4月30日(土) 2011 J2リーグ戦 第9節
草津 1 - 0 熊本 (13:04/正田スタ/3,258人)
得点者:17' 熊林親吾(草津)


勝ったゲームのあとはメンバーをいじらない。サッカーで言われる鉄則どおり、熊本の先発は前節と同じ布陣で臨みました。互いに初ゴールを上げ「気をよくしている」はずの長沢と仲間の両FWに託して。しかし、手堅く守る草津のDFに、特に仲間の方は持ち味を出し切れずに終わりましたね。一方の草津。前節の大分戦を見た時に、まず思ったのはやはりMF熊林という存在。SHに置かれているけれどサイドを抉るタイプではなく、基本はいいポジショニングからトリッキーなパスで人を使う選手。ただ、要所要所ではエリア内に顔を出す。ダイヤモンドの熊本のシステムで、この男を誰(と誰)が見るべきだろうか。などと戦前、考えていた。その草津のキーマンに、まんまとこの日のたった1点の、それも決勝点を挙げられてしまいました。

草 津
18萬代 8アレックス
14熊林19後藤
6櫻田30松下
23永田24古林
3御厨5中村
 22北 

熊 本
9長沢30仲間
 27ファビオ 
7片山23根占
 8原田 
24筑城15市村
6福王4廣井
 18南 

前から厳しくプレスを掛けていくというのは両チーム共通の戦術。試合開始直後、まず攻勢を得たのは熊本の方でした。仲間、片山の果敢なチェイシングからエリア内に落ちたボールに長沢が前を向く。すばやく左足で放ったシュートは、しかしGKが辛うじてクリア。続いては仲間が競り合いから粘って右サイドを上がってくる市村にパス。ラインぎりぎりまで切れ込んだ市村が高く上げたクロスは、ゴール前の長沢のポイントとはややズレましたが、身体が流れながらも長沢は頭に当てる。191センチの高さの成せる技でしたが、シュートは左ポストに嫌われてしまいました。

今日も行けるぞ! 先制点は時間の問題。このときまではわれわれもそんな予感がしていたのですが、振り返ると前半ハッキリとしたチャンスは、このふたつのシーンだけ。長沢やファビオの高さに手を焼きながらも粘り強く押し返してきた草津は、17分、スローインからアレックスが熊本の右サイドを抉ると、対峙していた筑城を振り切ってエリア侵入。マイナスで出したグラウンダーのパス。ニアの萬代がスルーしたところに走りこんだ熊林の強烈なダイレクトシュートが、熊本ゴールに突き刺さりました。

ゴールの後、テレビ画面では「いまのはファールじゃないのか?」とでも言いたげに線審を振り返る原田の顔が映し出されます。アレックスに派手に振り払われてもんどり打ってしまった筑城。線審の目の前の出来事だっただろうに、「今年は随分、手を使ってもよくなったようだ」と負け惜しみの嫌味が心に浮かぶわれわれ。ただ、この線審のジャッジ、今日の試合はファールに対して消極的だということは間違いないと言えました。

前節、熊本は2点をリードしたあとからリズムを失うというメンタル面の弱さを見せました。今節は1点のビハインドからどう転じるのかという、長いシーズンこれから何度もあるだろう展開に早くも直面しました。

しかし、画面越しに見るかぎりでは、活き活きとエンジンが掛かってきたように見えるのは草津側。自陣でしっかりとブロックを作って、守りから追加点を狙う。筑城と片山の連係が悪いのか、左サイドを突破されるシーンが多い。草津の右SB古林が、思い切り良く攻撃に参加してくる。守備には難があるといわれるルーキーだけに、本来そこを押し込みたかったのですが…。

熊本のボールホルダーには、草津の選手が2人、3人と参集する。前線にくさびのボールやハイボールが入るその一瞬前に、DFが相手FWに対して身体を当てて“存在を示す”のは、ディフェンダーの“駆け引き”の一つでもありますが、鍛えられた草津の両CBのそれはガツンと強い。このいわば球際の強さというよりボディコンタクトの強さに、徐々に仲間の存在感がメンタル面とともに奪われていったように思われました。

