11月6日(日) 2011 J2リーグ戦 第34節
熊本 1 - 2 京都 (13:03/水前寺/2,847人)
得点者:11' 大迫希(熊本)、37' ドゥトラ(京都)、53' ドゥトラ(京都)

4連勝中の京都。一時は下位に低迷していたものの、いつの間にか勝ち点差1まで迫られていました。そんな相手に対して戦前、「今一番、やりたいサッカーが出来ているチーム」(スカパー!)と評していた高木監督。その好調にしてパスサッカーのお手本のような京都相手に、真っ向勝負を挑みましたね。もちろん十分な対策を立てて。だからこそ試合後のコメントはサバサバしているように感じられました。「悲観することはあまりない」と。「いなせる、かわせる、止められる、タメを作れる」。そういった“いくつかの力”の差だと。しかし、今シーズン、先制して初めて逆転負けを喫した展開を振り返ると、その差の大きさを痛感せざるを得ないとも言えます。

久しぶりの水前寺競技場。11月の雨にしては暖かい。結構な量を伴った雨は、芝を十分に濡らしたあと、試合が進むにつれて上がっていきました。

熊 本
27ファビオ13大迫
 14武富 
23根占22吉井
 8原田 
24筑城15市村
4廣井28菅沼
 18南 
後半17分 大迫 希 → ソン イニョン
後半27分 吉井 孝輔 → 西森 正明
後半38分 筑城 和人 → 仲間 隼斗

京 都
13宮吉 9ドゥトラ
15中山20工藤
23中村7チョン ウヨン
16福村2酒井
4秋本32内野
 1水谷 
ハーフタイム 秋本 倫孝 → 染谷 悠太
後半11分 中村 充孝 → 駒井 善成
後半43分 工藤 浩平 → 加藤 弘堅


誰もがわかるように、前半30分頃までが熊本の時間帯でした。前線からの連動したプレスがはまり、中盤の吉井、原田、根占のところで京都のパスが捕まる。球際での“あと一歩”がよく出ている。これは過密日程の連戦が終わり、いい休養がとれたということなのか。あるいは京都対策が入念に準備されていたのか。指揮官が「この試合に臨むにあたっての準備段階も含めて、目的は達成された」と言うくらいですから、きっとその両方なのでしょう。

先制点は早くも11分。大木監督の“クローズ戦術”に誘われるように左サイドで人数を掛けて奪ったあと右の市村に素早く展開。市村が中に入れると武富がスルーしてファビオ。今度は武富がワンタッチで左から走り込んだ大迫へスルーパス。飛び出してきたGKをしっかり見定めた大迫は、絶妙のループシュートで転がし込みました。

「プレッシングと、できるだけ早く相手の背後、薄いところを突いていくというのがポイントだった」という指揮官。ゴールの後、この人には珍しくガッツポーズを見せたという。それほど快心の出来だったのでしょう。左サイドの密集地帯から右サイドに展開すると、今度は逆を突くように左斜めに。「今までの積み重ねだと思う。イメージが合い始めた」と武富が振り返るように、京都のお株を奪うような鮮やかなワンタッチパスの連続。こんなゴールが見たかった。スタンドでは熊本恒例、ゴール後のタオルマフラーがぐるぐると回され、そんな気持ちを表現しました。

その後も好機を演出する。右サイドから吉井がファビオに。ファビオから市村がスルーして根占。市村が右サイド奥に走る。雨を含んだ水前寺の芝と相性がいいのか、ボール回しが早い。続いても、右サイド奥まで走った大迫からのグラウンダーのクロスは、相手DFとGKの間の絶好のスペースに。武富が中央でスライディングシュートしましたが、これはGKが身体を投げ出して防ぎました。

吉井も「30分頃まではパーフェクトに近いサッカーができていた」と言うように、立ち上がりから、先制、その後、失点するまでは、狙い通りのサッカーができていました。しかし何故でしょう、30分過ぎぐらいから、ボールを奪えなくなっていた。攻め疲れたか?とも思いましたが、気づかない間に、京都は中盤のシステムも変更していました。大木監督いわく「前半の途中で変えました。相手に合わせる形でダイヤモンドにしました」。ダブルボランチの一画の中村が高い位置取りをするようになっていた。そこでちょっと中がルーズになって、京都に回され始める。京都の方にパスカットが多くなる。

