6月12日(日) 2011 J2リーグ戦 第16節
熊本 0 - 1 F東京 (19:04/熊本/5,204人)
得点者:20' ロベルトセザー(F東京)


大雨警報発令中の熊本。試合は中止ではなかろうか思っていました。まさかあれだけの長時間、降り続いた大雨、さすがのKKのピッチも冠水状態では?とも想像していましたが…。しかし何のことはない。前半こそ、激しい雨の時間帯に、一瞬ボールが水しぶきをたてていたぐらい。芝が剥げるどころか、逆に鏡のようなピッチコンディション。これはもう、すごいとしか言いようがありませんでした。このKKウィングというスタジアムの基本設計の確かさと、日頃の整備に脱帽、感謝ですね。しかも、避難勧告も出る豪雨の中、スタンドも閑散かと思われましたが、駐車場は満杯。5000人を超えるファンが詰めかけ、これにも正直驚かされた。(われわれと同じような)サッカー馬鹿の多さに呆れてしまいそうです。

そして、こんな大雨とは予想しなかっただろう東京サポ。楽しんでいましたね、サッカーを。ゴール裏ゲートからの登場には、昔、東京キッドブラザースがやっていた「ハーメルンの笛吹き男」の場面が思わず浮かび(古い!)、懐のあるユーモアやウィットを感じさせました。思えば、07年の天皇杯準々決勝「広島・FC東京戦」がここKKウィングで行われたときも、東京サポは同じように登場してきた。時節柄、みんながサンタクロースの格好でした。あのときは、Jリーグチームのサポーターってただただすごいなと素直に感動していた。しかし今、ホームに迎える公式戦の対戦相手なのです。

熊 本
9長沢30仲間
 27ファビオ 
7片山23根占
 5エジミウソン 
8原田15市村
6福王16矢野
 18南 

FC東京
 9ロベルトセザー 
 22羽生 
39谷澤27田邉
10梶山4高橋
14中村2徳永
6今野3森重
 20権田 

今や日本代表の不動のCBとも言える今野、そして各年代代表でもあった森重が守るFC東京の最終ラインはとても高い位置にある。自然、熊本は押し込まれます。20分、左サイドで与えたFKからの流れ。ゴール前に上げられたクロスに対してはヘッドで競り勝ったものの、こぼれたボールが詰めていたセザーの元へ。これをダイレクトに打たれて先制を許してしまいました。

しかし、その後は熊本も反転攻勢。徳永のクリアボールを拾った長沢がフリーで打つ。あるいは大きなサイドチェンジから市村がエリア内に持ち込む。原田のクロスから長沢が繋いで右から根占など、東京ゴールを襲います。先制されても千葉戦のときのように、追いつくのは時間の問題。そんな雰囲気さえ感じられたのですが…。激しく降り続く雨は、選手に“重く”のしかかっていたようです。この悪環境下では、やはり個の技術の差が浮き彫りにされたのではないでしょうか。まさしくスカパー!!解説者の池之上さんが言うように(パスを受ける側の)「右足なのか左足なのか。どのタイミングなのか、そこのところ」といった紙一重の差が。

後半に関していえば、熊本得意のプレスがうまく“はまらない”。組織的な守備がかみ合わない。と言った印象。そこをうまく剥がして攻撃を組み立てるFC東京のうまさ。あるいは熊本の最終ラインにボールを回させて、奪いどころを狙っているような。目指しているサッカーのお手本を見せられているような気もしました。それでも熊本は、よく我慢してチャンスをうかがったと思うし、決定機も作っていた。しかし、その絶対数が少なかった。こちらがミスをしてチャンスを潰していた場面も多かったし、アイデアが足りない部分も見えました。この後半には反省材料がてんこ盛りでしょう。

それにしてもまたセットプレーからの失点だということが残念です。今季の6失点のうち、草津戦の1点以外はすべてセットプレーから(その草津戦もスローインのリスタートからだったんですが…)。何かが緩んでしまうのか? あるいは数的優位を作って守り、シュートを打たせない確率論のサッカーで、セットプレーではそうはいかないからなのか? きっちり守っているのでセットプレーを与える機会が増えるからなのか? 逆に、今シーズン、セットプレーからの得点が、未だに無い。これも何なのか? 課題は尽きません。

U-22代表の正GK権田の力量にも感心させられました。最後アディッショナルタイムの好機も潰され。その反応と安定感。権田と南。Jリーグ全体を通しても屈指のGK同士の“締まった”ゲームだったと言えるのかも知れません。

「今日のゲームの攻撃に関しては、とにかく自分たちのサッカーをやってみろと、そういう意味でのトライをして、よくやってくれたと思います。」敗れはしたものの、高木監督の言葉には一定の評価とどこかしら満足感も感じられました。

「特別なことは僕自身もやってないですし、選手も決定力を高めるとか、百発百中のストライカーになれというのは難しいことなので、今やっていることを継続してやっていくことが重要なことだと思います。このチームはそうやって少しずつ良くなっていくとか、悪い部分は修正していくことが必要なので、それで安定性が出るようにやっていきたいなと思います」とも。

先制した試合はいい結果に繋がっている。先制されても2点目は取られていない。2点目をとられなければ、サッカーはどう転ぶか最後までわからない。それは今日の試合もできているわけで。「切れて」「混乱して」大敗を喫してしまう、そんな試合になるどころか、最後まで自分たちのサッカーで互角に戦った。同じJ1級のスター軍団だった柏と昨年対戦したときと比べ、内容が全く違っているのは確かです。

長いシーズン、どんなチームにも好不調の波が訪れる。この指揮官は、むしろ好不調に左右されない安定性から土台を作っているのかもしれません。それはいわばシーズンを通して“積み上げ”、“成長”していくということなのでしょう。その成長を測るうえで、今のFC東京は格好の判断材料だったと思います。もちろん勝ちたかった。たった1点差を覆せなかった。ではその1点の差以上に力の差があったのか、なかったのか。それは観る人によってもまた違ってくるでしょう。ついつい“決定力不足”などという言葉を使って総括したり、比べたりしがちですが…。

「ひとつの場所へたどりつく道はひとつではない」(ドラマ「クリミナル・マインド」シーズン1#16)―などどいう格言を無理やりですが引っ張り出してみました。熊本は熊本なりの道をたどって行けばいい。このチームの成長のあり様をシーズンを通してしっかりと見届けたい。そう思います。
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