアジア杯の日本代表の活躍に釘付けになっていましたが、寝不足のわれわれに、偶然、ネット上のこんなコラムが目に留まりました。皆さんも既にご存知かも知れません。

「カレン・ロバート、新たなチャレンジを求めて ~熊本退団からVVV移籍までの裏側」
「オレのサッカー人生って何の深みもない」という焦燥感が海外移籍へと駆り立て、欧州クラブにパイプを持つ代理人・清岡哲朗氏に自らアクションを起こさせたことが書いてあります。ここで印象深いのは、「この先、日本代表を目指すならセンターFWではきついと思った。そのけじめをつけさせてもらったのは熊本なんですよね」という彼の言葉でした。「熊本ではセンターFWをやらせてもらって、もう自分はそのポジションで勝負するのはきついなと思って」と。昨年7月、熊本に移籍以降、途中出場を含めてほぼ全試合でカレンはFWで使われました。しかし、初出場の富山戦こそ初得点を挙げたものの、そこからパタリとゴールというFWとしての結果には恵まれなかった。軽妙に綴られる自身のブログの裏では、こんな想いを抱いていたのか、と思わせました。

「カレン・ロバート~J2落ちしたFWが海外移籍を求めた本当の理由」
というもうひとつのコラムでは、より彼の苦悩する姿が浮かび上がってきます。もともと持っていた膝の故障。北京五輪のときの反町監督との確執。心機一転迎えるはずだったシーズン前での体調不良。調整失敗による故障。磐田からの戦力外通告。全てが悪循環に陥っていたのでしょう。

この記事では、代理人・清岡氏が名古屋から本田や吉田をオランダに送り出した人物であり、その彼をカレンに紹介したのが、誰あろう藤田俊哉だったことも明かされていて非常に興味深いのですが、それにしても何という人生の“綾”なのかという気がしてなりません。「カレンは、こんなもんじゃない。もっとやれる選手」。いつかそんなことを藤田が言っていたのは、このことも踏まえたうえでの叱咤激励だったんですね。

しかし、だったらJ2熊本への半年間の在籍は、どんな意味だったのかと問う声があるのも事実です。もちろん彼の目は海の向こうに向いていたのは間違いない。しかし訪れた半年間のブランクに、熊本が声を掛けた。そしてカレンは、熊本のJ1昇格を請負うつもりで来た。それは紛れもない事実だと思います。半年間の自身のミッションとして。しかし。それは結果的に成らなかった。初出場以来、ゴール(得点)から遠ざかったFW。相当な責任も背負い込んでいたのではないのでしょうか。FWとしての“使われ方”の限界も一方で感じながら…。

「弱かったヘディングも、熊本の高木琢也監督から空中戦を託されるほどに上達した。ポストプレイも以前よりも格段に巧くなった。しかし、その部分で評価されることに、彼自身は矛盾を拭(ぬぐ)えずにいた。自分はFWなのか、何者なのか。思い悩むようになった。」

そして、その熊本での経験が、「自分は3トップのサイドをやりたい」という強い決心と、改めて海外への挑戦への決意に繋がったのだと。それが前出のコラムの“熊本が自分にけじめをつけさせた”という表現とも符合する。そう思うと更に、「熊本の代表であることを胸に刻み、努力していきます」という、フェンロ移籍発表の際の公式サイト上でのコメントも、よくある模範生的なリップサービスではなく、半年間とはいえ熊本在籍期間に得た貴重な“経験”に対する感謝の念がこもった、彼なりの正直な心情を吐露したものではなかろうかと思えてくるのです。

“自分はFWなのか、何者なのか”。そんなことを思いながら、カレンはあの頃、遠いゴールを目指してピッチを走っていたのですね。サッカーに「もしも」は禁物ですが、仮にわれわれが、カレンがVVVフェンロに行くという“未来”のことを知っていたら。こんな“苦悩”があったことを知っていたら、ホーム最終戦の北九州との試合、あの見事なゴールシーンで、人目はばかることなく号泣していたかも知れない。年を重ねてとても涙もろくなったわれわれに、そう思わせてなりません。

未明のアジア杯優勝で興奮した翌々日。詳細を伝える熊日の紙面を広げると、片隅に思いがけない名前がありました。日本の優勝を「欧州の日本勢も喜ぶ」と題したその短信記事は、森本(カターニア)や安田(フィテッセ)などのコメントを伝え、最後に「カレン(VVVフェンロ)は『それ(優勝)を聞いて頑張ろうと思ったが…』と吉報を知った後の試合に完敗し、肩を落とした。」と締めくくられていました。そう、この日カレンは、新天地で初スタメンを果たしたのでした。

がんばれカレン。われわれ熊本のファンははるか彼方、遠く極東の地から影ながらの声援を送りたいと思います。在籍わずか半年だったけれど、君は間違いなく“熊本の代表”なのだから…。

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