10月23日(日) 2011 J2リーグ戦 第32節
熊本 2 - 1 水戸 (17:04/熊本/9,461人)
得点者:31' 小池純輝(水戸)、78' ファビオ(熊本)、84' 根占真伍(熊本)


「相手よりも走ろう!戦おう!頑張ろう!」
「後半、立ち上がりから、どんどん前からプレッシャーをかけていこう。」
「勢いを持って戦おう!」
広報を通じて知らされるハーフタイム時の監督コメントは、往々にしてメンタルを重視した言葉が多い。おそらくそれだけでなく戦術的なことも話されているとは思うのですが、もちろんそれらは具体的に明かすことはできないのでしょう。しかし、今日の試合において高木監督は、15分間のほとんどを“檄”を飛ばすことに費やしたのではないか。誰もがそんなふうに想像してしまうような前半の内容でした。

5連敗、7試合勝ちの無い厳しい状況から一転、ここ5試合負けなしで好調の水戸は、父親の死去のため不在の柱谷監督に代わって、急遽秋葉忠宏ヘッドコーチがこの試合の指揮をとることに。これは結果論になるのかも知れませんが、今日の試合の流れを左右する遠因になったのかもしれません。

連戦の中間となる3試合目。熊本はスタメンを3人入れ替えてきました。累積欠場の片山はともかく、市村、大迫もベンチ。代わって右SBを努めるのはソンジン。宇留野と西森は、前節の途中出場こそ“アイドリング”の意味があったのか。果たしてこれはターンオーバーなのか。いずれにしても、総力戦とは言ってはみたものの、過酷な連戦日程を見せつけられたようで、ちょっと不安もかき立てられたのが試合前の正直な気持ちでした。

熊 本
 9長沢 
14武富11宇留野
25西森27ファビオ
 5エジミウソン 
24筑城2チョ ソンジン
4廣井28菅沼
 18南 
ハーフタイム エジミウソン → 原田 拓
後半19分 宇留野 純 → ソン イニョン
後半32分 西森 正明 → 根占 真伍


水 戸
30鈴木 9吉原
28小澤7小池
24ロメロ フランク8村田
4尾本6西岡
20塩谷5加藤
 1本間 
後半11分  ロメロ フランク → 岡田 佑樹
後半35分 吉原 宏太 → 島田 祐輝
後半41分 西岡 謙太 → 遠藤 敬佑


南のブログの言葉を借りれば、前半は「正直今季1、2を争うくらいひどい内容」。サイドで詰まってはバックパス。ロングフィードもラインを割る。連携というレベルではなく、全く個々人がバラバラな感じが伝わってきます。

水戸の前線。鈴木、吉原という元日本代表のテクニックに翻弄される。それに切れ味のある小池、小澤が2列目から飛び出してくる。これが5戦負けなしの原動力か。対する熊本の守備の危なっかしさ、バタバタ感は、目を覆いたくなるほどでした。

吉原が小澤に渡す。左サイドに傾いていた熊本。一転、右にチェンジされ危ないクロスを入れられます。続いてもボールに行ったソンジンが抜かれ、吉原にクロスを入れられる。右サイドを徹底的に狙われている。そんな危険な雰囲気が漂っていた時、やはり右サイドから吉原に早いタイミングでクロスを入れられ、走り込んだ小池に押し込まれてしまいました。

前節、栃木戦と同じように、絶対に取られてはいけない先制点をとられてしまった。カウンターとも言えない攻撃に、あっさりと後手を踏み、ゴールへ向けて後ろ向きに走るディフェンス陣。何度も何度も繰り返し見せられる光景。そしてその後も覇気のないプレーぶりに、ハーフタイムに控え室に戻るイレブンに対して、容赦ないブーイングが浴びせられました。

「練習なのかメンタルの部分なのか、伝え方がまずかったかもしれないし、それが前半の内容のないサッカーになってしまった」と高木監督は振り返りました。「流れが変わったのは…、気持ちじゃないかと思う。後半は違うチームのようになっているので、前半の戦い方が大事」と筑城は言います。ではいったい何が流れを変えたのか?これが、この試合を語る大きなテーマに違いありません。

