9月18日(日) 2011 J2リーグ戦 第28節
熊本 2 - 0 鳥取 (19:03/熊本/5,200人)
得点者:11' 大迫希(熊本)、40' ソンイニョン(熊本)

鳥取とのJでの初対戦です。でも、どうしても昔話をしたくなるのが年寄りの悪い癖。あれはようやく熊本のトップカテゴリーがJFLとなった“青の時代”の2001年3月。倉敷で行われた西日本社会人大会。枯れ芝のピッチで、同期でJFLに昇格したSC鳥取とのいわゆるプレシーズンマッチを戦った。そのときは0-1で負け。なかなか簡単な相手はいないリーグだと思い知らされた。そしてあれから10年の歳月を隔てて、所属選手も大幅に入れ替わり、互いに紆余曲折を経て名前も変わり、こうして今この舞台で再び戦う。ロッソ時代の対戦成績も1勝1敗2引分で全くの五分。馴染みはあるけれど、相性がいいとはあまり言えない。われわれにとっての鳥取はそんなチームです。

高木監督が「最終的には、内容よりも勝負にこだわったという結果」になったと評した試合。確かに1ヶ月前の大分戦以来5試合ぶりの勝利。勝つには勝ったが、とにかく引き分けでもなく、勝ちが欲しかった。「勝つ事が今の我々にとっては重要なエネルギーになる」。それが指揮官の正直な心情なのでしょう。

今節のエポックは新布陣。というより、開幕以来、出場停止の試合を除いて、全試合スタメンの長沢を控えに回したこと。後方の司令塔として、定位置だった原田をベンチスタートさせたこと。DFの真ん中二人の選択も、後方からの正確なロングボールフィーダーの福王を控えにして、菅沼、廣井できました。スカパー!の山崎アナ、風戸レポーターが口を合わせて言っていたのは、事前取材時、監督が選手起用について相当考えこんでいたということ。悩みに悩んだ末のシステムが、イニョンをトップに大迫、武富をシャドーに置いた4-3-2-1の俗に言うクリスマスツリー。徹底的に高さを活かすことを突き詰めればいい。前節そう書いたわれわれでしたが、これは“高さ”のサッカーからの転換を意味するものだったのでしょうか。

熊 本
 32ソン イニョン 
13大迫14武富
7片山22吉井
5エジミウソン
24筑城15市村
28菅沼4廣井
18南
前半34分 武富 孝介 → 齊藤 和樹
後半23分 ソン イニョン → 長沢 駿
後半30分 片山 奨典 → 原田 拓

鳥 取
 9ハメド 
 16金 
7小井手10実信
6服部14吉野
25奥山27丁
4戸川3加藤
 48小針 
ハーフタイム 吉野 智行 → 住田 貴彦
後半17分 キム ソンミン → 梅田 直哉
後半25分 小井手 翔太 → 岡野 雅行

「今までの2トップで、コンビネーションとかが機能しない部分があった。例えばスペースへのランニングだったり、縦に行ける選手を置く方が、今日のゲームでは効果的かなと思って、そういう構成にした」というのは高木監督。確かに、わかりやすい動機です。タテに行ける選手。そういう目でみると確かにどこをとっても縦に行くシフトだなと。そして対する松田監督は、「うちのセンターバックに対して相手のフォワード、ボランチに対して相手のオフェンシブ、そこが相手にとってすごくはまっていた。うちは逆に、そこでプレッシャーがかかったために中央に侵入できなかった。その面はゲームが始まってすぐに感じました」と。

鳥取のカウンターの切れ味。そのボールの出どころと連動性。そういった“相手”あってのこの新布陣。指揮官が選んだのは、相手を詳細にスカウティングしたうえで、今選択しうる最良のコンディションの選手たちと、相手の良さを消し、自身の良さを発揮するためのシステムだったのでしょう。

鳥取は縦に行けなかった。それはさらに今日の熊本が、前から行かず、自陣でしっかりブロックを作って、ハーフウェイラインを超えたところからファーストディフェンスを始めるという戦術をとったことにもよると思います。鳥取は凹型に攻めるしかなかった。中盤3人の吉井と片山のところでの守備の負担は、確かに大変でしたが、鳥取はサイド、サイドに持ってはいけるものの、市村、筑城の両SBの上がりを抑えた今日の熊本は、しっかりとスペースを埋めて、PAへの侵入を阻み続けました。

凸型攻撃の熊本でしたが、得点は決してカウンターではなく、しっかりとシフトアップして人数を掛けた攻撃からでした。9試合ぶり念願の先制点は、ポゼッションから。大迫が吉井に預けるとそのまま走りこむ。吉井はワンタッチで縦に入れる。武富がDFを背負いながら、これもワンタッチで走りこんできた大迫へ。大迫が迷わずシュートという、流れるような一連の連携プレーでした。

前節は武富。今節は大迫と、チームにとって“鍵”を握っていると書いたプレーヤーの得点が重なりました。昨年の途中出場から徐々に先発に名を連ね、90分間走れるようになった。そろそろ“結果”が欲しかった。生え抜きの大迫のゴールで、スタンドは沸きに沸きました。

