10月26日(水) 2011 J2リーグ戦 第7節
鳥取 0 - 1 熊本 (19:03/とりスタ/1,994人)
得点者:53' 大迫希(熊本)

相手FWハメドがすべてだったのかも知れないなと思った試合でした。2週間前の天皇杯2回戦、0-3の敗戦時、1得点2アシストしたこのコートジボワール人を止められなかった。菅沼が語るように「ハメドにやられないように、個人的にも強く(当たりに)いった。前半はやらせなかったと思う」というところが今日の熊本の最終ラインの意図であり、そこに集中していました。

最近5試合(天皇杯含めて)3勝1敗1分と、決して悪くない状態の鳥取。連戦という両チーム共通のテーマのもと、土曜日にホームで札幌に勝ち、そのまま中3日でホームゲームに臨む鳥取。対する熊本は日曜日のホームから中2日でアウェー戦。このあたりのコンディションはなかなかデリケートに影響してくるのかと思いました。10月も下旬のナイトゲーム。寒冷前線の影響もあって気温は14度。グラウンドコートを着て入場した熊本のイレブンでしたが、試合開始後すぐに汗が吹き出している様子が画面からもわかる。これも、それが疲れからなのか、それともそれほど開始から走っているということなのか。

鳥 取
 9ハメド 
7小井手10実信
6服部13美尾
 28三浦 
3加藤2尾崎
23水本4戸川
 48小針 
前半12分 加藤 秀典 → 鈴木 伸貴
後半18分 小井手 翔太 → キム ソンミン
後半37分 鈴木 伸貴 → 奥山 泰裕


熊 本
 27ファビオ 
14武富13大迫
25西森22吉井
8原田
24筑城2チョ ソンジン
4廣井28菅沼
18南
後半13分 武富 孝介 → 片山 奨典
後半27分 吉井 孝輔 → 根占 真伍
後半37分 ファビオ → ソン イニョン


前半。スカパー!の解説者が「ガイナーレの攻めで、熊本は両SBが上がれない」「前節は両SBが高い位置から攻撃の起点になっていたのに」と、1試合だけのにわか勉強で指摘していましたが、われわれから見ると天皇杯の敗戦のイメージから、ハメドにまずサイドのスペースを与えないように慎重に入っているだけだと映りました。そしてボールを持ち、侵入してこようとするハメドに対しては、必ず二人で対応して左(左利き)を切る。実にしっかり対応していました。

前回のリーグ戦。KKウィングで対戦したときは、そのレポートに彼のことを鳥取の「ゲームメーカー」と書きました。パスも出せて、自分で点も決める。こういうタイプの外国人は、他のチームでもよく見ますが、いかんせん“チームの状況=彼のパフォーマンス”になってしまうきらいがある。自由が与えられる反面、“戦術はハメド”と揶揄されるような。調子に乗せたら怖い。しかし的確に押さえ込んだらチーム全体が動かない。前回ホーム対戦時はそれに成功し、アウェーの天皇杯では失敗した。そして今回はそのリベンジでした。

リベンジという意味では、もうひとつありました。南のブログで明かされた、試合前のミーティングでの高木監督の言葉。今日は絶対勝たなければいけない理由があると。天皇杯時に得点を決めたあと、ハメドが熊本のゴール裏を挑発し侮辱した行為を思い出させ、「自分達のせいでサポーターまで馬鹿にされたんだっ。俺は絶対に許せない。だから今日はサポーターのためにも絶対にリベンジしなきゃいけないんだっ!!」と。南でなくてもこのセリフに「燃えないはずはない」。ハメドはすでに前の試合で、熊本の選手たちに“火”を着ける理由を与えていたのでした。

南が書きます。「今日は“どうしても勝つんだ”って気持ちが後ろから見ていてもみんな溢れているように見えてホント心強かった」「みんな疲労もピークだったと思うけど、今日が4試合の中で1番動けてたと思う」と。戦術だけでなく、そこにメンタルも加わった。だから90分間、あそこまで前線からプレスを掛け続けられたのだと思います。

エジミウソン、長沢が傷んでいるなかで、前節、先発から外した原田、吉井、大迫をスタメンに。市村をベンチに置いて筑城、ソンジンでスタート。後は選手の状態を見ながら、武富、ファビオ、吉井を下げていく。吉井、根占が復帰したことが、熊本の“総力戦”にとっては、やはり大きい。そのなかでも、ワントップを任されたファビオの献身的な追い込みは目を見張るものでした。

後半8分。先制点かつ決勝点になった大迫のシュートの場面。熊本は鳥取が作る2列のブロックを右サイドから崩して攻める。鳥取のクリア。それを高い最終ラインで押し返すと、ボールをトラップしたのは右サイドの大迫。自身のトラップボールがワンバウンドしたところを、すかさず思い切って打つ。ゴールからはまだ30メートルもあった距離からでしたが、ドライブがかかったシュートは、若干前目に出ていたGK小針の伸ばした手をあざ笑うかのように、ゴールに吸い込まれていきました。

