8月13日(土) 2011 J2リーグ戦 第24節
熊本 2 - 1 大分 (19:05/熊本/8,935人)
得点者:52' 三平和司(大分)、79' 長沢駿(熊本)、90'+3 市村篤司(熊本)

ここまでの興奮は、昨年の開幕・千葉戦以来ではないでしょうか。そう言えばあのときも最後に決めたのは市村でした。

3引き分けからアウェー3連敗。その中身は3試合無得点、そして10失点という、ファンであるわれわれでさえ気持ちが折れそうになるような厳しい状況。久々のホームで迎える相手は大分。前回対戦以来3バックに変更し、このところ好調を維持する難敵でした。

熊 本
9長沢13大迫
 27ファビオ 
25西森22吉井
 5エジミウソン 
8原田15市村
2チョ ソンジン28菅沼
 18南 

大 分
 11チェ ジョンハン 
8西19前田
14イ ドンミョン9三平
32宮沢14井上
24姜 成浩6土岐田
 4作田 
 1清水 

熊本は長沢の相方に大迫を起用。その大迫が開始から飛ばします。前線で受けてサイドの市村から吉井。深いところからクロスを上げる。こぼれ球をまた大迫が拾って市村のシュート。対する大分は、西が持つと長い距離をドリブルでカウンター。相変わらずこの男の変則的なドリブルは捕まえづらい。

長いボールを多用しながら相手を押し込み、サイドでは西森、吉井が厳しくプレスを掛ける。アタッキングサードでも縦に行こうとする姿勢が見える熊本。しかしフィニッシュまでにはなかなか結びつかない。ジリジリするような前半の展開でした。

後半開始早々、先制は大分。前線に高く上がったイージーなボール。エリア内で三平が受けると鋭く反転してシュート。これは南が好反応で防いだものの。3度続いたCK、低く速いそのボールに、中央から三平が頭で合わせてゴールネットを揺らしました。

今季、先制されて勝利したことはない。そんな不安なデータが嫌でもスタジアムを覆ってきます。それにしてもCKを与える数が多い。自陣のゴール近くに押し込まれ、サイドで突っかけられている結果でした。しかし、それは先制したものの、大分がさらに追加点を奪いにきているからでもありました。もし、あの時間帯から守りに入られたら、もっと難しいことになっていた。そう思います。

同点弾は、大分の一瞬の気の緩みを突いた、ゲームがエアポケットに入ったような瞬間でした。右から運んだボール。市村からのパスをダイレクトで前へ送る大迫。後半途中から入ったイニョンがスルー(あるいはワンタッチか)する格好になって、裏を狙う長沢の足元に。「ゴールは見ていなかった。多分このくらいだろうという感覚で打った」という長沢。打つしかない。迷うことなく、この角度しかないというところに流し込みました。

俄然、スタジアムがうねり、沸き立つ。マフラーが振り回される。このときスカパーの実況では、山崎アナが「喜んでいる時間はありません」「同点ではいけません」と叫んでいる。勝ち越し点を狙うべく早く切り替えろということでしょう。しかし、4試合ぶりの得点。もっともっと喜びを爆発させて、エネルギーを開放していい。駆け寄る菅沼は大きく両手でスタンドを煽って、“さあ、もっと行くぞ、後押ししてくれ”と言わんばかり。そのホームの盛り上げで、一気に流れを引き寄せようと。選手たちこそ必死でした。

これまでの展開だと、追いかけながらも、逆に自分たちが疲れ、集中力を削がれていく、そんな時間帯でした。しかし、今日はなんとしても勝ちたいという気持ちがそうはさせなかった。加えて、これまでは途中交代のコマが、うまくはまらず、全体を動かしなおすことができなかった。しかし今日のイニョン、片山、そして最後に武富というコマは、ぴったりと歯車を噛み合わせ、力強い動力でチームを“縦”に推進しました。

終盤まで続く激しい攻防。大分サポーターが掲示した「白黒はっきりつけようぜ」という横断幕どおり、互いにそう思っているから懸命に声を出す。引き分けはない。いや、熊本はどんな相手であろうと、どんな格好であろうと、今日こそ勝ちたいんだと。