イニョンの追加点も、類まれなる運動神経、彼の個人技によるところはあります。高木監督は「広島に入ってきたばかりの久保竜彦を見るようなんだ」と言ったとか。なるほど確かに、そこから撃ってくるかという意外性とボディバランスは、確かに久保を彷彿させます。ただしこの場面、相手ボールの守勢の局面。高い位置での連動したプレッシングで、相手DFがバックパスのミスをした。組織的守備から生まれた得点だったということも忘れてはならないことだと思います。

前半2点先取しての折り返しは、いつ以来のことでしょう。しかし、ハーフタイムのスモーキングエリア、はしゃいだ声は聞こえず、何故か皆、異様なほどに考え込んで黙りこくっている。皆、このままでは終わらないのではないかと思っている。2-0というサッカーにとって難しい点差を知っている。かつて“引き分け王”の異名をとった鳥取の、異様なまでの粘りを知っている。けれど、勝ちたい。今日こそは、この大事な2点を守りきって、勝利を喜びたい。そんな緊張感にも似た雰囲気に包まれていました。

思ったとおり、鳥取は後半早々から圧を掛けてきました。最後の南のところでなんとか防ぐ熊本。もうひとつ、この日、熊本を苦しめた“変数”に、この季節にしては異常に高い湿度がありました。プレーが止まるたびに選手たちは給水に走る。前半途中で武富が打撲系?のアクシデントで痛む。この穴は斎藤がうまく埋めました。しかし、後半イニョンに疲れが見えると、長沢に交代。片山も足を攣って原田と交代。とうとう早い段階で3枚のカードを使い切ってしまいます。

そのたびごとにシステム変更。終盤、頼みの大迫までが足を攣ってしまう場面も、もう交代カードはない。最後は、筑城を右SB、市村を一列上げると、守備の負担を軽減させるために大迫をトップに、長沢を2列目に配置。この、アクシデントとも言える“変数”に対応していくベンチワークも、この試合、われわれをうならせた見どころではありました。

決して3点目を取りにいくことを放棄したわけではなかっただろうと思いますが、鳥取の圧力の強さ、重なる選手のアクシデントによって、熊本の狙いはカウンター攻撃に絞られてしまいました。確かに、前半から相手にボールを持たせすぎ、揺さぶられすぎていた。守備の時間のこの長さと、この湿度の高さは、選手から体力を奪うのに十分だったことでしょう。もはや熊本は、奪っても前線に大きく蹴りだすだけに終始している。繋いで攻撃に転じるどころか、カウンターにさえ繋げない。

PAに入り込むボールは掃きだす。服部が前線に上がってくるところはエジミウソンが潰す。終盤、鳥取は“あの”俊足・岡野を投入しますが、この時間帯には岡野の得意とする大きなスペースは、どこにもありませんでした。

後半の内容は、決して“褒められた”ものではなかったでしょう。もっと狡猾で、もっと力で押してくる相手には通用しなかったかもしれない。しかし、この展開で、このチームコンディションでは仕方がなかった。これが精一杯だったと。試合後、「修正するポイントや、個々でリカバリーするところはもちろんあると思いますけども、今日のゲームに関してはそういうところを見るのではなくて、純粋に勝ちの喜びを味わいたいなと思います」と指揮官に言わしめた。その意味もそこにあったのだと思います。

しかし、勝利の影に隠されている小さくない評価。それは単純に言えば、ハメドをほぼ完璧に抑えたこと。この鳥取のキーマンを、90分間自由にさせなかったこと。途中から中盤まで下がったハメド。自身の突破力だけでなく、視野の広い、精度の高いパスは脅威だった。下がってからのハメドに対しては、持たせるが、出させないような、そんな対応に見えました。それによって鳥取の攻撃はさらに封じ込められたような。しかし、その能力は凄みがあった。セットプレーのキッカーも務める彼こそ、鳥取のゲームメーカーに違いありませんでした。天皇杯を含めて、あと2度対戦する相手。まだまだ油断できない相手だと心すべきだと思いました。

長沢を先発から外した新布陣。それは高さからの転換なのか?と書きました。迷いに迷ったという指揮官の選んだ道は、ひょっとしたらそうなのかもしれません。あるいは長沢のコンディションを考慮した結果なのかも知れない。ただ言えることは、“引き出し”の数が増えたということは事実だと。“高さだけ”からの転換とも言えるのかも知れない。イニョンのゴールに、長沢も発奮せざるを得ない。ファビオも然り。チームとしては、確実にオプションの幅を広げたのは間違いない。

それはいつか書きましたが、選手に90分間の熾烈な運動量を要求するわがチームの戦術にとっては、有意義なオプションなのに違いない。そんなポジティブな意気込みを持って、さあいよいよ次節。今期好調な栃木との、この時期にしての初めての一戦に臨みます。負けられない。いや絶対に勝ちたいと思います。

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