「ゴールキーパーのポジションを見ていて打ったと、彼の口から聞くことができるのなら、非常に成長したと思う」という高木監督に対して、「完全には見えていないですけど(笑)、前に出ているという感覚は、いつも持っているので。自分としては、自分が持っている力が出たシュートだったのかな、と思います」とインタビューに答えた大迫。それでいい。ちょっと前まで90分間フルに走れなかったこの生え抜きの“逸材”は、今年一番の成長を見せ、今やチームに欠かせない存在になっている。

スカパー解説者は、熊本は後半、特に先制してから、見違えるくらいに運動量、前線からのプレスが厳しく、守備がはまっていた。と分析していました。「点をとってから元気になった」と。しかし決してそうではない。鳥取サイドの言葉を借りても、「今日はなかなかパスの出しどころがなかった。相手の守備、こちらのパスの受け方、両方に原因があった。裏へのパスも相手が対応していました。うまく守備ではめられているシーンが多くて、そのときにどうするか。後半になったら、もう少し回せるかと思ったけど、相手もペースが落ちませんでした」(戸川健太)。

「前半、相手の前からのプレッシャーは予想していました。それを裏返そうと、前節、(前々節の)岡山戦と同じ意識で入ったつもりです。ただ、結果的に攻撃が単発になり、むやみにスピードが上がり過ぎた。(中略)スピードが上がり過ぎて、うまく活用できなかった。そこが体力的にも、あとあとに響く結果になってしまったと思います。後半、相手は体力面で、90分間を通してアグレッシブに継続してきた。それが、自分たちがボールをうまく動かせなかったことと比例して、ゲームをうまく運べなかった要因だった」(松田岳夫監督)と。

前半は両者拮抗していたものが、後半、鳥取の運動量が急激に落ちたことで、熊本が“見違えるように”活性化したように見えた、ということではなかろうかと。つまり熊本は90分間、一貫してパフォーマンスは変わっていない。実はそれがこの試合の熊本の一番評価されるべきところだと思うのです。

この連戦の4試合目というのに、選手全体のきわめて高い集中力、連動性と豊富な運動量。そのあたりを、まるで軽く煙に巻くように「われわれの方が少しコンディションが良かったのかな」と答えた高木監督でした。

さらに「(先制した後に)2点目を取りにいくということは、ハーフタイムに選手たちからも声が出ていましたし、僕自身も望んでいたことです。そのあたりをもう少し貪欲にいかなければいけないかなと思っています」と指揮官は言うものの、その後も途絶えることがなかった前線から連動したディフェンスは、貪欲に2点目を狙ったというよりも、むしろ相手の攻撃の目をつむための“守備的な”ものと思えました。ファーストディフェンダーから、二人目、三人目と、解説者が丁寧に分析してくれたほど、実にお手本のような組織的守備を見た思いがしました。熊本の2列のブロックを崩せない鳥取は、ハメドがどんどん中盤まで降りてくるという状況に陥る。それは前回勝利したゲームの再現でした。

アディショナルタイム3分を、コーナーでキープして時間を使う熊本。終了のホイッスルが鳴るときに、焦れてそのコーナー付近までボールを奪いにきていたハメドの、苦しげにゆがんだ表情がそこにありました。

先制してからもあれだけ前線からいって、しかもコンパクトにしようとしてラインを高く保てば、必然的に裏をとられるリスクは高まる。しかし、そういった相手のプレーの意図や精度を奪うくらいに、前線から追い込んでいたといことでもあると思います。結局、90分間運動量が落ちないで守備が機能し続けた熊本。何度も繰り返しになりますが、今日はそれしか言えません。

サッカーは所詮、生身の人間のやるゲーム。ひとりひとりの、またチーム全体のコンディションがいかに直接的に影響してくるかがわかるゲームでもあり、またメンタルがそれをどう補うのかということも考えさせられたゲームでした。「次の試合までにできるだけ良い状態にして、連戦の最後を勝利で終えるように頑張っていきたい」という当たり前のような指揮官のコメントですが、これはまったくの本音でしょう。

次節は、ファビオとソンジンが累積で欠場。武富も痛めているという情報があり心配されます。エジミウソンと長沢の故障は癒えるのか。相手は昇格圏を争う札幌。連戦の最終戦にして、本当の“総力”が試される戦いになりそうです。札幌厚別アウェー戦。38試合のなかの1試合とはいえ、この状況においては、色々なことが試されるとても重要な山場のように思えてきました。

TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/333-739f09a6