10月1日(土) 2011 J2リーグ戦 第30節
熊本 1 - 0 草津 (13:03/熊本/6,797人)
得点者:17' ファビオ(熊本)

今日から10月。久々のホームのデーゲーム。試合前、周辺の芝生の上でお弁当を広げる家族連れ。子供たち。ゲートをくぐる高揚感。リーグ戦もいよいよ終盤。富山戦の一部混乱した運営の反省からか、今日のサッカーフェスタに関しては明らかに動員が控えてあるようにも感じます。

ただ、この秋晴れの天気。気温も徐々に上がってピッチ上27度という環境は、中二日の3連戦の最終戦の今日、選手たちのコンディションにどう影響を及ぼすのか。われわれはまだ前節の悔しさ引きずっていて、やはり、絶対に先制を許さないこと、そのための徹底したリスクマネジメントを期待して、息を詰めて見守っていました。不用意なミスだけは勘弁してくれよ、と。

熊 本
 9長沢 
7片山13大迫
8原田27ファビオ
5エジミウソン
24筑城15市村
6福王28菅沼
18南
後半33分 原田 拓 → 西森 正明
後半34分 長沢 駿 → ソン イニョン
後半45分+1 大迫 希 → 仲間 隼斗

草 津
19後藤 8アレックス
14熊林6櫻田
2戸田30松下
23永田24古林
3御厨5中村
 22北 
後半14分 後藤 涼 → 萬代 宏樹
後半28分 熊林 親吾 → 佐田 聡太郎
後半36分 櫻田 和樹 → 林 勇介


「ただ、ゲームの入り方で言うと、前節(5節)からの改善点というのがいくつかあったと思いますし、短期間でも選手が理解してくれて、それがゲームにつながっていったと思います」。高木監督が試合後そう回想するように、試合開始から攻撃に人数を掛けることが出来ている熊本。久しぶりに先発に入った長沢がボールを収めると、ファビオや大迫が追い越してくる。そのフォローに片山、市村もついている。この日、初めての先発でコンビを組んだ福王、菅沼のDF連携も無難。守りの局面でも「前からプレスをかけることができた」(高木監督)。前節は、プレスがかからない、あるいはプレスが単発でやすやすとかわされていましたが、今日は、きちんと狙いが定まっていたし、組織的だと言えました。

一方の草津。自陣からなかなか抜け出せない。松下、戸田の両ボランチ、果ては熊林までもが押し込まれていて、縦に一発、キック&ラッシュを試みても、前線との距離が遠すぎる。回しながらビルドアップを試みるもパスミスが出る。前のアレックスもなんだか精彩を欠いているような。前節の熊本と同じように、草津は鳥取から直接アウェー2連戦の熊本に移動してきた。しかも「ナイトゲームからデーゲームと、短期間の中で時間帯も変わり気候も変わるという、非常にタフな環境」と副島監督が表現したように、少しばかりそこにはホーム側にアドバンテージがあったかも知れません。

前回対戦では前半17分に草津・熊林に先制点を奪われ、そのまま終了まで持っていかれた。とても嫌な、整理のつきにくい負け方でした。今日は、まったく同じように前半17分に熊本がファビオのゴールで先制し、これを守り切るというミラーゲームのような展開となりました。

その先制のシーン。またもスローインからの攻撃でした。前半14分あたりから、右サイドで1回、2回、3回と押し込んだまま、スローインを続ける。市村が「得点のところは粘り勝ちという感じ」と言うように。そして4回目のスローイン。長沢から市村が再び貰うと二人を相手にしながらも失わず、片山に渡す。片山は思い切ってサイド奥に仕掛けると、利き足ではない右足でグラウンダーのボールを入れる。ニアのDFが触って、角度も高さも変わったボールをファビオが躊躇せずダイレクトボレーで突き刺します。競り勝つ長沢、市村の粘り、片山の意外性、ニアに詰めた大迫の働き、そしてファビオの思い切り。全てがつながった得点。そしてこの、高さを生かした相手陣内の深いところでのスローインからの組み立て、キープ、押し込み、連続攻撃はなかなかの武器になっているなと確信させました。

