9月25日(日) 2011 J2リーグ戦 第29節
栃木 0 - 1 熊本 (18:03/栃木グ/4,411人)
得点者:50' 大迫希(熊本)


勝因は?と考えても、これといって思いつかないような。日頃から熊本を見ているものからすれば、地味なとても地味な試合内容とその結果。ほとんど、ノーチャンスで勝ってしまったような。しかし、実はサッカーというのはこうやって勝つんだというような、勝ち点というのは、こうやって積み上げていくんだ、というような。そんな気持ちがした勝利でした。

「今節の熊本戦で勝利だけが求められるならば、内容など要らない、不細工でも構わない。死に物狂いで満点解答を出すだけだ」。J's GOALのプレビューを書いた大塚秀毅氏の文章は、これは?と驚くほど気合いが入っていました。

この人の文章はJFL時代の私設ブログの頃から読んでいますが、あの頃はもっと冷静沈着な文体だったような…。さらには、「結果だけを追求して鳥取に前節2‐0で勝ち切った熊本。」「栃木は3トップでも、2トップでも対応可能なノウハウを持ち合わせている。」(熊本は)「堅牢な栃木の守備ブロックを破るために、ショートカウンターに活路を見出すのか、それともパスワークを駆使するのか。」といったあからさまな上から目線の表現。確かに長く昇格圏内に位置していた今季の栃木から見れば、今の熊本は格下と思われてもしかたがないのかも知れません。ただ、中心選手のパウリーニョを怪我で欠いてからこのかた、みるみる順位を落としてきた。直前の2連敗。昇格戦線に食らい付いていくためには、どうしてもこの試合は落とせない。そういった気持ちが文脈を熱くさせていたのか。これがこの試合に臨む栃木サイドを代表する空気だったのかもしれません。

それにしても、とんでもないピッチだということが、スカパー!の画面越しにも伝わってきます。相手も同じ条件であるにせよ、これでは戦術自体までも影響されてしまう。有料興行の舞台装置としてはいかがなものか。さすがに、J's GOALの記録も芝状況は「不良/乾燥」という、普段はあまりお目にかからない表記となっていました。

栃 木
18崔 根植 9リカルド ロボ
11河原14水沼
10高木2西澤
29堤19赤井
3大久保4大和田
 1柴崎 
後半23分 堤 俊輔 → 入江 利和
後半34分 崔 根植 → 廣瀬 浩二
後半40分 赤井 秀行 → 宇佐美 宏和


熊 本
 32ソン イニョン 
13大迫27ファビオ
7片山22吉井
5エジミウソン
8原田15市村
28菅沼4廣井
18南
後半21分 ソン イニョン → 長沢 駿
後半22分  吉井 孝輔 → 筑城 和人
後半45分+1 片山 奨典 → チョ ソンジン


もはやレギュラー解説者とも言える水沼氏が、この日の注目選手にU―22帰りの息子の名前を上げる。家族自慢を良しとしない古い考え方(笑)のわれわれとしては、このことからすでに気にくわない。昨年までの栃木のキーマン・佐藤悠介氏の「今日の栃木は試合の入り方がいいですね」というピッチレポートの弾んだ声。それに「私もそう思ってました」と応える水沼氏。われわれが知っている栃木以上でも以下でもない感じなのに。これは前節、前々節と、相当苦しい内容だったことを想像させてくれます。

確かに、開始すぐにCKからのこぼれ球をロボが強烈シュート。大久保のロングスローからファーサイドにいた河原に打たれる。カウンター攻撃から水沼が駆け上がってのクロスにロボのヘッド等々、前半7本の栃木のシュートのうち、決定的なものが多分3本ほどありました。しかし、結果論から言うわけでは決してありませんが、これまた何故か不思議に点を取られるという気がしなかった。GK南も前節以来“当たっている”感じがしますが、それとは別に、何故かわかりませんが、そんな気がする試合がたまにありますよね。

「中途半端なボールの処理が悪くて、前半は栃木にゴール前までボールを持ってこられた。そういうリスク管理をもう少しやらないと、ゴール前まで持ってこられる」。PA付近で最後に身体を張る場面が多かった原田は、そう反省します。しかし、ディフェンシブサードに入ってきたら球際に強くいく。PAでも詰めを怠らない。そんな選手たちの守りの意識の高さが、前節以来顕著になってきたように感じます。