アディッショナルタイムが4分と告げられても両サポーターはヒートアップしている。1分、2分…大分の攻撃が続き、われわれも半ば諦めかけたそのとき、サイドバックに代わった西森のアーリークロスが中央の長沢を越えて、奥の武富の足元に。鋭いシュートはGKが弾く。天を仰ぐ武富。しかし、上がってきた市村がヘッドで入れなおす。ボールは長沢の足元にこぼれる。大分DFに何人も囲まれて突付きあい。その混戦に走り込んだ市村が詰めて足を伸ばした。ボールはゴールに転がり込む。逆転の瞬間でした。

熊本の勝利を告げる長いホイッスルが吹かれ、スタンドも選手たちも、誰もかれもが連敗の重苦しさから解き放たれた喜びを全身で表現するなか、エジミウソンは他の選手を手招きして、集まろうと呼びかけました。それは、勝利を一緒に喜び合うため、この勝利は全員のもの、一人ひとりが懸命にがんばったからこそのひとつの勝利。だからこそ皆でひとつになろうと…。それほどに大きな意味を持った一勝でした。

「長いトンネルをやっとくぐりきった」。試合後、指揮官はホッとした表情で、そう表現しました。「まず、勝利で終えることが我々のチームに本当に必要なことだったので、勝点3を取れたことがいちばんの収穫です」と。

もちろん試合の中身は、前節までとはだいぶ様相が異なってはいて、いい方向に向かいつつあるな、と思いながら見ていましたが、同時に、完全に抜け出すにはもう少し時間がかかるかなという印象もありました。先制されたときは正直4連敗も覚悟しました。

けれど、1点を取るからまた点がとれる。ひとつ勝つから次も勝てる。結果オーライということでもなく、いいイメージを忘れてしまうことで悪循環に陥っていたチーム。とにかく結果が欲しかった。追いついて、最後の最後に逆転できたことも、今日の大きな“精神的収穫”のひとつに違いありません。

菅沼の「この流れに乗って次も勝てば大きく前進できると思う。勝ち続けることが大事だと思います」というコメント。21歳のプレーヤーの言葉とは思えない。“勝ち続けることが大事”。このあたりは勝者のメンタリティーというべきものをすでに備えているような感じさえ受けます。

チーム内で意見しあって出た結論として市村は、「自分たちは球際に強く行き、気持ちで走って、初めて勝てるチーム」(熊日)と語っています。吉井は「戦う気持ちを見せるしかなかった」と。大迫も「僕達のサッカーは走ることがいちばんなので、それを意識して前からプレッシャーをかけた」と。

両サイドからの早めのボール投入も交えた攻撃が、前節までの手詰まり感を打開したと感じます。高さはある。跳ね返されれば、拾いに走る。エリア内で勝負するところに持ち込まないと何も起こらない。前線(バイタル)でのボール争奪に関して、大迫の起用とそのプレーは意図があったし、光っていたと思います。

「今日は大迫を最後まで使い切ろうと思っていた」という高木監督。試合後のゴール裏には長沢とともに、その大迫の姿が。マイクパフォーマンスに招かれ、サポーターのコールを受ける。初ゴールこそ“幻”に終わったものの、今日の頑張りは、賞賛を受けるに値するものでした。

大分の選手たちの試合後のコメントも、熊本の選手コメントと表裏で符号しており、とても興味深いものがありました。結局、ロングボールは完全に織り込んでいたこと、それでも玉際で負けたと。逆転され、ピッチを手で叩きつけ、天を仰ぎ、またガックリ首をうなだれ。これほど悔しがる姿は見ているものを清々しくさえさせてくれます。2000人の大サポーターを引き連れて乗り込んで来た大分。その背負った期待に応えることのできなかった無念さを選手たち皆がストレートに露わにして。選手とファンが同じ場所で戦っているんだなあと。われわれより長い歴史、多くの経験を積んできたクラブ。今また生まれ変わりを果たそうとしている過渡期なのでしょうか。このチームの好敵手となれたことをうれしく、そして刻んできた長い時間を少し羨ましくも思いました。

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