7月17日(日) 2011 J2リーグ戦 第21節
熊本 1 - 1 富山 (19:05/熊本/25,005人)
得点者:22' 苔口卓也(富山)、74' 根占真伍(熊本)

試合前日の土曜日、夕方に床屋のイサムちゃんの店へ。椅子に腰掛けると、テレビにはスカパーの栃木・鳥栖戦のライブ映像が(スカパーのJ2を放送しているっていう床屋も珍しいですが…)。「堤が栃木に期限付きで移籍だそうですね。オレ割と好きな選手だったんですよ」などと旬な話題を振ってくる。「明日は動員かかってますよね」とも。でも最後はいつものように「今、誰が一番年俸が高いッスかね?」などという“興味”に行ってしまうところは、まるで「浮世床」です。そしてその動員の結果が2万5千人ということに。本当に隔世の感があります。

試合開始1時間半ほど前に、第二空港線側から休み休み自転車で向かいましたが、今まで目撃したことがない車の列、列。大渋滞。いくら動員試合とは言え、ここまでのものは経験したことがなかった。スタジアム・グルメの屋台はどこも長い行列で。強い西日の差しこむバックスタンドはあふれんばかりの人でごった返して。そして丁度、まるで約束したかのようなタイミングで、キックオフと同時に太陽は山影に隠れていきました。

しかしどうなんでしょうか。この大動員は果たしてチームの戦いに奏功したのか否かという意味では、ちょっと複雑な感じです。キックオフの笛が鳴っても、そこかしこで席を探して動いているスタンド。“買い物”に席を立ったままの人々。選手入場にマフラーを掲げても、どこかしらざわついたままのスタンドに、観ているこちらも集中力をそがれてしまいます。

熊 本
9長沢 27ファビオ
13大迫14武富
5エジミウソン23根占
8原田15市村
6福王18矢野
 18南 

富 山
10苔口
17木本8大西
7朝日
16谷田6西野
15平出
28福田2足助
4江添
21飯田

今日の試合は、前半の失点が全てと言ってもいいかも知れません。12分には市村からのクロスに長沢があと一歩早ければ。17分にも長沢のトラップから振り向きざまのシュートなど、熊本の攻勢が強かったのですが。22分、熊本が原田も上がっての攻撃のあと。富山はGKからすばやくそのサイドの大西に。そしてハーフウェイラインほどの大西は前線の苔口に。苔口は、福王の視界の外から鋭いスピードで裏を取ってきた。苔口の足元に収まったときは、時すでに遅しでした。“あっさり”“シンプル”という感じて、富山の先制弾が突き刺さります。まさしくワンチャンス。富山は最初のシュートを得点に結び付けました。

高木監督は「相手も押し込まれる時間があれば、カウンターというのは1つの狙いとしてある。それをスカウティングでも映像でも、言葉でも伝えた中で、ああいうシーンを作られてしまうのは、僕の力不足なのか…」と嘆きました。

大西と苔口のコンビネーションから奪われた先制ゴール。よくよく見ると、カウンターの切れ味というよりも、いったんタメてスローダウンして、熊本ディフェンスのタイミングをひとつ外して、フッと油断させてのラストパス。福王からすれば追いつけると思ったパスだった。しかし苔口の入り方がうまかった。戦前「知っているからこそ怖さが分かる」(J‘sゴール)と元同僚(セレッソ)の苔口のことを評していた福王でしたが、完全にしてやられた。高木監督が警戒に警戒していたものとはちょっと違うような。「その前の苔口選手がオフの時のポジショニングが良かったのかということを考えれば、非常に回答しづらいシーン」とまわりくどく言っているように、ちょっと残念な失点シーンでした。

富山に先制点を与えたことで、ゲームのコントロールを完全に相手側に奪われてしまったことがこの試合をさらに難しくしてしまいました。熊本はその後も波状攻撃。しかしゴールは割れない。狭いところ狭いところにボールを運んでしまう。ロングボールを多用して縦には揺さぶれるのですが、3-3-3-1の弱点たる横方向をワイドに揺さぶることはできない。