この日の決勝点になった先制点は後半開始早々。スローインからの流れ。右サイドをPAまで運んで片山に渡る。大久保と大和田に挟まれた小柄な片山が、うまく反転してボールを流した。熊日のコメントを読むと、シュートだったようですが、ファーに流れたところに大迫が詰めた。難しい体勢でしたが、蹴りこんだボールは、GKの股の間を抜けてゴールに吸い込まれていきました。

今季、セットプレーからはなかなか点が取れないものの、スローインから“作る”のはとてもうまくなった。狭いところを通していって、3人目、4人目の動きでゴール近くに“展開”する。大きな武器になっているように思います。

「あそこまで相手が引くとは思っていなかったが、どうしても1点リードしたチームは引く傾向にあり、1点取られると厳しいことを改めて痛感した」。栃木の赤井のコメントは、何をいまさらといった感がありますが、長沢、筑城を投入した後半25分あたりから熊本は、意を決したように引きこもって守ることに徹しました。

対する栃木は、完全にスペースを消され、前線に高さの武器を持たないなかでの“パワープレー”という放り込みに終始するしかなかった。大迫の言うように「ピッチが良ければ栃木のほうがドリブルで仕掛けられたと思うが、ピッチが悪くてロングボールやワンタッチプレーが多かったことが僕達にとっては良かった。ドリブルがなかったので、そのあたりに関しては怖さがなかった」のかもしれません。

前半終了時には「栃木の時間帯のほうが長かった」と声を弾ませていた解説の水沼氏が、失点から一転してイライラ感を募らせます。遂には「(栃木の選手たちからは)どうしても勝ち点3をとらないといけないというようには見えない」とまで表現し、不機嫌になってしまいました。熊本側から見れば、勝ち点3を取りにいくのに必死なのは全く同じなわけで。勝てない、大量失点の苦しい時期を知っているからこそ、そこのところは熊本のほうが、はるかに貪欲だった。ただそれだけのことと思います。

やはり、後半。放り込みで押し込まれた長い時間帯も、この日バス一台を仕立てて駆けつけた関東サポーターを中心としたゴール裏と一体になって跳ね返しているような。エジミウソンからDFライン、そして南からその後ろのゴール裏まで続く熊本陣内のような。スカパーのカメラワークもあって、テレビのこちら側のわれわれにも特にそんな印象が残りました。

守り切れる自信があった。プレーの選択は明確で、リスクを徹底的に排除していた。とにかく跳ね返す。クリア。チャンスになれば、前の3人で攻める。同じような場面が延々と続いた印象。先制すると、こんなにサッカーが楽になる。こんなに自分たちで試合が運べる(マネジメントできる)。改めてそう感じます。

敵将・松田監督は先制されて追いつけないことを問われてこう答えました。「サッカーとはそういうスポーツだと思う。相手が完全に引いた時には、特にそうなる。相手が2点目を取りに来た時には、まだチャンスがあるが。我々も先制した試合は勝率が高い。だから、サッカーとはそういうスポーツだと思う」。

ライターの大塚氏は試合後のレポートに、「熊本の勝因は、徹底していたこと」だと書きました。「『0‐1』で逃げ切ることだけを考えていた」その“リアリズム”に栃木は屈したのだと。そして最後には「2点目を狙えるようにならないと、チームとしての成長はない」とお説教されてしまいました(笑)。

原田が「うちは常に全力を出さないと勝てない。次の徳島(9/28@鳴門大塚)は強いし、個々の能力はあっちが上。勝てないところは気持ちやハードワークで勝負したい」と言う。前節に続いて快勝でも劇的でもない勝利。こうやって、いっぱいいっぱいで戦い続け、ゲームを掴み取る。油断も、慢心も、プレッシャーも、緩みもない。目の前の状況に無心で“対応”していく。ワンプレー、ワンプレーを必死に取り組む。水沼氏が試合後言っていた「栃木は上位とやるときは、まず守備から入って、素晴らしいサッカーをする…。下位とやるとポゼッションできてしまってうまくいかない…」。そういった“気分”とは、ちょっと次元が違いすぎて論点が噛み合わないのですが。

彼我の戦力の差を読みきって、なりふり構わず、現実的に闘うということ。それを本当の“リアリズム”と呼んでほしい。「内容など要らない、不細工でも構わない。死に物狂い」で勝利したのは熊本のほうだったのですから…。

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