少なくとも現場(スタジアム)では、後半から見違えてよくなったとは感じられませんでした。後半もようやく33分。同点に追いついてから、俄然エンジンが掛かったようにしか見えなかった。しかし録画を改めて確認したら(結果を知っているからかも知れませんが)、この長い33分という時間、我慢して我慢して食らい付いているように見える。「勝ちたい」という気持ちが、徐々に水戸を上回ってきているように見えるのも贔屓目というものでしょうか。

痛んだエジミウソンをハーフタイムで諦め、原田を投入。さらに後半19分には宇留野に代えてイニョン、32分には西森を根占に。早い時間帯から繰り出した仕掛け。根占の投入が仕上げとなって熊本の逆転劇の舞台が整いました。

原田から左のスペースにボールが出る。イニョンが素早く走り込んでのクロスに、ファビオがDFと重なりながら身体で押し込んだような同点弾。6分後には、廣井がプレスからインターセプト。再びイニョンを左サイドに走らせ、今度はグラウンダーのクロス。中央に走り込んだ廣井が流して、上がってきたのは根占。低く抑えた弾道で、強烈にミドルをぶち込みました。

ここ数試合、途中投入でも“消えていた”感のあるイニョンが、2得点ともに絡む働き。当のイニョンは「流れが変わったのは、原田選手が入って空いているスペースに自分も入ってボールが動くようになったからだと思う。水戸が前に出てきていたので、やりやすかった部分もある」と分析します。確かに水戸は引いて守るでもなく、2点目を奪うべくさらに圧をかけるでもなく。何故?と思うほどバイタルエリアが空いていました。

さらに根占は「交代で入る時には、前がかりに行って相手にプレスをかけることと、(原田)拓さんよりも高い位置で受けてFWと絡むこと、リズムを作る事を考えて、監督からもそういう指示があった」と証言する。どうやらエジミウソンが痛んで原田に交代したことが、不幸中の幸いだったのかも知れない。以前、われわれもエジミウソン依存症と表現したことがありましたが、彼がいないことで、皮肉なことにようやくスイッチ(監督はギアチェンジと言っていますが)が入ったということもあるかもしれない。システムも、スカパー中継ではイニョンが入った時点で3-3-3-1に変わったと表現していました。DFは菅沼、廣井、ソンジンの3枚で対応して、中盤を厚くした。これもまた要因のひとつなのかと。いずれにしても、この交代カード3枚が見事に局面を打開するきっかけになったことは間違いないでしょう。

「…ぬるいところが出た」「…もっとやろうという気持ちが足りない」「…ボールをもらいたくないのか、ミスしたくないという気持ちがあったのか…情けない」「誰もができるプレーしかできていなかった」。総じてまだ若い水戸の選手達を引っ張る吉原は、そう言って悔やみました。柱谷監督がいればまた違ったマネジメントをみせただろうということは、容易に想像できることでした。

最後に長沢が見せた気持ち。これまでなら、イニョンが入れば長沢が退く形でしたが、一列下がることによって、その足元のうまさが活かせる格好になった。終了間際のプレー、捻挫なのか痛みに悶絶する。メディカルスタッフからは×が出る。しかしもちろんもう交代カードは使い果たしている。自らピッチに戻っていく長沢。解説の池之上氏が言う。「できることはある。できることをやればいいだけ」と。その気持ちが他の選手たちにも伝わったからでしょう。あのアウェー鳥栖戦を思い起こさせるような、長い長い6分ものアディショナルタイムを、全員で凌ぎ、1点差を守りきりました。

試合前、満杯のゴール裏で繰り広げられた見事なコレオグラフィー。詰めかけた9000人以上のファン。今日は負けるわけにはいかなかった。栃木戦のような負け方は絶対できなかった。内容はといえば、相変わらず決して褒められたものではなかったのが確かなところです。でもようやく「勝ちたい」という気持ちが相手より上回るのが見えた。そしてそれが結果となって実を結んだ。この期に及んでこんなことを褒めているのもなんですが、今日のところはシーズン2度目の逆転劇に酔いしれるのも悪くはないでしょう。

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