7月2日(土) 2011 J2リーグ戦 第19節
熊本 0 - 0 鳥栖 (19:04/熊本/6,795人)

同じ引き分けと言っても、痛恨の引き分けと、いい内容のドローとふたつあると思うのですが、今日の試合は大いに拍手を送っていいものだったと思いました。確かに90分間ゴールレスのゲームに、ストレスを感じたファンも多かったかも知れません。しかし、高木監督が試合後、「本来のサッカーの面白い部分というのが見えたんじゃないか」と言う意味も伝わったし、敵将・尹晶煥監督が「どちらもディフェンシブに戦っていた」と言うのも、けして消極的な戦い方をしたという意味ではなく、リーグ1位、2位という被シュート数の少なさを争うチーム同士が、互いの攻撃の芽を潰すことに全力を注入した結果だったと思います。

「3連戦をチーム全体の総力で戦いたい」(スカパー)と述べていた高木監督は、エジミウソンの疲労を考慮してか、その位置に原田、左SBには筑城を配してきました。そして出場停止で長沢を欠く試合であること。これがこの試合のひとつのポイントでもありましたが、その代わりとしてトップの位置に、前節初ゴールを決めたことで気をよくしているだろうファビオ。その相方にはルーキーの斎藤を初先発させました。しかし、幾分の攻撃力の低下は否めなかったのではないか。いや、前線の守備力という意味でも大きな損失だったかも知れません。それだけ彼の存在が、今シーズン、層が厚くなってきた今の熊本の中でも、戦術的に替えのきかないプレーヤーのひとりになっているんだと感じました。

熊 本
27ファビオ17斎藤
 14武富 
7片山23根占
 8原田 
24筑城15市村
6福王16矢野
 18南 

鳥 栖
 9豊田 
 18野田 
10金民友25早坂
15丹羽8永田
3磯崎4田中
20呂2木谷
 21室 

前半20分過ぎまでは熊本の時間帯でした。右サイドの市村を使って起点を作れていたし、セカンドボールをよく拾って波状攻撃を仕掛けました。しかし「伝統的にハードワークができるチーム」(高木監督)と評されるとおり、鳥栖のアグレッシブな球際、攻撃への切り替えのスピードに、徐々に押され始めます。相手の両FWは動きにキレがありましたね。連戦のなかでもコンディションのいい二人をチョイスしたのかもしれない。岐阜に快勝した前節は野田、池田のコンビ、愛媛に敗れた前々節は豊田、池田のコンビでした。このあたりの柔軟な先発起用も見逃せない尹晶煥の戦略でした。

ポゼッションはあったが、しっかり守られていた。さらに後半は一方的だったと言えるかも知れません。熊本は1本のシュートも打たせてもらえませんでした。まとめてしまえば、前半は野田に、後半は豊田に、見事に攻略されていた。相手が10人になるまでは、やられている試合でしたが、「我々は救われた部分もありました」(高木監督)ということも含めて負けなかった。

後半34分、鳥栖・磯崎が2枚目のイエローで退場。この退場劇からの試合の流れ、勝ちにいくのか守るのか。あと1枚の残っていた交代カードの切り方。このあたりが試合の一番の見所ではなかったでしょうか。後半40分。鳥栖の攻勢にさらされ続け、このまま守りきっての引き分けも御の字かと思われた時間帯でした。ここで熊本は温存していたエジミウソンを入れる。これにスカパー解説の池ノ上さんは「しぶい!」とひと言唸りました。人数の少ない相手に対して前掛かりになりそうなチームを締める役割なのだと。もちろんチャンスがあれば行く、という余地は残しながら…。

まったくの想像だろうし、事実その後、そんな展開で終わりましたが、われわれの眼にはそのときのエジミウソンというカードは攻撃の狼煙(のろし)に見えてしまいました。鳥栖とは中断期間中の練習試合で数度対戦して、いいところなくやられている。しかし確かその頃の試合にエジミウソンはまだ間に合っていなかったのではなかったでしょうか…。今や熊本の軸として君臨するエジミウソン。本来この試合、鳥栖を破るためにはエジミウソンを当然使いたかったはず。エジミウソンの熊本で勝負したかったはずだと。

しかしこの連戦で疲労による“もしも”の故障があることも怖い。それはシーズンを通してのリスク管理だったのでしょう。エジミウソンの温存は、そんな苦渋の選択だったのではと。そして、ここでエジミウソンを敢えて入れるということ。そのタイミングがきたということ。それは高木監督の実は深い判断だったろうと…。

われわれシロウトもこの時点で、スコアレスで相手は引いてくるということで、松橋よりも大迫。あとDFを1枚、攻撃的なカードに変えたい。という感じでシミュレーションしていたのですが。更にここ数試合をみると、熊本の場合、そこにボランチの枚数、最終ラインの枚数まで「変数」として絡んでくるので、筑城→エジミウソンというのはなかなか面白い判断だなと。全くもって推測の域を出ませんが、ここはとてもサッカーらしい(サッカー観戦の醍醐味ともいえる)楽しみ方をさせてもらいました。

連戦下のコンディションが選手起用や戦術面にもはっきりと影響しているのがわかったこの試合。もちろん相手もおなじ条件、しかも“ハードワーク”を根幹に据える者同士の戦い。こんな連戦の最後に当たるのは、お互いに嫌な相手だったのではないかと思うし、ある意味“もったいない”感じもするバトル・オブ・九州のタイミングでした。しかも体力の消耗戦のようで、実は神経戦とも言えたこの日のゲーム。まるで睨み合い、鍔競り合いのような。“気”を抜いた瞬間にやられる、集中力の持続が問われる。われわれはここに冒頭の「本来のサッカーの面白い部分というのが見えたんじゃないか」という監督の言葉の意味を感じとった次第です。

試合後の様子は、鳥栖の肩の落とし方のほうが大きかったように見えました。“流れ”からしたら、そう思えたのも当然かも知れない。後半多くの決定機を得たにも関わらず、枠を外し続けた鳥栖のエース豊田に対して、ゴール裏からは「ここで気落ちするな」「やれる。やれる」と鼓舞する声がした。そこには「勝てた試合を落とした」という空気が前提としてありました。しかし、鳥栖のGK室は「勝つこともできたかもしれないし、負けていたかもしれない」とコメントした。後ろで守っていた選手には、また違った認識があった。そこがまたサッカーの(サッカーらしい)面白いところでもあります。

南、原田ほか、選手コメントはすでに次の試合に向いている。そして指揮官においては、「現状の中で選手たちをレベルアップさせていくための要因には、この3連戦はなったかもしれないと思います」と言っている。多くのことを得た3連戦。その結果が2勝1分というのは、願ってもないほどほどの成果なのかも知れない。しかし、上をみればやはりなかなか負けなくなった上位陣。昇格ラインの3位東京との勝ち点差が(1ゲーム以上の)4に開きました。これからどれだけ食いついていけるか、離れても諦めない戦いができるか。次節はアウェイでの首位・千葉戦。昇格への本当の厳しい戦いがいよいよ始まります。

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