それでも35分には原田の鋭いFKにGKが弾いたところをエジミウソンとファビオが詰めますが富山がクリア。スローインから長沢が落としてエジミウソンのシュートはバーの上。惜しい場面は続きます。しかし、前半のうちに追いついておきたい熊本でしたが、富山の組織的な守りに対して、どことなく手詰まり感があったのも確かです。

「まず0-0の時間を長くしようということで入っています。J1を狙うチームにとっては、僕達みたいなチームとの引き分けは痛いと思います。いろいろなものを利用していかないと、僕たちは勝点を取れない状況です」と安間貴義監督。

苦手意識とまではいかないまでも、何とも言えない戦いにくさを感じる富山。現状での戦力面のウィークポイントなど、自らのポジションを正確に受け止めたうえでの知将・安間監督の知恵。熊本との心理面のやり取りも含めて「いろいろなものを利用する」戦い。前節・鳥栖に勝ち、そして熊本に引き分けたこの流れは、最高の結果なのでしょう。彼我の戦力差を冷徹なまでに見切ったうえで仕掛けてくる安間の“弱者の戦略”。恐るべしと言わざるを得ません。

そして2万5千人の大観衆。初めての経験。応援はパワーにもなるけれど、プレッシャーにもなりかねない。もともとリスクマネジメントが徹底している熊本。大観衆の存在が試合運びをより保守的にしたかもしれない。それは逆に言えば、この相手の大観衆をも敵将は巧妙に利用したのかもしれません。

大迫に代えて仲間。武富に代えて西森。熊本が同点に追いついたのは、ようやく後半も30分近くになってからでした。市村からのクロスに長沢のヘッドはどんぴしゃでしたがGKがクリア。拾って再び市村が入れる。中の仲間に当たってこぼれたところを根占が一閃。隙間のないエリア内でボールはゴールに突き刺さる。同点弾。吠えるスタジアム。そのとき2万5千人のスタンドが、ようやく一体になった感じがしました。

すぐさま熊本は福王を下げてソンジンを入れる。それも前線に入れて3タワーのパワープレーに。正直、あまりわれわれの好みの戦術ではありませんでしたが、エリア内に林立する富山の人数に対しては“高さ”で勝負するという選択だったのかも知れません。そしてこの素早い決断は、高木監督の何が何でも勝つという強い意思を感じるには十分でした。

終わってみれば両者のシュート数は熊本の13に対して富山の3。7回あったCKも、同じくFKも、熊本は十分には活かすことができませんでした。“あっさり”と奪った先制点のあと、しっかり富山に守られて焦らされた熊本。なんとか同点弾を沈めてドローに追いつくことが、今の精一杯の実力だったのかも知れません。

6勝2敗8分。3試合連続引き分けという結果。引き分け数は実にリーグトップ。こうなってくると引き分けの受け入れ方も微妙になってきます。メンタル的には“負けない熊本”であり“切れない熊本”。そして“波の少ない熊本”ということなんですが…。同じく上位陣がうまいぐあいに引き分けなどで足踏みしたこの節。浮上のチャンスを棒に振ったのかも知れないが、結果幸いだったかも知れない。いやいや、ここで迷ってどうする。熊本はまだまだ全くの発展途上。今シーズン、まだ一度も好調の波に乗ったことがない。我慢、我慢。時は必ずやってくるのだと。

さて、そんな複雑な気分の深夜未明。わがなでしこジャパンのワールドカップ初優勝という歴史に残る感動のシーンも、眠い目をこすりながら“目撃”しましたが、われわれの世代としては、サッカーの元日本代表にして日本代表監督も務めたあの森孝慈氏の突然の訃報に触れないわけにはいかないでしょう。選手として68年のメキシコ五輪で銅メダルを獲得するなど、日本サッカー界のために力を尽くされた森氏。そのご冥福を心よりお祈りします。


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