6月25日(土) 2011 J2リーグ戦 第18節
熊本 2 - 1 愛媛 (19:03/熊本/3,877人)
得点者:13' 長沢駿(熊本)、32' 長沢駿(熊本)、65' 齋藤学(愛媛)


前節大分戦の後、選手たちはエジミウソンの提案で選手たちだけで意見を出し合う時間を持ったといいます。相当なショックを受けた大分戦。この経験をどう活かし、どう修正してくるのか。われわれは前回のエントリーで、この愛媛戦を、シーズンの分岐点に差し掛かったと書きましたが…。

愛媛は、FC東京との引き分けを含めここ5試合負け無し。確かに登り調子な印象を受けます。戦前、高木監督も「愛媛は洗練された、穴のないチーム」、「3位にいるのは実力があるから。今、うちよりも強い」、「先制されたら勝てる可能性は低くなるだろう」(スカパー)と述べていたそうです。しかし相手に対するレスペクトは必要だけれども、ここまでのコメントはどうなんだろうという怪訝な気持ちもありました。熊本と愛媛。JFL昇格の経緯から、過去の対戦成績から。微妙な位置関係にあるチーム。思い至ったのは、恐らく高木監督は、この試合にあたって、愛媛をはっきり「格上」と位置づけて入ろうとしたのではないか。自分も、選手も迷うことのないように。そして絶対に先制されないような入り方をしようと。そんな戦略的な意図のこもったコメントではなかったかと想像してみました。

さて、愛媛の試合をあまり観ていないわれわれでも、とにかく斉藤学という選手がいいらしい、自由を与えられてどんどん飛び出してくる。そんな噂は聞いていました。開始5分、ダイヤゴナルに右に流れた斉藤がパスを受けると左に走ったジョジマールにすばやく送る。二人の絶妙のコンビネーションを目の当たりにして、すぐに納得がいきました。

熊 本
9長沢14武富
 27ファビオ 
7片山23根占
 5エジミウソン 
8原田15市村
6福王16矢野
 18南 

愛 媛
 9ジョジマール 
27斎藤11石井
10杉浦17大山
 4渡邊 
7前野13関根
28高杉18池田
 1川北 

序盤、熊本は意図的にロングボールを蹴っていきます。「雨は想定していなかった」(スカパー)という高木監督の、絶対に先制されたくないという意識、リスク回避のための臨機応変な戦術だったともとれます。そんな熊本の攻勢。前からのプレッシャーとその“高さ”に、明らかに愛媛DFは押されているようでした。

先制のシーンは武富が「(シュートの)ミスキック、良いアシストになった」(熊日)と苦笑いしたそうですが、そもそもこの武富のシュートは、その前に武富が左サイドを“意を決し”たようなドリブルで突破し、狙ってとって、自らが蹴ったコーナーキックからのもの。さらにそれを3度跳ね返されて拾いに拾ったセカンドボールをキープしての4次攻撃から生まれたものでした。波状攻撃を受けると、ディフェンダーはリスク回避に傾く。下がり気味になり、ラインコントロールも余裕がなくなる。スタンドから見ていたわれわれには、低くて速いクロスに見えたんですが、これに長沢が飛び込んで角度を変えた。長身FWが見せた今季初のヘッドでのゴールでした。

先制点を得たい。そんなチーム全員のゴールを狙う意識が表れていましたね。特に武富は、柏の元同僚・酒井のU―22代表での活躍が大いに刺激になっているに違いありません。

2点目もラッキー(アンラッキー)とも見えるでしょうが、バルバリッチ監督はきっぱりと「前半の2失点はミスで自ら与えたゴール」と表している点はさすがだと思いました。これも武富が入れたスローインをファビオに当てて、それを自らダイレクトでシンプルに長沢を狙って(今度こそ)クロスを入れたもの。多分、クロスとしてはミスキックでしょう。しかし、非常に速いタイミングから(相手DFの準備が遅れる)、濡れたピッチで、エリア内に、胸トラップを強いるような、速いボールが入ったから起きたこと。胸トラップはハンドボールのリスクがある。あの状況、ディフェンダーも余裕があれば、両手をもっと背中側に組んで対応したところでしょう。これをアンラッキーだ、あるいは審判のせいだ、などとしてしまえば成長はない。ミスを認めるバルバリッチの愛媛。これからも手強いぞ。と感じさせます。

そのPK。誰が蹴るのか皆が躊躇しているように見えました。そしてエジミウソンが置こうとしたボールを長沢が貰いにいきました。「何試合も点が取れていなかったし、チームも勝ちきれていなかったので、勝つことだけを考えて、常にゴールを狙っていた。点が取れない間は苦しい時間だったが、このプレッシャーを楽しみながらやっていければと思っていた」と。

