6月4日(土)  2011 J2リーグ戦 第15節
富山 1 - 1 熊本 (17:04/富山/2,390人)
得点者 : 28' 森泰次郎(富山)、77' 片山奨典(熊本)


上位陣がいずれも足踏みしてくれたこの節、結果的にはわがチームもまたお付き合いする格好になりました。「追いつけたのは少し成長した点だが、勝ちきれないのはまだまだということ」(熊日朝刊)という試合後の南の談話。それが全てを言い表しているような気がします。

安間監督率いる富山、昨シーズンの対戦でその3―3―3―1の斬新なシステムに翻弄された印象が強く残っていました。ただ、一方で今回は密かな期待も。変則とも言えるこのシステムに対しては、うちの中盤ダイヤモンドが“はまる”のではないかと。前回の対戦時も、後半途中に藤田を投入し中盤をダイヤモンドにしてからは攻勢を得た。それを思い出したからです。そういう意味でもこの試合、今シーズン一貫してトップ下を勤めるファビオに対する期待が大きかったのは確かです。そして次々と飛び出してくる富山の2列目、3列目に対しての対処。中盤の底のエジミウソンの働きの重要性も。そのエジミウソンの腕に、この試合のキャプテンマークが巻かれていました。

富 山
10苔口
7朝日8大西
9黒部
15平出6西野
25森
24松原19池端
27吉川
1内藤


熊 本
9長沢14武富
 27ファビオ 
23根占22吉井
 5エジミウソン 
8原田15市村
16矢野4廣井
 18南 

開始早々、ロングフィードに長沢が飛び出す。うまく体を入れてDF3人を置き去りにしキーパーと1対1の決定的チャンス。しかしシュートは枠を外れます。この日、先発初出場の富山のDF松原は相当緊張していたらしい。「たら」「れば」は御法度ですが、ここを決めていたら、完全にこのルーキーを自滅させることができたのでしょう。しかし逆にこれで目が覚めた松原に、長沢が完全に密着される。まるでオーロイに熊本がしたことのように、長沢から制空権を奪ってしまいました。

それにしても安間監督によく研究されていましたね。それは現地のゴール裏からも感じられたらしい。富山のキープレーヤーの大西が、その攻撃性を封印して、左SBの原田を密着マーク。上がらせないだけでなく、ここが熊本のボールの出所とまで見切って自由にさせませんでした。当然、市村への大きなサイドチェンジのパスも通らない。サイドが隙の3バックの背後をなかなか突けずに、逆に密集する中へ中へと絞り込まれていくようでした。

立ち上がりのバタバタ感から次第に富山も落ち着いてきました。セットプレーからのロングボール。ポストで落として右に流れたところに俊足の苔口が走り込みクロスを入れるとファーにも何人も飛び込んでいる。富山らしい攻撃、熊本の危ない場面。失点は続くCKの流れからでした。クリアボールをボランチの森が詰めてきてミドルで打つ。DFに当たって角度を変えたシュートが、熊本のゴール左角に転がり込んでしまいます。

事故といえば事故だし、クリアが小さい、クリアのセカンドに詰めていない、と言えば言えるし…といった失点でした。もちろん、先制されて慌てるほど、今の熊本は”若く”はないという落ち着きは確かにありました。しかし、それにしても同点に追いつくまでに時間がかかりすぎました。前線でボールが収まらない熊本。縦のボールが通らない。後半すぐに指揮官はファビオを諦め、片山を投入。吉井に代えて大迫。突っかけていく選手が前線で増えることによって、徐々に熊本がポゼッションを獲得する。市村が対峙する朝日を押し込み始めます。

ようやくの77分、根占からのパスに後方から走り込む市村。猛スピードのまま右サイドを突くと相手DFは付ききれない。速いクロスはファーサイドにこぼれて、フリーの片山のシュートが突き刺さる。完全に崩しきった一連の攻撃。やはり今日も市村のオーバーラップからでした。

ここからゲームはオープンな展開に。富山も勝ちたい。YKKのDNAを感じさせる鋭いカウンター攻撃。たぶんあの時代の選手はもはや朝日しか残っていないはずなのですが…。残り時間10分。ここで熊本はエジミウソンを下げて宇留野を投入。われわれは高木監督の強いメッセージを込めた交代と感じました。「点を取りに行く」という意志を、チームにだけでなく、彼のこと、彼の怖さをよく知っているはずの敵将・安間監督にも示す。

主導権の奪い合いはしかし、互いのゴールを揺らすことはできず、終了間際には前節・北九州に押し込まれた経験を逆に活かすように、富山が熊本のゴールを脅かし、それでも守りきった熊本が勝ち点1をもぎ取ったという終わり方になりました。

アウェイで勝ち点1。先制されたが、点を取りに行って追いついた。これで6試合負けなし…。これまでなら「悪くない結果だ」。そう言ってしまいそうです。しかし、今募るこのモヤモヤ感は何なのでしょう。評価の難しいゲーム。われわれが感じるこの難しさは何なのでしょうか。「昇格争いをしている熊本から勝ち点1を取れたのはとても大きい(熊日朝刊)」という安間監督のコメントはいかにも謙虚すぎるし、鵜呑みにはできません。が、あの戦略家に単なるスカウティングということだけでなく“研究”されていたということ。研究される対象になってしまったということは確かなようです。

この試合、前半だけならよく言う“何も得るもののない試合”だったし、全く安間監督にしてやられた試合ということだったでしょう。しかし、追いついた熊本。その修正力、復元力には確かなものが感じられました。ハーフタイムで監督が指示するだけでなく、選手一人一人にもそういったゲーム観が感じられる。ベンチには局面を打開できそうな選手がいる。選手の疲労度ではなく、戦術的な交代が目に付く。そういうチーム全体の成長も実感できていると思うのです。

前々節・千葉戦のエントリーで“試合後の高木監督のコメントを読んで、この戦術家がその試合に臨んだスカウティングやゲームプランを、素人分析ながらもあれこれと推測することが、われわれの楽しみのひとつになってきています”と書きました。この試合でも高木監督は気になるコメントを残しています。「自分の中でもまだ考えの整理がついていないが」と前置きし、主に前半の問題点を分析した後、「ここでは具体的には言えないが、自分に大きなミスがあって本来なら追加点が取れたかもしれないのに奪うことができなかった」(J'sGOAL)と。喰い付かずにはおれません。

思うに、大迫、その次の宇留野を入れたあたりの、選手起用なのか順番なのか。あるいは指示した”役割”について戦術的な反省があったのか。素人目にはそれ以上のことは読み取れませんが、ただ、それが追加点を奪いに行って、奪えなかったことと直結した反省であり、勝ち点1という結果に全然満足していないということだけは確かなようです。

冒頭の南の言葉が、このモヤモヤ感を言い表しているのでしょう。後半同点に追いつくことができるようになった”強さ”はしかし、昇格を目指すチームが持つべき逆転する”強さ”にまでは至っていないということ。それはわれわれファンにとっても言えることで、なんだかんだ言ってもまだ一喜一憂の根性が抜けていないような。強者の、上位の、昇格する者のメンタリティーが、まだ身についていないのかなと。

次節、いよいよ強敵、難敵・FC東京をホームに迎えます。これまた「相手のいいところを消すようなスカウティング」を得意とする高木監督にとっては、腕の見せ所のようなカード。監督の戦術、選手たちの闘志、そしてわれわれファンの総力。FC東京をねじ伏せて昇格ラインをはっきりと見据えたい。さあ、負けられない試合がずっと続きます。
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