中山がPA内に入った工藤へパス。着いていた筑城のクリアは小さく、詰めていたドゥトラの足元に。落ち着いてうまくカーブを掛け、ドゥトラが同点弾をたたき込みました。前半終了間際の同点弾。試合はイーブンに戻り、後半勝負へ。しかし、前半のうちに同点にしておいた京都の方にやや分があるような。30分以降、萎むように攻勢が衰えた熊本に不安が募りました。

ここから両者の間に「いなせる、かわせる、止められる、タメを作れる」差が明確になってきました。加えて、京都でワンボランチを努めたチョン・ウヨンの存在感が際だっていた。我が方の原田も、エジミウソンの故障後、しっかりとその穴を埋めていますが、京都の時間帯を引き寄せた立役者は、このウヨンに他ならない。攻守ともに卓越した働きに見えました。前回対戦時にはウヨンもドゥトラも工藤もいなかった。そういった意味では、京都は前回とは全く違ったチームになっていたとも言えるでしょう。

後半早々にくらった逆転弾。中村のシュートのクリアから右サイドで宮吉に持たれ、そのパスを中村が縦に入れると中山が走り込んだ。ゴールラインぎりぎりで折り返すと、ドゥトラが詰めて押し込まれました。「オフサイドと思って、DF陣の足が止まってしまった」(熊日)と菅沼は悔やみますが、皮肉にもオフサイドラインを崩してしまったのは、当の菅沼でした。

熊本もソン・イニョン、西森、最後は仲間を入れて追いすがりましたが、イニョンがDFを背負い、反転して裏へ抜けようとするプレーは、スカウティングされていたのか、DFが決して前に出ようとせず対処される。西森も流れを変えられない。いくつかあった決定機も、途中から“当たって”きてしまったGK水谷の好守に阻まれました。

今シーズン、先制したら負け知らずだった熊本。初めての逆転負けを喫しました。しかもホームで。それは一番厳しい負け方でした。気分が良いはずがない。しかし、客観的に見れば結果は妥当なものだと受け入れざるを得ないでしょう。

前回対戦でその若さと可能性を十二分に感じさせた京都は、さらにベテランも復帰して、蹴る、止める、基本技術の高さと勝負強さをあらためて証明しました。やられた、と思ったときには、やはりやられる。少しもルーズにできない。忘れてしまいがちですが、京都は今シーズンのJ1降格チーム。その技術と経験はやはり伊達ではなかった。対する熊本の攻撃は意味不明のミスで終わってしまう。精度うんぬん以前の問題のようなミスで。

目が覚めるような鮮やかな攻撃の時間帯は前半30分まで。90分の試合時間のうちの3分の1でした。監督の言葉を借りれば「継続性が足り」なかった。ただ、あくまでやろうとしていることは“悪くなかった”ことを再確認したようです。選手たち自身も。

もう少し光明を探すなら、後半早々に逆転を許し、そこからかなりの時間帯を京都の“押せ押せ”にさらされた後、もう一度、押し返した点でしょうか(京都が守りに入ったとも見えますが)。押し返して、いくつかの決定機を作った。少なくとも、逆転を食らうというショックからズルズルやられず、ファイティングポーズをとってやり返した。監督としてもおそらく、今シーズン一番の攻撃的なゲームを指向したのではないか。いまある選手という手駒の“条件”のなかで。それが、「勝敗は別として」と前置きしながらも、「我々の目的は達成された」と述懐する理由なのではなかろうかと。勝負師としての本心は、「京都にもうちょっと善戦したかった」「この勝負に勝ちたかった」「もうちょっとだった」という言葉に隠されているようでなりません。

この悔しさが、今はまだ果てしなく遠く感じるJ1の扉への距離なのかも知れません。あと残り4試合。ホーム2試合。アウェイでは北九州と鳥栖戦。今シーズンをどう納めるのか、あと一カ月、どういう“戦い方”をするのか、そんなことを意識する季節になってきました。

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