8月21日(日) 2011 J2リーグ戦 第25節
熊本 0 - 1 徳島 (19:04/熊本/5,345人)
得点者:53' 島村毅(徳島)


この試合の前に、高木監督は「大分戦の勝利で何かを達成したわけではない」(スカパー!)と言って、選手達を戒めたといいます。練習の際には、このところの熊本の天候のように、雷が落ちたとも伝えられる。それはDFの菅沼が言うように「『連勝しよう』という強い気持ちよりも『このまま行けば大丈夫』という甘い雰囲気」(熊日)が、結局試合の中身に反映した。そういうことなのでしょうか。

今季、安定して昇格圏内に留まり続けている徳島のことを「レギュラークラスが同じポジションに二人ずついるようなチーム」だと表現していた指揮官。確かに柿谷こそ故障で欠くものの、その穴には島田。トップにはドウグラスと津田。守りにはエリゼウという布陣は十分脅威でした。対する熊本は、エジミウソンと原田という“中心選手”を累積警告で欠くゲームだということ。まず、われわれの興味はそこがどうカバーできるのか。あるいは、これまでと違う選手起用が新たな可能性を示してくれるのか。ということでした。

熊 本
9長沢26田中俊一
 27ファビオ 
25西森22吉井
 23根占 
24筑城15市村
2チョ ソンジン28菅沼
 18南 
後半12分 西森→片山
後半18分 田中→武富
後半32分 根占→ソン イニョン


徳 島
9ドウグラス 11津田
17衛藤10島田
8倉貫16斉藤
6西嶋22島村
2三木4エリゼウ
 21オ スンフン 
後半19分 ドウグラス→佐藤
後半32分 衛藤→徳重
後半43分 島田→濱田


2トップの一画に入った田中俊一、開始早々から初先発の起用に応える“けれん味”のないプレーぶりを発揮してくれました。右サイドで貰って自らのスピードを活かして持ち上がりクロス。あるいはスローインから吉井が上げたクロスにニアに飛び込む。タイミングこそ合いませんでしたが、まるで吉井のクロスを引き出したかのような動きに、これまでの熊本にはないプレーを見たように感じました。

しかし、試合直前まで滝のように降り続いた雨によって、さすがのKKのピッチコンディションも“重馬場”。ガッチリと向き合う戦いになりましたが、その悪環境のなかで徐々に、技量の差、戦力の差が現れてきます。高木監督が敗因のひとつとして言及したのは「やっぱりボールを止めること…」。止める技術の差。われわれが見ていても、ルーズボールを単純にヘッドではね返さずに、ちょっと無理かなという体勢でも何とか胸トラップしてマイボールにしようとする徳島のプレーの質、その体幹の強さは目立つものがありました。

くさびのパスから一転、前を向いた島田が、ソンジンに付かれながらも強引にシュート。これは南が好セーブ。次第しだいに押し上げられてくる。一気呵成にという感じではなく、一枚二枚と徐々に後方から増えてくる感じ。少しの出足の遅れで後手に回る熊本。それが次々と悪循環になってプレスやパスにも“躊躇”が生まれている感じ。ジリジリと自陣から出られなくなってきます。

「プレッシャーをかけても、前節の大分戦のようにボールを取りきることができなくて、奪っても攻撃にしっかりとつなげられなかった」(J’s goal)。そういう吉井の感想からは、冒頭言われるような気の緩みなどと云うより、ただただ徳島の技術と、それを裏打ちする運動量に、たじろいだという印象を受けます。

そんな吉井も、やや中に絞り気味ではあったのですが、ワンボランチとしてエジミウソンの代役を務めたのは根占。遜色なく務めていましたが、攻撃に転じたときの展開力という意味では差を感じました。前半から妙に選手間の距離が遠い。前線とDFラインが間延びしてしまっていることも、この日の熊本の欠点でした。だからロングパス一辺倒に陥ったのか。あるいは前節の早いクロスからの展開の好イメージが残っていたからなのか。それにしても大きなサイドチェンジがない。

ただし、サッカーはわからないもの。このままの圧力を受け続ければ、いつかは徳島に点が入ってもおかしくないだろうとも見える一方、劣勢ながら前半を凌ぎきってしまうと、その圧力にも順応して、後半熊本にも勝機がある。そうも思えました。

しかし失点の場面は、熊日が「魔の時間帯」と書き、J’s goalの井芹記者も「悪癖」と表現した、まさに後半の立ち上がりでした。中央で与えたFK。島田が濡れたピッチを利用した速いグラウンダーのキックは壁をすり抜けゴールマウスに。南がキャッチしきれず弾く。詰めるドウグラス。南もボールを抑えに掛かりますが、奪ったドウグラスは素早く中に入れた。ボールは根占に当たって、ファーに構えていた島村の足元へ。落ち着いて流し込まれました。

