7月15日(日) 2012 J2リーグ戦 第24節
熊本 0 - 1 京都 (19:05/熊本/7,620人)
得点者:81' 中山博貴(京都)


「九州北部豪雨」と名づけられた豪雨災害。まずもって、この災害で亡くなられた方々のご冥福を祈り、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

「大きな災害があった中で、今日こうやって無事にゲームができたこと、こういう環境を与えてもらったことに、関係各位の方、熊本の皆さんに感謝したいと思います」と、試合後の高木監督は言う。 多数の犠牲者と甚大な被害をもたらしたこの水害。かの大震災以来、サッカーと社会の関わり、繋がりかたを考えさせられることが多く、今回も、この試合を、この週末にホームゲームとして催行することが適切なのかどうか。被害の報道を目の当たりにしながら、そんなことを考えていました。おそらくは高木監督もそんな意識のもと、試合をできることの有難さ、大切さを感じていたのかと。ヘリコプターで救助された住民が、近くの避難所に運ばれる。そんななかで練習をしていれば、そう思うのは至極当然のことかも知れません。

しかし、チームの好調さと、連休の中日という影響も少なからずあったのか、この夜、7千人以上もの人がKKウィングに足を運んだ。試合を前にして、京都サポーターからは「一日も早い復興をお祈りします」という即席弾幕とロアッソ熊本コール。それに対して熊本ゴール裏は京都サンガコールで応える。胸が自然と熱くなる。誰が何と言おうと、これがわれわれがともに戦っている戦友の温かさ。このリーグの良さに違いない。

京都20120715

さてゲーム。とりあえず監督としてはこの一言ですべてを総括している恰好です。
「選手たちには全てにおいて満足してますので、負けた悔しさはありますけれど、特に修正することはなく、次の東京V戦に向けて準備をしていきたい」。

CKから矢野のヘディング。原田のミドルシュート。いずれもGK水谷の機敏な反応に阻まれますが、試合開始早々から好機を作ったのは熊本。前回対戦で、あれほど一方的に攻められた相手に、互角以上の内容。

確かに、この試合の前半、熊本が展開したゲームは、冴え渡り、相手を消すと同時に、高度に連動した動きで相手ゴールを何度も脅かしました。よく練習を積み、よく戦術を理解したものだけが到達するような。

4分の1コートを利用した大木サッカーの非常にコンパクトな「クローズド戦術」に対して、熊本のスピード、ワンタッチの展開力、全員の意図がシンクロする快感のようなものが何度も何度も繰り返された。

そして指揮官としても、自らのスカウティングも含めて相当な手ごたえを感じたのでしょう。あるいは京都との今季の戦いを終えたから許されたことだったのか。試合後の会見で、ボードを使って自ら敷いた戦術を具体的に説明したというのも異例も異例。そしてそのなかで「我々がやったことが間違いじゃないということを皆さんにわかってほしいですし、彼ら(選手たち)がやったことはすごく難しいことです」と説明を始めたのだといいます。

しかし、前節、岐阜戦もそうでしたが、後半の相手の出方とその対応が課題。敵将・大木監督も”修正力”を持っていました。高木監督自身も、「後半にチョン・ウヨン選手が出てくるだろうなというはわかっていました」とウヨンに対する警戒は十分にしていた。しかし「彼が入ることによってペースが変わることもわかっていましたが」「わかっていましたけども、そこに対して厳しく行くというのがなかなか難しかった」。それが”ピッチ上”で起こっていた現実でした。

一方で、大木監督はこう言っている。「ウヨンを入れるということもあったんですけれども、もう1つは中村充孝を前に上げるということ」「誰を入れるか考えたんですが、中村を上げようと。そこでまず落ち着きどころを作りました」と。

熊本のDFラインはPA内に押し下げられて 、防戦一方の展開。攻撃に転じても押上げが効かない。跳ね返しても前線に収まらない。自然とスペースが空き始める。前での溜めを期待して、前節から試合に復帰した主将・藤本を入れる。しかし押し戻すまでには至らない。

藤本から縦に入れたパスを齋藤が収め切れず、奪われたあとの京都のカウンターでした。右サイドから中村がエリアに持ち込むと一度戻す。もらった工藤はカーブを掛けてゴール左角を狙うシュート。ポストに当たって難を逃れたかと思ったのも束の間、詰めていた中山に蹴りこまれました。

京都にとっては全く”いい時間帯”でした。我慢して我慢してもぎ取った得点。熊本にとっては苦しい時間。仲間を入れて押し戻し、好機を作るものの決めきれない。残されたアディショナルタイム。ペナルティエリア内で倒された片山のプレーに、すわ「PK!」とスタジアム全体が沸いたもののノーファールの判定。しかし、やはりこれは疲れているのか。チーム状態というべきか。豪雨のなかで、練習やコンディショニングが十分だったとは思えない。この高湿度のゲームのなか、後半守りに終始した展開も足にきたのか、最後まで戦う姿勢は見せてくれたものの、その後に追いつく気力も体力も、熊本には残されていませんでした。

しかし。指揮官は、次の試合に向けて「特に修正することなく」と言い切る。大木監督の「クローズド」戦術に対して自身が”見切った”打開策に関して、よほど選手たちが理解し、それを実行できたことを想像させる。大げさに言えば、人生のなかでそう何度も体験できる感覚ではない。とでも言うべきか。

「イタリア語で言うプロビンチア、我々のような地方のチームでも京都のようなビッグクラブに対してこれだけできるんだということを示してほしい。ああいうクラブに勝つためには必死で頑張らなければいけない。でも頑張れば苦しめることはできますし、そして勝利することだってできる。選手たちの頑張りをこういうところで伝えるのも、自分の役割かなと思いましたので」と監督は言う。

そしてこのコメントも今まで聞いたことのないような内容。そう、われわれはまさしくプロビンチア=”地方にある小さなサッカークラブ”。ウディネ-ゼとまでは言わないにしても、目指すは、J1に長く居とどまる新潟や、今まさにその戦いのなかにある鳥栖。それを経験した甲府。

敗戦という結果に、今日の試合の意図や内容が覆い隠されてしまうのがよほど耐えられないということなのか。敗戦を見返すことは辛い作業ではあるけれど、ビデオを何度も見返して、高木監督の意図をなぞってみたい。今節はそう思わせる戦いだった。そんな気がしました。

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