10月16日(日) 2011 J2リーグ戦 第31節
愛媛 1 - 1 熊本 (16:04/ニンスタ/2,869人)
得点者:52' 原田拓(熊本)、80' 福田健二(愛媛)


残り10試合となったリーグ戦。これから2週間で5連戦というこれまでにない過密日程に際し、高木監督は戦前、「ここからがラストスパート」と表現していたらしい。先制点をわがものにしたものの、追加点を奪えず追いつかれてのドロー。それにしても試合後の監督のコメントは全体的にポジティブに映る。それは、この5連戦をひとつの“ユニット”として捉え、どう“戦い抜くか”また、そのためにどう選手のモチベーションを持っていくかという考えでいるからではないでしょうか。

愛 媛
27齋藤 8内田
25東10杉浦
4渡邊6田森
7前野28高杉
5大野18池田
 1川北 
前半42分 齋藤 学 → 金 信泳
後半15分 杉浦 恭平 → 大山 俊輔
後半31分 池田 昇平 → 福田 健二


熊 本
 9長沢 
14武富13大迫
7片山27ファビオ
5エジミウソン
8原田15市村
4廣井28菅沼
18南
後半15分 原田 拓 → 筑城 和人
後半33分 長沢 駿 → ソン イニョン
後半37分 武富 孝介 → 齊藤 和樹


熊本と同じように、得点力不足に悩む愛媛。前線での動きだしが少ないため、DFラインのボール回しにもたつく。そんなスカウティングもあったのでしょう、開始早々から熊本が前線から積極的に連動したプレスを強め、愛媛を自陣に釘付けにします。

スカパー!解説者の大西氏も何度か指摘していた「愛媛のスイッチ」の入り方。とにかくマイボールになってからの展開が、いかにも遅い。慎重になっているのか、意図がはっきりしていないのか。「チームとしてボール回しは安全に、2タッチで回したり、もちろん奪われない方がいいけど、ダイレクトプレーとかも考えた方がいいと思う。後ろは特に失点したくない気持ちがあると思うが、そこで勇気を持つことやプレーの質、意識の問題は変えないといけない」。愛媛のFW内田が試合後、そう正直にコメントしていました。

熊本は前半を支配したように見えましたが、この、愛媛のあまりにも悪すぎる前半と差し引きすれば(愛媛バルバリッチ監督は「12歳の子供のサッカーのようだ」と自軍の戦いぶりを酷評していますが)、実は結局、これといって決定機を作れなかったように、あまり褒められたものではなかったと思いました。先週の天皇杯。鳥取に遠征して見てきた知り合いからも、「まったく鳥取戦から改善していない」との声が聞こえました。

それでも先制点を奪うことで、十分に勝機を感じました。後半7分。ファビオがドリブルで前を向きかけたところを内田に後ろから引っかけられる。ゴール正面30メートルからのFK。原田の蹴ったボールは壁の左側を巻いて、ゴール右角に落ちていく。ようやくセットプレーをものにしました。

ところが逆に、先制されたことで、愛媛に自動的に“スイッチ”が入ってしまいます。失点直後、アーリークロスの処理にまごつく熊本のDFライン。こぼれたところをエリア内から内田に打たれますが、南が好セーブ。続いても縦に入ったパスを大野が強烈シュート。これも南がなんとかキャッチ。動きも判断も、格段にスピードアップした愛媛。バルバリッチの言う「ウチの選手たちはそもそもプレッシャーに弱い。ボールを持った選手の半径7~8mのところの相手が来てもプレッシャーに感じることはないが、それだけで恐怖心を感じてしまっている」というようなプレッシャーや恐怖心が、先制されたことで一気に吹っ切れたということでしょうか。

スイッチの入った愛媛に対して、先制直後から逆にフワフワッとスイッチの切れてしまったような熊本。前線からのプレスが効かなくなり、中盤で後手を踏み、最終ラインがバタバタしてしまう。“精神的なスイッチ”だけで、こうも変化してしまうものでしょうか。テレビ画面ではよくわからなかったのですが、バルバリッチ監督は失点直後、4-3-3へのシステム変更を命じていたようです。(J’s goalレポート)

