5月8日(日) 2011 J2リーグ戦 第11節
熊本 1 - 0 札幌 (16:03/熊本/5,709人)
得点者:41' 長沢駿(熊本)


「ポイント3以上に大きい勝ち点がとれた。」(熊日)試合後、高木監督はいつになくオーバーな表現でこの試合を振り返りました。テレビのインタビューからも、日頃冷静沈着な指揮官から、その高揚感が伝わってくる。監督が“美学”とする1-0の勝利で終わったことからなのか…。いや、どうもそうではない理由が、監督の表情から伝わってきました。

熊 本
 9長沢 
 30仲間 
7片山14武富
8原田5エジミウソン
2チョ・ソンジン15市村
16矢野4廣井
 18南 

札 幌
 22三上 
 7高木 
32近藤15古田
18芳賀10宮澤
6岩沼2日高
23山下4河合
 16李 

29度を越える気温。連戦での疲れを考慮して、熊本はシステムと戦術を変えて臨みました。ファンにとってなにより嬉しかったのは、怪我で出遅れていたエジミウソンがホームKKウイングに初登場・初先発。それも原田とのダブルボランチとは意表を突かれました。そして、更にファンをわくわくさせたのは、実際に目の前にしたエジミウソンのプレーの数々。的確なポジショニングで相手の攻撃の芽を潰す。マイボールに絡むときの、意図のあるダイレクトパス。まるで熟練の技を極めた“ゲームの黒子”のように、熊本にリズムをもたらします。「この日を待っていた。自分にとってはスタートと同じ。」(スカパー!)と言うエジミウソンの、この段階でのチームへのフィットぶりには驚くばかりで、「これはきわめて信頼性が高いオプションだ」と思わず唸りました。

前線から無闇に奪いに行かず、このダブルボランチのところできっちりとブロックを作る。というのが今日の熊本の基本戦術だったようです。対する札幌は、その壁を破り切れない。ただ、フォーメーション的にもがっぷり四つの両チームが、鍔迫り合いのように押し合う時間帯が長いこと続き、そこから少しだけ札幌の方にポゼッションが傾きかけたかなと思われたときでした。

それは、自陣でボールを奪った瞬間から攻撃に転じる速さの勝負でした。武富がドリブルで駆け上がる。バランスを崩していた札幌の守備陣が、慌てて追う、詰める。4人、5人。自分に十分に引きつけたところで、武富は追走し、追い越してきた長沢に絶妙のスルーパス。スピードに乗ったまま足元にうまく収めた長沢は、GKの動きを見透かすようにゴールにたたき込みました。雄叫びを上げる長沢。駆け寄る武富。目の覚めるようなカウンター攻撃が、この試合の決勝点になりました。

もちろん熊本は、ここから守りに終始し追加点を諦めたわけではありません。ただ、好機の数は少なかった。しかし、札幌も砂川、岡本、果てはチアゴと、次々にカードを切ってきますが、攻撃のスピードは一向に上がらない。唯一、岡本がエリア内で切り替えしてシュートを打った場面ぐらいか。それ以外は、熊本が札幌のパスを寸断し、攻撃の形すら作らせなかった。ファビオ、吉井、松橋とカードを切り、攻撃的姿勢と集中力の維持に成功しました。「ゲームをコントロールすることができた。」高木監督の試合後のこの言葉は、自身とともに、チーム全体、選手全員に向けられた言葉なのでしょう。

札幌は愛媛、湘南に連敗した後、降格組のFC東京とは引き分け、前節は草津を下して今節を迎えました。いうなればやや上り調子で来ていた。一方わが熊本は、草津に敗戦から前節は北九州に痛い引き分け。おもい返せば、勝利ではあったものの、その前の岐阜戦の後半からどうも“噛み合わない”“不調”が始まっていたのかも知れない。中断期のTMで結果がともなわず、「選手のふがいなさは、自分が選手に伝えきれていないということ。自分の指導のふがいなさが悔しい」という意味の心情を吐露した指揮官の、あの思いが実はずっと続いていたのかも知れません。

そういう状況で迎えたこの試合。勝ったという“結果”はもちろんですが、これまで突きつけられた数々の課題に、中3日という時間のなかで選手たちが見事な“修正力”を見せた。アグレッシブで、攻守にリズムがあり、そしてバランスを崩さない…。昇格を狙うチームの戦いとは…。言いたかったことが、選手に伝わったという実感が持てた。人知れず苦悩していた指揮官本人だけが知る、そんな高揚感だったのではないでしょうか。

札幌の石崎監督が「がっちり守る相手を崩しきれず」と表現し、高木監督は「攻守の切り替えの速さで相手を上回った」とコメントした。もちろん熊本は堅固なシステムではあったけれど、守備を固めていたわけではなく、バランスよく攻めていました。再三指摘されているとおり、今日はあまり前から行かなかっただけ。しかし、この両監督の試合内容に対する評価の“ギャップ”はとても興味深い。それは、それぞれが置かれている状況や課題を如実に反映しているのかも知れない。同じ試合を戦う両チーム、置かれた状況や課題によって、全く違ったゲームと映ってしまう。今日の試合はそんなことまで考えさせてくれました。

5試合を終えて勝ち点10。昨年はこの時点で勝ち点11。しかし、ここから以降の10試合で積み上げた勝ち点は12でした。もう4度目になる、このリーグ戦のリズム感。黄金週間の最後を“快勝”で乗り切ったものの、チームもわれわれも、ゆめゆめ油断はないと心得たいものです。

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