3月11日(日) 2012 J2リーグ戦 第2節
熊本 2 - 1 鳥取 (16:04/熊本/5,817人)
得点者:10' 小井手翔太(鳥取)、46' 武富孝介(熊本)、52' 藤本主税(熊本)


「花冷え」というには厳しすぎる寒風に足が遠のいたのか、J加盟以来のホーム開幕戦としては最低の入場者数に、少々落胆しました。直前(金曜日)の社長交代劇の影響と関係がないとも言えないのかも知れない。微妙なファンの心理。何がきっかけになるかわからない熊本人の気質。

経営的には待ったなしの状況。ややタイミングを逸した感じですが、それでも他にも多くのクラブが似たり寄ったりの財政のなか、いち早く財務状況を開示し、さらには代表者が責任をとる形で辞意を表明したことは、「公的資金が投入されている」会社としてのケジメなのだろうし、県民クラブとしてのコンプライアンスに他ならなかったのでしょう。後任の池谷氏の経営手腕を不安視する声もありますが、実業団時代の選手兼大企業ビジネスマンの感覚をあなどるなかれという気がします。それよりこういったケジメ、責任の取り方が、この先慣例となってしまうのだろうか、という危惧のほうが少しします。

熊 本
 9チェ クンシク 
14武富11藤本
7片山26田中
8原田10養父
4廣井5矢野
 6福王 
 18南 
ハーフタイム 田中 俊一 → 大迫 希
後半25分 廣井 友信 → 高橋 祐太郎
後半31分 チェ クンシク → 白谷 建人


鳥 取
29福井 8美尾
17鶴見7小井手
22森10実信
3加藤2尾崎
4戸川6柳楽
 48小針 
後半19分 鶴見 聡貴 → ケニー クニンガム
後半26分 尾崎 瑛一郎 → 奥山 泰裕
後半35分 小井手 翔太 → 岡野 雅行

鳥取の吉澤監督が「ある程度予想していた」というとおり、熊本は前節・福岡戦の途中から試した3バックを、スタートから敷いてきました。そしてこれもまた福岡と同様、鳥取も前からの速く厳しいプレスで全開の勢いでゲームに入ってきた。熊本はそれに押されるように、立ち上がり、ああいった形で引いてしまった。あそこまで自陣ゴール近くでプレーされると、非常にリスクが高まる。さらには激しい向かい風が、ボールごと自陣に押しとどまることを手伝ってしまいました。

開始早々ともいえる10分での失点。大きなサイドチェンジが右サイドの小井手に渡ると、がら空きのスペースからクロスを入れられる。エリア内で福井が戻すところに再び走り込んで来た小井手。豪快にゴールを割られます。3バックの弱点を崩すお手本のようなカウンター。その後も執拗にサイドを攻められました。

しかし、これまた前節福岡戦と同様に、前半30分前後から徐々にペースを奪い返していく。武富からのパスを奪うように田中がPAのなかに猛スピードで入っていく。エンドラインぎりぎりからクロス。田中らしいケレン味のないプレー。チームのエンジンが温まってきた感じ。スカパー解説の池ノ上氏も「あとは崩すときのシフトチェンジだけ」だと。

ハーフタイムを挟んで確実に修正してきた熊本。高木監督の指示もやはり「相手の陣地でプレーすることを心がけ、シュートをもっと打っていこう」というもの。昨シーズンとは違う今シーズンの戦いができているかどうか。ここが一番大事なところ。後半から田中に代えて鳥取キラーとも言える大迫を投入しました。

象徴的なのは、武富が2試合連続で得点できていることではないでしょうか。後半も開始早々、ハーフウェイラインからのリスタートを左側からつなぐと、養父がスルーパス。クンシクがこれをスルーするところに走りこんでいたのは武富。角度のないところを打ち抜いて同点にします。「タケ(武富)には俺が持ったら走れというのは言っていた」(J’s goal)と言うのは養父。一方の武富も「養父さんが前を向いた時に前に走っていれば、そこしかないっていうところにボールが出てくる」と呼応している。狭いところを通す、そして3人目の動きという意味でも、これまでの熊本にはなかった得点シーン。

逆転弾も武富から。相手CBのまごつく処理を狙った守備。クンシクに出たボールを、走りこんできた藤本に優しくロブで渡す。藤本主税はトラップ一発で、DFから遠い左足にぴたりと収めると、GKの動きを落ちついて見極め、ゴールに流し込みました。この一連のプレーが、しかも一瞬のスピードのなかで行われたのです。

歓喜のスタジアム。殊勲の藤本が、思い切りよくゴール裏の看板を越えてチームメイトを手招きする。“お約束”の阿波踊りの周りに、ほとんど全ての選手がピッチ看板を越えて集まって喜びを分かち合っている。こんなシーンも、しばらく熊本にありませんでした。

その後の残された長い時間に、熊本にも幾度かピンチが訪れたことを思えば、ダメ押しの3点目を取れなかったことに不満は残ります。ただ、65分頃に見せた波状攻撃。スローインからサイドでパス交換。養父のクロスに大迫。こぼれ玉に武富。さらに拾って養父。片山に返して藤本が入ってきてシュート。などなど・・・。アタッキングサードで人数をかけ、次々にエリアに人が入って切り崩すパスワークに、まったく鳥取が翻弄されている時間帯がありました。

このゲームでの武富、クンシク、藤本そして養父、前3人とパサーのこの4人の関係性が今シーズンの戦いをはかるひとつのバロメーターであり、とても興味深い点でした。

また、ファビオとクンシクのチョイスについて高木監督は「根植(クンシク)の方が点を取るためにシュートを打たなくてはいけない中で、足を振れる」「ファビオの場合はシュートシーンでもなかなか振れない。点を取れるポジションに入れるか入れないか、そして入った時にシュートを打てるか打てないか、それが大きな差」と語っています。ファビオについてのこの指摘は昨シーズンからあったもの。チームとしてのその課題に早速、ひとつのオプションを試しているということでしょうか。クンシクは、怪我で出遅れた分、まだまだ身体は重そうでしたが、フィジカルの強さを感じさせました。そして絶妙のアシストに見られるように、足元の柔らかさ、判断の早さも。

今シーズンの戦いということで言えば、今節、スタートから3バックに変更した狙いと、手応えを問われて「それなりに良かったんじゃないかなと思います。短い時間で準備した割には、選手たちがよく理解してやってくれた」とさらりと受け答え、「変更した理由は言えません(笑)」とはぐらかしている。高木監督からファンに対して出されたクイズのようなものでしょうか。

奇しくも東日本大震災の1周年の日と重なったこの日。膨大な数の犠牲者、いまだ避難生活を送っている多くの人々のことに思いをはせて、日本中の人々が祈りを捧げました。センターサークルでたたずむ選手たちとともに黙祷を捧げながら、この日、ホーム開幕を迎えられた自らの“平穏”に感謝するしかありませんでした。毎週の一喜一憂を与えてくれる、このサッカーのある暮らしへの感謝を。「養父のスルーパスを観に来るだけでも楽しい」「主税の阿波踊りをまた観たい」そう思える今季を。もっともっと多くの人に知ってもらいたい。そう思いました。

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