後半35分、サイドで繋がれて、左サイド奥で内田に粘られ、クロスを入れられる。途中から入っていた福田にニアで合わされると、南も為す術がありませんでした。

今日は、武富の奮闘がひとつの光明でした。スピードを生かし、身体を張ってプレーし、多くのチャンスに絡みました。「勝ちたい一心でプレーしたし、勝てると思っていた。今日はそれ以外考えていなかった」と悔しがるように、5連戦の初戦、天皇杯での良くない負け方の直後の、先制できた試合。とにかく結果が欲しかった。

ここ数試合の徹底したリアリズムが見えない。そう思った試合でした。追加点を狙いながらも、時間の経過を読みながらなりふり構わず守り切る、みたいな。もちろん、先制したあと追加点を奪いにいくことが、今のわがチームの課題ではあることは確かです。しかし、残念なことに1点が“虎の子”であることも受入れなければならない事実。その判断の切り替えに関して、いかにも中途半端。前半の愛媛の良くないイメージを持ったまま、切り替えられずにゲームを続けてしまったような。前半でかなり飛ばしていたわけですから、スタミナ的にも厳しくなってくる。流れが完全に入れ替わってしまった。その“潮目”を見切って、対応を変えることができなかったのが“敗因”ではないか。そう思えるのです。

先制した直後から流れが悪くなって、筑城が準備されるときには、左SBに入って原田を一列上げて、ダブルボランチにするのかと思いました。中盤に蓋をして、サイドに起点を設けて追加点を狙うのかと。しかし、前半でもらったイエローのリスク回避からか、原田との直接交代に終わった。
前線に圧を掛けてきた愛媛に対して、熊本の前線からのプレスはことごとく空振り。DFからはアバウトなクリアボールが蹴られるばかり。もっと前で持てれば全体の押し上げも効いたのでしょうが、チグハグ感は否めませんでした。やはりそこには、愛媛の前半のイメージが尾を引いていたと。スイッチが入ったことに気がついていたとしても、油断がなかったとは言えないように思えました。

「必死で頑張ったので比較的やり切った感はあると思う」「やりたいことは徐々にできているので、我々としては収穫もあった」「今日の試合をベースに足りないところ、あとは早くコンディションを戻していい状態で戦えるように頑張りたい」。

冒頭書いたとおり、高木監督のコメントはあくまでポジティブに徹し、次の水曜日の試合に向けてのマネジメントを始めているように思われます。連戦を総力戦と捉え、アウェーに限らずベンチメンバーにも色々な工夫がされるのではないかと。この時期において「やりたいことは徐々にできている」とは。と、皮肉のひとつも言いたくなりますが、最後まであるべき姿を追い求める指揮官の気持ちもわからないではありません。これは多分に選手たちに向けられたメッセージに他ならないだろうし。

一方のバルバリッチは「12歳の子供のサッカー」に続けて「熊本はパスをつないだりポゼッションから攻めるチームではなく、ロングボールに頼った攻撃をしてくるチームだと考えればそんなに難しい相手ではなく、やるべきことをやってポゼッションをすれば2点差で勝つことを期待してもおかしくない相手だと考えていたが、攻めても気持ちややる気が出てこないと勝てる相手などいない。」と熊本を見下し、選手を突き放したうえで、さらには「このクオリティーの中で残りの試合をやるしかない」とまで言い放っています。もし、これもまた選手を鼓舞するための劇薬表現だとするなら…。わが指揮官とこの旧ユーゴ出身の敵将と、実に対照的で興味深いものがあります。

ただ、J’s goalレポートの近藤氏も指摘するように、引き分けに終わり両者それぞれ順位を落とした今節、「この試合で両チームは前進することができていない」ということだけが事実。「どれだけ収穫を得ても評価されるのは結果」であり、リーグはそういう最終局面に来ているとも思うのです。

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