ファビオの今シーズンようやくの2点目。今季新たな役割を与えられ、その戸惑いからか、なかなか結果が出ていなかったこと。「若い選手ですけど、外国人選手なのでやっぱり点を取ってもらわないと困るということは、常々彼にも話をしています。そういう意味では、今日は冗談も交えながら厳しく言った」という高木監督。それは試合前、すね当てをはめているファビオに、「シュート打たないし、危ないところにもいかないんだから、すね当てなんかいらないだろ」という、しゃれにもとれないような“叱咤激励”だったらしい。それに対してきっぱりと「今日は点を取る」と言い切ったというファビオ。得点後に駆け寄ったファビオに、監督が足を撫でてやるという意外なパフォーマンスを見せたのも、そのすね当てを尊重した、そういう“伏線”があったからなのかと知りました。

多分、熊本の得点力の鍵は、かなりの部分、実はファビオが握っていると思っています。彼自身が「私への期待と要求も大きいと思うので、それに応えられるようにもっと努力していきたい」とはっきりとそれを自覚している。今日は、得点のほかにも、玉際で粘ってマイボールにする場面が随所に見られた。終盤戦に向けて、この褐色の駿馬の活躍。期待していい材料だと思いました。

もう一人目立っていたのは片山。得点シーンのアシストはもちろんですが、カウンターから左サイドをドリブルで突っかけたシーン、あるいは預けられて思い切りよくシュートを選択したシーン。前節、前々節ぐらいからでしょうか?明らかに昨季の切れ味を取り戻しつつあると思わせます。大迫と頻繁にサイドチェンジして、呼吸も合ってきた。これも期待です。

後半は、お互いにミスの多さ、精度の低さが目立ってしまったような。ずーっと膠着状態が続くような戦い。神経戦のような、潰しあいのような。ただ最近、前半は入りが悪く後半は調子を上げるという草津の反撃の芽を、注意深く剥いでいくということは出来ていたのかなと。

時間の経過とともに、熊本はさらにセーフティーになっていく。勝ちきるために。全然面白くないけど、全然構わない。それでいい。熊本の強さを押し出して勝つというより、相手を消して、潰して、凌いで勝つ。1点差では実に怖い時間帯。草津もDFの中村を上げてパワープレーに出る。アディショナルタイム5分間は、自陣に釘付け。熊本のゴール近くでの局面が続きました。

今日もまた快勝でも劇的でもない勝利。地味な、実に地味な勝利。

高木監督が「後半の出来に関して“悪いな”という印象はないです」と言う。そのベースには「相手がボールを持っている時のディフェンスに関しては非常に良かった」というように、ある程度安定感、安心感があったような。それは集中できていたということとも同義語なのでしょう。今日は後半途中で退いた熊林も、「何となく作っているけどシュートまで行けてない」と言うように、結果、草津には前後半合わせてシュート3本しか打たせなかった。それはやはり組織的な守備が戻ってきたとも言えるのかも知れません。

ただ、相変わらずディフェンシブサードで与えるFKの数が多い。草津には熊林、松下ほか、どこのチームを見渡しても用心すべきプレースキッカーが必ずいる。セットプレーからの守りに難のあるわがチームだけに、ここは改善点が残る。失点はもっと減らせると思います。

勝ち点40。残すところあと10試合。高木監督は、「目の前の一戦一戦を戦うことが、われわれに“残された道”」とコメントしました。これから天皇杯を間に挟み、そこからまた怒涛の連戦に入るリーグ日程。非常に微妙な順位。デリケートな時期に差し掛かり、選手のモチベーションを気にしながら、チームの力をさらに積み上げて行こうとするために、とても言葉を選んだ表現だったと思いました。キャプテンの南はゴール裏に向かって、「最後まで昇格を諦めない」ときっぱりと言い放ちました。

この試合の観戦のために来熊した大東チェアマンは、試合当日の熊日朝刊に掲載されたインタビューのなかで、来期導入予定のプレーオフ制度に言及していました。3位から6位までの昇格プレーオフには、「多くのクラブにJ1を経験して欲しい」という狙いが込められていると。また、「リーグは間違いなく盛り上がるだろう」とも。導入されれば、10位くらいまでは最終盤まで“昇格圏”を争うことなるわけで。まさに今の熊本あたりになります。一戦一戦、目の前の試合を戦うことには変わりはありませんが、その一戦一戦の“痺れ”度合いは格段に違うだろうなと容易に想像できます。ファンの盛り上がりも違うだろうと。
しかし、同じ記事でチェアマンが、「熊本はJ1昇格の要件は満たす。あとは成績だけ」といわば“お墨付き”をくれたのですから、今季、まだこれから最終コーナーを回ったところで直線一気。わずか鼻の差でも昇格圏内に食い込む。そんな痺れる状況を今年のうちに味合うことを決して諦めるわけにはいきません。

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