4月22日(日) 2012 J2リーグ戦 第9節
愛媛 0 - 0 熊本 (13:04/ニンスタ/1,950人)


GKが得点を決めることはなかなかできませんが、勝ち点なら奪うことはできる。愛媛の7回の決定機を、南ひとりが防いだわけではもちろんありませんが、この試合で得た貴重な貴重な勝ち点1は、間違いなく彼が愛媛から奪い取ったものでした。

前節の不甲斐ない戦いぶりから、どう修正してくるのか。もし前節の延長のようなゲームになれば、チーム自体が大きな局面を迎えかねない。いつになくドキドキした心持ちで試合開始の笛を待ちました。当然のことでしょうが、われわれファンの側がそう思ってしまうということは、選手はその何倍も意識しているわけだろうし。この試合の“メンタル”に関しては、そういった“対前節”というところがとても重要だったのではないかと思います。

もちろん、試合後のコメントに“前節”という言葉はなかったにせよ、それは監督も同じではなかったかと。3バックはそのままにしても、大きくメンバーを入れ替えてきた。最終ラインにはケガから復帰した市村、福王を。ボランチには吉井を上げる。前線には出場停止明けのチェ・クンシク。なにより、クンシクと武富の2トップに、養父、大迫の2シャドーという3-3-2-2というシステム変更には驚かされました。

前節の試合後、選手たち一人ひとりと向かい合って話をしたという高木監督。そして徹底した愛媛のスカウティング。最後に、システムをいじってきた。1週間のなかで密度の濃い仕事をしてきたなと思います。

愛 媛
17大山 9有田
7前野16赤井
3トミッチ26村上
8内田13関根
2浦田22園田
 37秋元 
後半21分 赤井 秀一 → 東 浩史
後半33分 大山 俊輔 → 小笠原 侑生
後半44分 内田 健太 → 石井 謙伍


熊 本
9チェ クンシク14武富
13大迫10養父
7片山38藏川
 22吉井 
4廣井15市村
 4福王 
 18南 
後半14分 大迫 希 → 高橋 祐太郎
後半29分 チェ クンシク → 齊藤 和樹
後半36分 吉井 孝輔 → 原田 拓


序盤は、幾分熊本の方が優勢でした。強風ともいえる風上を利用して積極的に攻める。ゴールが見えたらシュートを打つ。大迫や養父が、それこそ2列目から。養父のキープから左に上がってきた廣井へ。廣井がスルーパス。大迫がDFラインを抜け出す。ドリブルでエリアを横切ると右から上がってきた藏川へ。藏川が動き出したクンシクへのシュート性のクロス。惜しくも合わず。しかしそれは、前節にはなかった”点の匂い”のする一連の攻撃でした。そして、球際で身体を張った激しい攻防。前節、ホームのサポーターから浴びせられた厳しいブーイングを振り払うように、”闘う気持ち”を前面に出しています。

しかし愛媛は強かった。3年目のバルバリッチは、このチームを”仕上げかかっている”。そんな感じさえしました。

オーソドックスな4-4-2のブロックから、サイドにも中央にもワンタッチで素早く展開する。左SBに抜擢した内田が、トミッチからのスルーパスに追いついてエリアをえぐる。右サイド奥からのマイナスパスには3人目が必ずニアに飛び込む。走る走る。久しぶりに感じる攻撃のオートマティズム。果たしてそれは”考えず”に走っているのか、それとも…。

前半も中盤を過ぎたあたりから、強風の影響を避けるように、バルバリッチいわく「ボールを地面に置いて」つなぎ始める。その猛攻は、途絶えることなく後半も続きました。その間、熊本は冒頭のように南のスーパーともいえるセーブの連発、福王の”福王らしい”最後の最後に身体を投げ出してのクリア、そして色んな”幸運”に恵まれて、なんとかゴールを死守している。

ここまで持ちこたえられれば、いつぞやの厚別での札幌戦のように、最後に1点を決めて勝利もありうる。そんな予感もあり、確かにアディショナルタイムでは、2度そんなチャンスもあったのですが、結果決めきれず。両者スコアレスで、痛みわけに終わったのでした。

それは。指揮官が言うように「なんとなく勝っていない分、持ちすぎるところがあるし、もっと積極的にボールに関わる中で人数や距離感の問題もあった」。そして「判断と勇気、こういうところは足りない」というところは、われわれにも見てとれました。スカパー!解説の大西氏も言うように、前節の戦いぶりから失点を恐れるあまり、守りに入った気持が透けて見えたとも。なにより攻撃に転じた際の反転、押し上げのスピード、エリアに入っていく人数。熊本はまだまだだった。高木監督の「ディフェンスで頑張って、運もあって勝点1を取ることができた」という総括が全てでした。

それにしてもトミッチ。彼への対応策として「今日は形を変えたつもりだが…」と高木監督は暴露しましたが、結果的には、「J2の中でもトップクラスの選手で、どうしても力の差が局面で出ていた。手も足も出せないのではなく、手も足も出していたが上手くいかなかった」と言わざるを得なかった。昨年一年はペドロヴィッチ率いる広島でプレーし、今季は愛媛のバルバリッチ・サッカーの欠かせない中心選手となっている。この”オシムの教え子たち”ともいえる脈流が、熊本の前に立ちはだかる。

バルバリッチ監督にしてみれば「突破はしていたが、そのあとは攻撃性や積極性が足りなかった」「最後の部分で攻撃性や執着心がなく、運もなく得点に至らなかった」「攻撃には強さや精度が不足していた」と、しつこいくらいに繰り返し詰めの甘さを指摘しています…。ここまでのサッカーを確立していても、実際のゲームでは勝ち点1にとどまることの不条理。ましてやこのチームが、この順位にとどまっていることの不思議。サッカーとは本当に、ままならない。

「風の影響もあったし、前節よりシュートのことは意識した。それでも相手の方が状態がいいように感じたので、失点しなかったことは良かったと思うし、少しずつ良くなっていけばと思う」と養父は言う。どん底のような状況のなかで、天候という大きな”変数”も敵にまわし、それでもなんとか最低の結果は手に入れた。ギリギリで踏み止まった。わがチームにはまだ運がある。今はこれが精一杯の熊本の姿なのかも知れないけれど、何より次につながる勝ち点1だったのだと。そう思わないわけにはいけません。

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