3月25日(日) 2012 J2リーグ戦 第5節
熊本 3 - 3 湘南 (16:04/熊本/4,687人)
得点者:12' 廣井友信(熊本)、23' 馬場賢治(湘南)、34' 大迫希(熊本)、55' 古橋達弥(湘南)、79' 大槻周平(湘南)、87' 武富孝介(熊本)


一言でいえば面白かった。観戦するスポーツとしてのサッカーの魅力を堪能したゲームだったと言えました。しかし戦前は、4連勝で首位を走る湘南をこの時点で迎えるのは、正直なところキツイなあと思っていました。撃ち合いを演じて、3連敗を免れるとともに、湘南の連勝にストップをかけた。引き分けとはいえ、あの展開で追いついた引き分けは、逆の場合とは全く違った印象が残りました。

福王と藤本主税がベンチにも不在となった布陣。二人とも連戦からくる疲労性の故障ではないかと思われますが。前節、町田戦のエントリーで、われわれは最初と最後に藤本のコメントを引用しました。今シーズンのチームのなかで、この選手の役割、重みは言うまでもありません。それだけに、明らかに疲れているのか、そのパフォーマンスは期待に応えるものではありませんでした。監督としても前節の途中交代といい、この試合といい、苦渋の判断を迫られたのではないかと想像しました。

熊 本
 27ファビオ 
14武富19五領
9片山13大迫
10養父8原田
4廣井3高橋
 22吉井 
 18南 
後半20分 原田 拓 → 根占 真伍
後半25分 五領 淳樹 → 白谷 建人
後半42分 大迫 希 → 崔 根植


湘 南
 18古橋 
15岩上17馬場
23高山5古林
6永木7ハン グギョン
22大野2鎌田
 3遠藤 
 27阿部 
前半42分 岩上 祐三 → 坂本 紘司
後半26分 古橋 達弥 → 大槻 周平
後半43分 鎌田 翔雅 → 島村 毅


吉井が一列下がったものの、この急造DFラインの危なっかしさは、致し方ないともいえます。ただ一方で、藤本のポジションに代わりに入った五領は十分に気を吐いた。この初スタメンのルーキーのアイデア豊かでテクニカルなプレーが、熊本の前線の起爆剤になり、アタッキングサードのパス回しを見違えるほど活性化させたことに、観た人の誰もが異論はないでしょう。

12分、養父のFKはGKがパンチング。クリアを拾った片山が入れる。ファビオがこれを落として、五領が胸トラップからアウトで裏に入れる。右からファビオがシュート。そのこぼれ球を前線に残っていた廣井がしっかり押し込む。熊本としてはこの5試合で初めての先制点でした。

そのあと、DFラインのクリアを馬場にブロックされて、そのままダイレクトに決められ同点にされますが、五領がサイドで高山と競い勝って入れる。養父と大迫のワンツー。右サイドを破って入れたボールのクリアを、今度は大迫が決めて、前半を勝ち越して折り返します。湘南にとっては「何だ?」という思いだったでしょう。特に「あの19番は何者なのだ?」と。全く未知の選手。

思えば、藤本主税には厳しいマークが着き過ぎていました。二人、三人。藤本はいわば熊本の”アイコン”であり、熊本の攻撃は必ずそこを通過することがわかりきっていた。「熊本は攻撃の起点である藤本を潰せばいい」。多少の違いはあっても、そういうスカウティングはあったのではないでしょうか。もちろん、味方もそうわかっていても藤本にボールを集めた。攻撃のリーダーたる藤本に預ける。連敗にはそのあたりの“依存”が見て取れました。ところが、その”アイコン”が突然に無くなったことで、湘南は守りのフォーカスを失った。熊本は逆に3人目、4人目が動くことを余儀なくされた。藤本がいないことで”結果的に”…。そう言えなくもないのではないでしょうか。

初スタメンとは言っても「これまで緊張したことはない」と豪語する五領。彼にとっても、連続得点で湘南の連勝を支える無名の大卒ルーキー岩上の活躍や、同サイドで対峙する昨年のチーム得点王・高山の存在、あるいは若手で占める湘南の平均年齢の低さそのものが、モチベーションを上げるには十分だったに違いない。藤本の故障はアクシデントだったとしても、そういうモチベーションの”シナリオ”を描いて高木監督が背中を叩いて、このルーキーを送り出したのでないかと想像するのは、ちょっと深読み過ぎるでしょうか。

「相手に対して圧力をかけようということで後半に少しシステムを変えて」と湘南の曹監督が後述するように、それまで養父や原田に収まっていたボールを奪うために、後半湘南は2トップにシステム変更したようです。結果、セカンドボールがほとんど湘南の手中になる。熊本のDFラインが押し下げられる。屈しきれず、DF裏にこぼれたボールを古橋に決められ同点。79分にはカウンターから崩されて、途中交代の大槻に決められ逆転。

スタンドで見ていたわれわれは、これが「今季の湘南の強さ」そのものだと感嘆に近い思いで感じ入っていました。「湘南の勝ちパターンにはまったかも知れない」と。指揮官の修正の成果も見逃せないが、なにより今季の湘南は諦めずに走りきる。恐れるほどに走ってくる。それも後半、相手の足が止まるに従って…。走ることが何の苦痛でもない。そんなチームの統一感。

しかし、先制はしたものの同点にされ逆転され3連敗を喫する。そんな無様な結末を覆してくれたのは、選手たちの「ホームの意地」に他ならなかったでしょう。最後の時間帯。力を振り絞るように波状攻撃。CKを得ると87分、養父のキックがクリアされるところを、武富が躊躇せずダイレクトで振り抜く。それは林立するディフェンダーの、まるで針の穴に糸を通すようなわずかな隙間を抜けて、ゴールマウスに吸い込まれていきました。

両監督の試合後のコメントは、まるで二人が対談をしたかのようにきっちりと噛み合っていて、興味深いものでした。

湘南・曹監督は、「全体としては引き分けが妥当というとおかしいですが、最後に追いつかれたのも含めて、ポジティブに行った結果の勝点1だったかなと捉えています」とコメントした。高木監督も「勝点としては、お互いに3を取り合うというゲームで、非常にアグレッシブに両チームともプレーしていたと思いますし、勝点3を取るという中でのゴールへ向かう姿勢とか、ピッチ上でのプレーには非常に満足しています」と振り返る。

高木監督はさらに言う。「今日はホームだということ、ホームの地の利、ホームでやることによってサポーターの皆さんの後押しの力を借りてやろうという話もして、この試合に臨みました。とにかく、90分間持たせようという気持ちは必要ないと。スタートから100%でやっていこうと。そういう風にやっていけば、例えば疲れても、さっきも言ったようにホームですし、サポーターやいろんな人たちの声援が力となって、90分やれるもんだよという話はしました」と。

それが。その結果が、曹監督に「前半、熊本さんの、サッカーの本質を分からせてもらうような球際の強さだったりとか、セカンドボールの早い拾いだとか、そういうところに戸惑ってちょっと後手を踏んでしまった」と言わしめた。

”システム変更”、”風の影響”…。ほかの多くの変数をマネジメントしなければいけないなかで、最も本質的なことを表現しているこの両指揮官のコメントが、この引き分けの試合を”奇しくも”言い表しているような気がして仕様がありません。

グッドゲーム。もう一度、繰り返しそう言いたいと思います。

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