7月22日(日) 2012 J2リーグ戦 第25節
東京V 2 - 0 熊本 (18:04/味スタ/4,160人)
得点者:37' 深津康太(東京V)、90'+1 高橋祥平(東京V)


前節、京都に敗れはしたものの、その戦いぶりはこれまでとは違った手ごたえを感じ、指揮官にして「何も変える必要がない」とまで言わしめました。勝ち点から言ってもほぼ首位(首位戦線は、まったくの週替わりではあるものの)のこの東京ヴェルディとの対戦は、厳しい戦いになるという怖さより、どんな戦いをしてくれるか見てみたいという気持ちのほうが上回る。確かにそんな試合前の心境ではありました。

しかし。しかしです。実際のスタジアムは、そんなわれわれの、取るに足らない“プレビュー”など、どうでもいいような、特別なシチュエーションの試合だったわけで…。

そう。この試合は、元日本代表にして、柏の”シンボル”であった北嶋秀朗の、待ちに待った熊本デビュー戦でもありました。実際に赤いユニフォームを着てピッチに立つ北嶋の、その存在感は大きく、激しく、圧倒的であり、遠い熊本の地でテレビ画面越しにしか見られないわれわれにさえ、その”オーラ”を感じさせるには十分でした。

実際のところ、われわれとしては年齢的なものもあり、幾度もメスを入れたその脚のこともあり、慎重な見方をしていました。できるだけ期待しないように、自分を抑えていたような。しかし、それは予想を上回る、いや、われわれの勝手な先入観を、いい意味で大きく裏切る、魂のこもったプレーをしてくれた。正直言って”痺れ”ました。

多分、高木監督は、FWに対して危険なエリアで危険を顧みないプレーを求めていたと思う。それを実際に見せてくれた北嶋。試合前日には、「ウチは、みんなヘロヘロになるまではするチーム。“巧くやる”の前に、とにかく走ることが求められる」と言われたという。序盤から飛ばして、果たしてどこまで行けるかという心配もしていましたが、「試合後、ヘロヘロでした」と笑顔で語る北嶋。得点こそ取れず、勝ち点こそなかったものの、この逸材が、何より初先発の試合で90分間走れることを実証したことは、この日の熊本の最大の収穫といえるのではないでしょうか。

ヴェルディ20120722

試合は、森や土屋や飯尾を欠き、杉本もいなくなったヴェルディが、大きくメンバーを入れ替えてきた。阿部と組む2トップの一角には巻というのもなにやら因縁深い。その巻にさすがに高さのない熊本の3バックが制空権を一方的に奪われます。そしてPA内に人数を掛けざるを得ない守りは、なにやら前節の京都戦の後半を思わせる。ただ、一見押されっぱなしのようでも、少ないポゼッションのなかで、意図的な速い攻撃が機能する瞬間は、これまた京都戦の前半と同じ感覚で、決して悪くない。

藤本、藏川、養父と右サイドから崩して、武富のシュート性のクロスのニアに北嶋が飛び込む。いかにも北嶋らしいプレーは、惜しくもGK土肥に阻まれる。北嶋のポストプレーから繋いで、武富のクロスに飛び込んだのも北嶋。その右足にわずかに届かない。果てはハーフウェイライン近くからの養父のFKに、Pアーク付近にいた北嶋のバックヘッドは、バーに当たって跳ね返されます。

しかし、この日のナーバスな主審の笛を味方につけたのはヴェルディ。熊本のゴール前でファールを取ると、中後のキックは速い。深津が身体ごとゴールに飛び込むようにヘッドで叩きつけて先制点を得ます。

その中後が片山への危険行為で一発レッドの退場。ひとり少なくなったヴェルディでしたが、後半はこの1点を守りながらカウンターを狙うという意思統一ができたという意味では、熊本にとっては厳しい展開になりました。ヴェルディの一人ひとりの運動量が増す。逆に熊本の止める技術、パスワークの技術の荒さ、未熟さが目立ち始めます。

時間も少なくなり、熊本は矢野を前線に上げてパワープレー。薄くなったDFラインにカバーで入った養父が持ち上がろうとしたところで痛恨のミス。奪った高橋が預けて再び貰いなおすと、カーブを掛けて狙いすましたシュートは、駄目押しの2点目となってゴール右角に吸い込まれていきました。

1人少ない相手に対して、3バックから4バックに変えなかった意図を記者に問われて、「ミスマッチのゲームをしたかった」と高木監督は言う。「そのままの形で後ろの変化をつけることで、ギャップともっともっとミスマッチしたゲームをしたかった」と。そして「チャンスも意図とする部分で、選手も非常にいろいろ理解しながらやってくれたなと、プレーに関しては非常に満足している」と総括しました。

対するヴェルディは、高橋も刀根も西も、さらには川勝監督さえも土肥の名前を挙げて、再三のピンチを救い、後ろから守備を牽引した今日の試合の功労者だと称えました。前節鳥取戦から柴崎に代わり久々にゴールマウスを守る。熊本出身のJリーガーでは今やおそらく最年長になるであろうGK土肥の活躍が、熊本にまたしても連敗をもたらしたことは、複雑な心境です。

さて、再び北嶋に関して。サッカーライターの元川悦子氏は「柏ではレアンドロ・ドミンゲスやジョルジ・ワグネル、酒井宏樹(ハノーファー)といった質の高い選手たちからピンポイントのパスが供給されるが、熊本では同じようにはいかない。そういう部分でもギャップを感じたはずだ」と書きます。それに対して北嶋は、『柏と比べていたらストレスに感じるが、熊本だってしっかりボールをつないで攻撃を組み立てることはできる。自分が加わることで一緒に内容を高めあっていけたらいいと思う』と応えたのだという。

さらに彼自身のブログでは、はっきりとこう書いています。
「このチームの選手達は彼ら(レアンドロや酒井)とはまた違う特徴を持っているし、彼らにはない部分だって持っている。だから比べる意味も必要もない。だからそういう意味でのストレスもない」と。

「我々のチームに本当にフィットしたということではないとは思いますけども、また今後、もっともっと質の部分で上がってくることも今日のプレーを見て感じました」と、試合後の高木監督は言う。そう。もっともっとフィットしてくるはず。多分、もう少し時間はかかるだろうけれど。

盟友の南は言います。「チームとしてはキタジが周りのレベルに合わせるのではなく、周りがキタジのレベルまで上がらないと。それがこれからの熊本の大事なところだと思います」と。

「キックオフの直前はここにいたるまでの色んなことを思い出し感情が高ぶり涙が出そうになった」と言う北嶋。(ブログから)

ケガや累積などで選手層がどんどん薄くなっていくことばかりだった今シーズン。連敗にはなったけれど、また、チームの成長を待つ楽しみが増えたような、そんな気分です。身近に新たな目標ができた。さらにレベルアップしていける。そんな期待感でいっぱい。敗戦のあとなのに…。初めて感じる不思議な心境です。

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