試合は後半へ。まず熊本はその仲間を諦めて斉藤を投入。試合に入っていくため、自分のリズムを作っていくために、とにかくボールをたくさん触ろうという斉藤。この動きが全体をアグレッシブに、連動性を高め熊本が攻勢を得ます。長沢がポストプレーで落として、走りこむファビオにアシスト。しかしファビオのシュートはゴール右に反れていく。ここは決めたかった。前線でのチェイスからファビオが奪って一騎ドリブル。追いすがるDF2人のプレスバックに後ろから倒されるがファールの笛はない。

ジワリジワリと攻勢を強める熊本。それはまるで前節の岐阜の試合と逆の展開。アナウンサーが言うように、誰がみても「草津が堪える時間帯」。そして攻勢のまま15分、20分が過ぎ、高木監督の顔がゆがんで見える。「決めるべきは、この時間帯なのだが…」という心境がにじむような表情。このまま攻勢を失いたくない指揮官は、片山に代えて大迫というカードを切ってきます。さっそく長沢がエリア左に持ち出して、走りこんでくる大迫にパス。しかしこれは足元に入りすぎて撃てない。ほとんど草津陣内でゲームが進む。熊本はアタッキングサードに人数を掛けて次々と入り込んでいきますが、最後のところで阻まれる。

パスは繋がる、ボールは廻る。完全にゲームを支配する展開。怒涛のような波状攻撃。しかし、ゴールは遠い…。いつも思うのですが、こんな時間帯に必要なのは“凄み”。相手を怯ますほどの凄み。全員の「この時間帯だ」という意識、全員の“集中力”の連動。それは“気”の集中、“気”の連動。日本語に昔から「一気に」という言葉があるように。あるいは反面「気が抜けた」と表現するように。

90分のなかで移り変わる“時間帯”を感じることもサッカーの大きな見所ではありますが、一方の優位がそうそう長くは続かないこともよくわかっていました。両者に疲れが見える残り10分、草津はラフィーニャを入れて打開策を図る。熊本は筑城に代えて田中を投入。2ボランチ、3バックにしたのかも知れませんが、テレビではよくわかりませんでした。

天秤は再び草津の方に傾き始め、熊本の集中力は徐々に分断され拡散していきました。3試合目にしてホーム開幕戦という草津の勝利への執着心もさることながら、相手の集中力を途切れさせるほんの些細なところでの時間の使い方といった櫻田や松下のベテランらしい“駆け引き”にもうならされました。草津は、スタミナに難のある熊林に代えて田中で守備固め。最後は古林に代えて佐田で時間を稼ぎ、逃げ切りを図りました。

さて、この日がJデビューとなった斉藤、持ち味を出して後半の攻勢のきっかけをつくりました。しかし、ゴールに近いところではもう少し積極性が欲しかった。カードの切り方としては、斉藤先発、仲間後半投入のほうが妥当なのかとも。田中もデビュー戦でしたが、短い時間のなかで試合に入っていくのは難しかったでしょう。いわば、残り10人が連動している“気”のなかに途中から入っていくことが。あるいは逆に分散し始めた“気”を再度ひとつにまとめることが。そこがカードを切るベンチワークとしても難しく、悩みどころなのではないでしょうか。「初めての出場であの状況は難しかったと思う。」という試合後の高木監督のコメントも、そういう意味が込められているように思われました。

後半、立ち上がりから長い時間帯を支配した熊本。負けはしたけれど、悪くはない。しかし…。なんだかわれわれの稚拙な文章ではうまく表現できない熊本の課題に関して、南のブログが明快にシンプルに代弁してくれていました。
「もっと“勝ちきる強さ”やなりふり構わず点をとれるチームになっていかないと」
「まだまだそのへんの“力強さ”みたいなものが今のロアッソには備わってない」

勝ちきる強さ、力強さ、凄み…。今シーズン、最初の敗戦には、今シーズン、越えなくてはならない課題がびっしり詰まっていましたね。

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