5月13日(日) 2012 J2リーグ戦 第14節
熊本 0 - 0 甲府 (16:04/熊本/4,182人)


試合終了後、ゴール裏に行く甲府の選手達に対して、サポーターから強烈なブーイングが、これでもかと言うくらいに浴びせられました。甲府サポーターの不満の声が、このゲームを物語っている。滅多にこんな言い方はしないんですが、熊本にとって今日は”勝てた試合だった”。甲府に決定機を作らせなかった。そして多くの決定機を作った。1分7敗という一方的に分が悪い対戦成績。染みついた苦手意識。その苦い思いを払しょくする絶好の機会だった。だからこそ余計に。残念です。

長くCBの中心を務めていた吉井を累積警告で欠く。その代わりには本職ともいえる福王。前節は藏川が務めた左WBには片山が復帰して、その藏川は原田とともにボランチに入りました。おやっと思ったのは、敢えてよく古巣対決という起用のしかたで選手を鼓舞する高木監督が、養父をベンチスタートさせたこと。特に前日の熊日が予想した養父のシャドー起用という“奇策”にワクワクしていただけに。ただ、それは後半に準備されていたカードであったことがあとでわかるのですが、またある意味“幻”のフォーメーションに終わってしまうのです。

甲府戦450

とても慎重に試合に入ったという緊張感は、観ているわれわれにも伝わってきました。「前半のプランニングとしては、基本的に失点してはいけないということで…」と高木監督。熊本はいつもよりリトリートして、しっかりブロックを作る。終始、バランスを崩さず、サイドもバイタルもガッチリと固める。ポゼッションは与えるが、崩されない。そのまま我慢。じっと我慢。奪ってはシンプルに長いボールで相手DFの裏をつく。これを斉藤や五領が粘ってCKをもぎ取る。

「サイドの選手があまり速くアプローチに行ってしまうと、我々がギャップを作ってしまうことがあったので、意図的に開けない形を選択しました。前の3人の追い方に関しては、人につきすぎて1トップで両サイドを下げられる状況になったので、そこは途中で指示も出したんですが、なかなかうまくいかなかった。そこがうまくいけば、もっとサイドも高い位置に出れたと思いますが、相手のボランチのところに効果的なアプローチがかけられなかった分、後ろを割られることは前半に関しては無かったと思う」(J's goal)と手の内を明かす高木監督。いつになく饒舌に感じるのは、今日のこの采配に手ごたえを感じたからなのでしょう。

15分の右CK。競ってこぼれたところに福王がグラウンダーで撃つものの、DFに当たりポストに跳ね返される。再び撃つがGK。

甲府は序盤こそシステムのミスマッチを生かしてポゼッションを持ったものの、徐々に停滞してくる。目立つパスミス。精度のないクロス。あの甲府が…。

片桐(甲府)が言います。「チームになっていなくて、個人で行っている感じが強い。何が悪いのかはっきりしない状況。決定的なチャンスを作れない。言いたいことを全部言わないけれど、何が問題なのか分からない不安もある」。

34分、五領が左サイドでひとり交わしてクロスを入れる。ゴール前には合わないものの、スタンドが沸く。今日の五領もいい。ミスもある。ボールを獲られることもあるけれど、前に行く意思、向かっていく闘志ははっきりと伝わります。相手の嫌がる動きをしている。もう少し。もう少しだという感じ。

後半に入っても47分、左CKから福王のフリーのヘッドは味方に当たってしまう。前節から引き続きミドルの意識も高い。大きくはずすこともあるが、際どいシュートも2本、3本。54分のバイタルエリアからの藏川のミドル、64分の原田のシュートもGK荻に阻まれる。ゴール前からのこぼれ、セカンドを意識したポジションどりで、シュートまで持っていく形ができていました。

そして斉藤から武富への交代。長い故障から癒えたばかりの武富がピッチに登場すると、待ちわびていたファンの盛大な拍手。何となく一回り体が大きくなったような。さらには五領から養父。このタイミングで熊日予想どおりの養父のシャドー。彼の実力を知っている甲府相手だからこそ、一番効果的な時間帯で一番嫌な選手の”攻撃的な”投入。よーし、さぁこれからだ。そう勢いづいたところだったのですが…。

原田が高崎を残り足で払ったという判定で、この日2枚目のイエローで退場。一気にプランの修正を余儀なくされる。スタンドで見守っていたであろう主将・藤本は、自身のブログで「あえて拓に苦言を言うならば、あの場面は我慢しなければいけなかった。カードを1枚もらっている中で、どうしようもない場面ではなかった」と指摘します。それも、その試合展開だけを悔やむのではなく、「チーム状況も苦しい中、大事な選手が出られなくなるのは、この試合だけではなく、次の試合にも影響する。よくよく理解して、プレーの選択をして欲しい」と。全くそのとおりでした。

それでも指揮官が「10人になってからも、1.5人とは言わないまでも、1人分を上回るようなプレーを見せてくれた」と言うように、ボールは確かに持たれてしまうが、熊本のバランスは変わらないし、チャンスを作るのは熊本。85分には養父のFK。クンシクに代わって入った高橋に惜しくも合わず。アディッショナルタイムに入っても、スローインから養父が、走りこんでくる市村にマイナスパス。決定機でしたがシュートはゴール左にそれていきました。

終盤、審判の判定をめぐって、やや集中を欠くようなゲームになりましたが、後半45分以降、4枚のイエローをもらう甲府。(それまでの90分は熊本だけが4枚のイエローと1枚のレッドだったわけで)。いかに甲府側にも焦りがあったかがわかります。

J1からの降格チームの甲府。新たに就任した城福監督の甲府は「ムービーング・フットボール」を標榜するとおり、かつての大木さんが培った”クローズ”戦術とは違い、ピッチを大きく使ってくる、いわばオーソドックスなものでした。しかし、何か動きに約束事があるのか、オートマティズムも無ければ、個の打開もない。これが現在リーグ得点王のダヴィや、守りの要の山本を欠いた試合だったからだけなのか。だとしても(だとしたら)、今日は甲府を下す絶好の機会でした。

南の怪我で、前節途中からゴールを守るGK岩丸。今日はスタートから安定したセービングでチーム全体を落ち着かせました。「皆頑張ってくれているし、GKが僕に替わって、皆がシュートを打たせないようにしてくれてるのかなと思う」というコメントは、謙虚な上になかなか深い。

「スタジアムの雰囲気も、何かしら僕の中では(今までと)少し違うなという雰囲気があって、立ち上がりから選手たちにパワーを与えてくれたなというのを感じてます」と高木監督が言うのは、確かにわれわれも感じたことでした。それは今節から試合前の選手紹介で、DJコバとの掛け合いに選手別のオリジナル・コールを交えるという”演出”の効果もあったに違いありません。一体感が増した。バックスタンドへの呼びかけもしかり。ただ、それだけではなく何だろう、ゴール裏の声も低く、声量も大きく感じるようになった。それは文字通り”腹の据わった感じ”というべきか。

さあ、千葉、山形と続く対戦。下を見ると怖いので見ないようにしているけれど。確かに勝ちからはずいぶん遠ざかっているけれど。勝ち点1の意味は重い。積み重ねること。それしかない。ここが踏ん張りどころだと信じて。

ああ、それにしても惜しかった。

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