これまで清水の4年間ではわずか7試合の出場にとどまっており、エースフォワードとして、チームの“結果”を“背負う”責任とその重圧は初めてのものでしょう。チームの苦戦状況の理由を一身に背負い、しかもPKは苦手だとコメントしたこの若きエースは、しかしこの大事な得点機に自ら志願することで、全てのプレッシャーを振り払おうとしていたのかも知れません。GKの頭上に豪快に蹴りこむと、「どうだ」とばかりのガッツポーズ。駆け寄るチームメイト。またひとつの成長を見た。そんな気がしました。

熊本としては、言うまでもなく後半の入り方が課題でしたが、原田が蹴ると見せかけて片山がゴールを狙ったFKのサインプレーや、長沢が右サイドから一騎で持ち込んでDFを交わしシュートを放つなど、愛媛ゴールを脅かします。まずまず。

愛媛は石井、大山を内田、越智に二枚替え。これはシステム的な変更ではなく、単にフレッシュな選手を入れただけでしたが、さすがに頃合いを見た采配でした。熊本のボールへの出だしが遅れてきた時間帯。陣形が間延びし、セカンドが拾えなくなってくる。65分、一瞬気の抜けた感じ。後方からの縦パスを斉藤がダイレクトで前線のジョジマールに送る。左に流れたジョジマールが福王を交わすと、走り込んできた斉藤に再び戻す。斉藤はマークしていた矢野からうまく逃げると難なくシュートを放ちました。呆気にとられたような、鮮やかなコンビプレー。斉藤。やはりただ者ではありませんでした。

熊本はファビオに代えて大迫を入れる。スカパー解説の池之上さんの評価は辛口でしたが、今日のファビオは悪くはなかったと思います。どちらかというとワントップ気味の長沢の下に、ファビオと武富がいて、長沢と出入りを繰り返したファビオは、序盤で長沢が競ったボールをDFの裏でトラップしてエリア内で打ったり、クロスボールを中央の長沢がつぶれてファーに待ちかまえていたり。われわれが思う“高さのシャドー”といったプレーが随所に見られました。フィットしてきている、あと少し。もう少し。ゴールこそ決まればという感じです。

熊本は疲れのみえる武富に代えて西森が今季初登場。最初、4-1-4-1にして相手とがっぷり四つのシステムかと思われたのですが、すぐに左SBに入って原田とエジミウソンのダブルボランチに。愛媛が縦に入れてくるパスを中盤の底で封じる戦略に出ました。

しかしこの時間帯は完全に愛媛のものでした。後半に強いという愛媛の評判が頭をよぎる。雨の影響からかこの日はなかなかボールが手につかない感じの南でしたが、愛媛の意外性のあるミドルを素晴らしい反応で防ぐ。ゴール前の混戦もエジミウソンを始めフィールドプレーヤーが最後に掻き出す場面が幾度あったでしょうか。

ラスト5分。自陣でボールを回す熊本。なんだか攻めるのか守り切るのか意思統一ができていない感じ。ベンチは最後のカードに筑城を選択して、ハッキリと意思表示。攻めてもシンプルなプレーに終始して時間を使い切りました。待ち望んだ勝ち点3を手にした瞬間、殊勲の長沢は両手でガッツポーズを取ったあと膝を抱えるように座り込んだ。その代わりスタンドのファンは皆立ち上がり、ゴール裏のチャントと共にタオルをぐるぐると振り回し続けました。

白熱した好ゲームだったと思います。池之上さんは、“ちょっとの運”が熊本に軍配を上げたように表現していましたが、前述したPKの場面といい、われわれは互角の相手に対して熊本が周到な準備を行い、意図的なワンプレーを積み重ね、ほんの“ちょっとの差”をつけてねじ伏せたのだと感じました。

愛媛はシーズン前の練習試合を見たときも、すでに出来上がっている印象でしたが、さらに成長が感じられ今後も侮れない相手に違いないでしょう。そして、その愛媛を退けた熊本もこの試合で勝ち得たものは大きい。若きエースだけでなく、チーム全体が一皮剥けたと言ったら喜びすぎでしょうか。しかし、今週はそんな勝利の余韻に浸っている暇もなく、水曜日はアウェー京都戦。3勝3分6敗の勝ち点12で16位に“低迷”している京都ですが、ここ3試合は2勝1分と徐々に本来の力を発揮し始めているようです。大分戦の教訓を愛媛戦に生かした熊本。さて初顔合わせの京都に対してはどんなモチベーションで臨むのか。分岐点に差し掛かっての連戦。次の戦いはすでに始まっていますね。

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