今回は、南がこぼしたところに味方の詰めがなかったわけではない。ソンジンを含めて3人が走りこんでいます。しかしボールはドウグラス側にこぼれた。不運にも見えました。ただ、弾いたところに詰められての失点。がっちり守り切れないという意味では、何ら変わらないことなのかも知れない。さらにその前の局面で言えば、前半からキレキレのプレースキックを蹴っていた島田、そこに安易に自陣でFKを与えること自体が問われることなのかも知れません。南は自身のブログで「自分自身も反省しなければならない」と前置きしながらも、こぼれ球への意識の希薄さを嘆き、「それは逆に攻撃の部分でもそうで、キーパーが弾いたボールを貪欲につめてゴールするとかそういうゴールがほとんどない事もそこにつながる」と書きました。「要は『絶対にマイボールにする』という様な、ボールへの執着心みたいなものがチーム全体として足りない」と。

ここから、田中は残して西森に代えて片山を投入するあたりまでは、前節と似通った展開にも見えました。前への推進力を手に入れ、相手の疲れを待って、まずは同点。そして逆転へと…。しかし、大分戦と違っていたのは、徳島・美濃部監督が「先制点を取るのが鍵だった。自分たちのペースに持っていけた」と言うように、一転守りに軸足を移してきた。それもしっかりブロックを作りながら、高い位置で奪うことを心がけて、追加点は狙う。

単調な攻撃に終始する熊本は、変わって入った片山どころか、今日は市村さえもうまく使うことができませんでした。というよりも、熊本の攻撃の要は市村だということは周知の事実で、そこを使わせないようにしている。そして長沢に対する対処。高さ頼みの長いボールばかりでは、簡単に跳ね返される。ちょうどわれわれがオーロイを封じたときのように…。

研究されているなあ…。つくづくそう感じます。それは上位陣のどのチームからも「難敵・熊本」と呼ばれる“称号”と引き換えの、これもひとつの試練なのでしょう。レギュラー二人を欠くこの試合。二日前の重要な練習を非公開にしたのも、少しでも相手をかく乱しておきたい。そんな意図がありはしないかと思いました。

後半、徳島の守備の秩序だったところが際立って見えました。枚数で上回るところ、必ず身体を投げ出すところ。行き当たりばったりではない“堅固”な守備陣形が叩き込まれているように感じる。こんなに守備堅いチームだったでしょうか。最後の15分は、徳島が引いてきたこと、体力的な問題もあっていい形もありました。しかし、崩れない。崩されない。読まれている。対応されている。最後の最後にはGKスンフンが大きな壁になって立ちはだかりました。

試合終了の笛が鳴ったとき、がっくりと膝を着き、長い間起き上がれなかった筑城の姿が、胸を打ちました。辛抱強く待っていたこの出場機会。辛抱強く準備を続けた日々。ようやく叶ったこの日の相手は古巣の徳島。「自分を手放したチームに負けたくない」(熊日)。そう公言していましたし、それにふさわしい奮闘ぶりでした。それだけに彼は、この敗戦が受け止めがたかったのでしょう。多分、われわれよりも、誰よりも。

南は、この敗戦を「ちょっとの差かもしれないけど、そこを埋めていくのが難しいし、ちょっとの差ではなくて大きな差なのかもしれない」と総括しました。また、「皆さんに合わす顔がないぐらいの感じなので、帽子をかぶって失礼します」と冗談で交わした高木監督。きっと会見の途中まで帽子をかぶっていることすら失念していたのかもしれない。これまでこんな言動はあまり見せなかっただけに、それくらい、“何とも言えない”内容だったということなのでしょうか。どうしようもなくやられたわけはないけれど、決してコンディションがいいとは言えない相手に、僅差とは言え、大きな差を感じさせられた試合。監督の胸の内はわれわれが窺うことのできないものだけれど、そこにある危機感は想像以上に大きいものではないでしょうか。

徳島の斉藤は「簡単には得点をさせてもらえなかった。最後はああいう形で取れたけど、こぼれ球を狙うとか、貪欲さが試合の中では必要になる」「内容が悪くても勝ちきるチームにならないと上がれないと思うし、J1を戦う土台はできていかない。こういう接戦をものにできる強さを、もっとつけていきたい」とコメントしました。足りないもの、ちょっとの差。大きな差を見事に言い当てているように思えます。

美濃部監督は「われわれはちょっと前まで最下位にいたチーム。2位で居ても常に謙虚な気持ちでチャレンジャーとして、次もしっかりとしたいい準備をするだけ。ハードワークするだけ」と言い切りました。この徳島だって長い、苦しい時間をたどって来ているわけで。まだまだ、われわれの道のりは長い。そう感じざるを得ませんでした。

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