6月2日(土) 2012 J2リーグ戦 第17節
横浜FC 2 - 0 熊本 (16:04/ニッパ球/5,509人)
得点者:45' 武岡優斗(横浜FC)、90'+2 カイオ(横浜FC)


なんとも形容しがたい試合でした。塀の上を転がしたボールがどちらに転がるかを見届けるような。どちらに転んでもおかしくなかった。しかし転んだ方に勝ち点3も転がった。けれど、いくら内容で押していても負けは負けだし、完璧に崩せなかったのは熊本の方でもあったと。そんな不甲斐なさもあって。いつもとは違った”悔しさ”があります。

シーズン途中の岸野監督の解任を受けて急遽就任した横浜FCの山口素弘監督。2006年シーズンに同じように急遽就任した高木監督のもと中心選手として戦い、チームの初めてのJ1昇格に貢献した。そんな二人の”因縁”の対決を、戦前からJ’s goalの記事も「師弟対決}と煽り立て、加えて今日のスカパー中継の解説は、当時のFWの主軸だった城 彰二氏。”舞台は出来上がった”という感じでした。

熊本は怪我から復帰したGK南以外は、前節と同じスタメン。横浜は4連勝中で、J参入後初の5連勝を目指します。波に乗っている横浜だし、大久保、田原の高さのある2トップも脅威でした。しかし…。

横浜戦

「研究されていて、うまく(サイドが)消されていた」という横浜FCの武岡。 あるいは「熊本はクサビへのチェックが激しかったし、真ん中も締めていたので、そこはきつかった。そこを逆手に取って裏に抜けたかったが、前半は守備に追われていた」という田原。

解説の城氏も指摘していたように、また試合後、勝利に微笑む山口監督が「高木さんは昔から意地悪だから、色んなことをされたけど・・・」とインタビューに答えていたように、横浜FCのボールはタテに入らない、タテに入れさせない。サイドを消され、行き場の無い横浜。後は2トップへのロングボール…みたいな感じに。相手選手たちも感じているように、きちんと相手の強みを消して、拮抗したゲームに持ち込んだ熊本でした。

「ただ、こういうことはいつかはあると思っていたので、今日は割り切ってボールをはたくことに専念しました」と言うのも、先制点を奪った武岡。今の横浜、自らの良さを消されても慌てない、焦れない、冷静に自分達のやっていることを崩さない“強さ”がある。実はこれ、このリーグで戦っていくうえで、最も大事な強さの本質でもあると思えます。

前半27分のCKのチャンス。原田からのキックにファーから入ろうとした高橋がもんどりうって倒れる。狙われたように大久保に身体を払われていました。大久保にファールが告げられ、PKが示される。ボールを置きに言ったのは武富。前節のヒーロー。しかし、ゴール左角に蹴ったシュートは、GKシュナイダー潤之介に、みごとに跳ね返される。

この日の敗戦の責任をひとりで背負い込む形になった武富は「小学生のようなシュートを打ったのがいけない。メンタルの問題で、ひたむきさが無かったと思う。入る気でいたし、そういう意味で謙虚さがなかったと思う」とコメントしました。

PKというひとつの試合の結果を左右する重要なプレーに対して、明らかに準備不足だったことを認めている。それは結果ではなく…。プレーの軽さというか、背負う責任に対する自覚の薄さということだったのか。

吉井が「PKに関しては運もあるし、どんなに良い選手でも外すことがあるし、武富が自分から決めて蹴ったことなので、彼が悪いということではないと思う」と擁護したとしても、その後にもメンタル的に引きずったようなプレーぶりには、よけい残念でなりませんでした。PKの失敗を取り戻すようなプレーを見たかった。もう一回りも二回りも大きくなってほしい。そう思いました。

スコアレスのまま終わるかと思われた前半終了間際。CKからのこぼれ球を菊岡が蹴りこんで横浜が先制点を得る。振り返れば、PK失敗のあとで流れは横浜に傾いていたと言えます。

後半は、攻めざるを得ない熊本に対して、きっちりとブロックを作って、粘り強く対応した横浜FC。そこはまるでわがチームと”擬似対戦”しているかのようで。その45分間に、確かに山口監督の高木監督との”師弟関係”、影響を感じざるを得ませんでした。

後半アディッショナルタイムには、廣井を上げてパワープレーを試みた熊本でしたが、逆にその隙を付かれた。GKシュナイダーからのキック。大久保が頭で競って前に送ると、途中交代のカイオがDFの間を縫ってGK南と1対1。これを決めました。

福岡時代の大久保にも何度か見せらつけられたシーン。怪我で離脱中の主将・藤本はブログで次のように書きました。

「厳しいことをいえば、2点目は正直絶対にやってはいけないミスだったかなと思う。カバーリングという、基本中の基本、システムが変わろうが、人が変わろうが、忠実に実行するべき基本のものだから」。

点を取りに行ったうえでの失点をわれわれは”曖昧”にしがちですが、藤本の指摘は、この2点目の失点のほうに厳しいものがありました。

ただ…。この試合、ブロックとして見事に機能していた守備体系でしたが、そのなかで、GK南の動きにやや精彩を欠いたような印象を受けました。短いながらも、戦線離脱からくる試合勘の欠如を、画面を通して感じたのはわれわれだけでしょうか。このあたりのコンディション面、どうだったのか。ちょっと気になるところでした。

「やっている以上は勝つか負けるかという世界に生きているので、勝てないときもあるだろうし、でも勝つために最大の努力を惜しまないことが、重要なことだと思います」と締めくくっている高木監督のコメント。

思えば、試合後ごとにそう気の利いた、多彩なコメントが出るわけでもなく、チームの基本はそうそう変わるわけではない。PKを失敗した武富の”切り替えられなかった”気持ちと、それに呼応したかのようなチーム全体の停滞感。それに対して、横浜の連勝から来る”勢い”あるいは勝負強さ。それが、勝敗を分ける唯一の要因だったのかと。

翌日日曜日の練習では、指揮官としばらく二人だけで話し込む姿があったという武富。この経験がきっと彼をより成長させる。そうでなければならない責任を、この”逸材”は背負っていると思うのです。いつもと違うと感じた”悔しさ”は、実はそういうことだったのかも知れません。

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