8月12日(日) 2012 J2リーグ戦 第28節
熊本 3 - 0 栃木 (19:04/熊本/4,526人)
得点者:15' 武富孝介(熊本)、71' 矢野大輔(熊本)、90'+6 片山奨典(熊本)

千葉戦以来の4-4-2のシステムで臨んだのは、7試合負けなしと好調を続ける栃木へのリスペクトがあってのことだろうと思ったのですが、高木監督はこう言います。

「システムによって何かが変わったということではなくて、何も変わっていない。それは今までやってきたプレーを継続して、本質を変えずにディフェンスもオフェンスもやった。それが今日の中では、勝つということとは別の、一番大きな収穫」。

連敗の中でも決して内容は悪くはないし、続けていくことが重要だと繰り返してきた監督にとって、その点は何よりも確認しておきたいことだったのでしょう。

そして「しっかりとしたプランの中で相手の良さを出させず、相手のウィークを衝きながら攻撃ができた」とも。確かに栃木の強みも弱みも見抜いたうえで徹底された今日のチーム戦術と試合展開は、指揮官やメンバーや点差こそ違え、07年8月、JFL時代、水前寺での同じ栃木との戦いを思い起こさせました。胸がすくような完勝という意味でも。

栃木側からは特に、立ち上がりがすべてだったと言う声が多い。熊本の速い出足に翻弄され守勢一方。守備の運動量と当たりの厳しさ、切り替えの速さ、シュートの意識で上回る熊本。アグレッシブでした。「熊本は守ってカウンターを狙ってくるだろう」とスカウティングしていた敵将・松田監督の表情も冴えない。

そして先制点。このシーンだけ見れば、これはもう偶然以外の何物でもない。しかし、偶然を引き起こす意図が確実にあったことも間違いない。

とにかくシュートを打った根占。打たなければ何も起こらないわけで。それもふかさず、事故の起こりやすいグラウンダーで通した。角度を変えた北嶋。触らなければそのまま抜けていたでしょう。トラップのつもりがパスになったのはこれまた偶然ですが、そんな偶然に相手が反応できるわけもなく。そして、そんな意外な展開にも反応し、角度もなく簡単ではなかったシュートを落ち着いて決めたのは武富でした。

4連敗中ゴールのなかった武富。試合前、スカパー解説の池ノ上さんは「周りとの兼ね合いを気にしすぎているのではないか」と指摘していました。それは暗に柏の“大先輩”のことを示していたに違いありません。鋭い指摘でした。

北嶋が試合後、ブログで明かしています。試合前日に武富にこう語ったと。
「タケは良いヤツだから、気を使っちゃったり、遠慮したりするんだよな。でもそういうの、グランドではナシな。俺もグランドで遠慮なんかされたら悲しいよ。おまえがこのチームのエースなんだよ。もっともっと偉そうにしてていい。俺に要求もガンガンして欲しいし、おまえが走れって言ったら俺は走るから。逆に俺がおまえに要求することだって当然ある。グランド上では常に対等。勝つために要求しあう。そんな関係でいようよ。」

試合前、スカパーの取材に対して「消極的だった。今日から思い切り行く」と応えていた武富。ゴール後、真っ先に抱きつきにいった先は北嶋でした。

栃木20120812

「個人的に慣れているシステムだったので、色々とスムーズだった」と北嶋はブログに書きました。藤本が、「ボールを回す時の配置が楽というか、中盤の人数が増えてまわしやすくなったし、前も2人なので距離も近くて、コンビネーションもあったんで、攻撃の面でいい面が見られたなと思います」と言うように、相手がプレッシャーをかけてきたときのボール回しのリスクが前節あたりと較べてだいぶ低減されていたような印象。結局、ここからボールを入れて攻撃に移っていくところのバタバタで奪われ、ショートカウンターを食らって失点、みたいなことが続いていたわけで。

ボールを引き出せなかったサビアを諦めて、後半から棗を入れてきた栃木。高さを加えます。広瀬のあとには佐々木。2トップの入れ替え。それに対して熊本も北嶋、藤本を高橋、斎藤と2枚替え。 

CKからの矢野の追加点は、このカードを切る直前でしたが、終盤の高橋、齊藤はかなり効いていたなと。この2枚替えで一気に試合の流れを引き戻したし、攻守両面で苦しい状況にあったチームの選択肢を増やしました。

高橋に関しては、この週の木曜日にようやく練習に合流したばかり。しかし、怪我明けの心配をよそに試合にうまく入っていく。“オフェンシブ・ストッパー”という、池ノ上さんからの新たな称号。

アディッショナルタイム5分。その高橋がロングボールを競って落としたところに飛び込んだのは、今日も切れ味のある突進のドリブルで相手を翻弄していた片山。このチャンスにダイレクトで一蹴すると、駄目押しの3点目がゴールに突き刺さりました。

「100%集中が無かった」。松田監督は試合後、立ち上がりの失点がこの試合を決めたと言い、「90%以上の集中はあったと思いますが100%ではなかった」と表現しました。そしてこう説明する。

「サッカーというのは本当にちょっとしたことで点が入ったり入らなかったりするわけで、クリアボールがそのままつながったりすることだってある。そういう部分に対しても、水も漏らさない100%の集中というのが、特に立ち上がりは必要」だと。
「うちのサッカーではそれが生命線なので、それに対して95%であれば、残りの5%が致命傷になるということ」。「もちろんこれまでの試合でも、その5%が点にならなければ持ち直している。点が入るか入らないかというのは一番大事なことで、流れを決めることなので、(これまでは)入れさせずに連勝できていたということだと思います」と。

ややもすれば負け惜しみとして読みすごしてしまいそうな敗戦の将のコメント。しかし松田監督は、勝負としてのサッカーに向かう指揮官の確率論を的確に言い尽しているのではないでしょうか。

武富は、前回対戦で大敗している次節の松本戦に関して問われ、「気持ちを込めて1人1人がしっかり戦えば今日みたいな試合になると思います。そういうちょっとした所の差で先に失点するか取れるかが変わるのかなとも思ったので、強い気持ちで、自分自身もアグレッシブなプレーをしたい」と、これまた同じようなことを言っている。

前節のエントリーでわれわれがうまく言い表せなかった“クローズ”な意識と言うのは、本当にちょっとしたことで点が入ったり、入らなかったりするサッカーというゲームで、松田監督の言う100%の集中ということであり、武富の言う気持ちを込めて戦うということと同義語だったのかなと。それが冒頭の高木監督の「決してシステムを変えたからではない」という言葉や、「続けていくことが重要」ということとも符合するような気がして。4連敗のあとの快勝だったからこそでしょうか。そういうことを考えさせられたゲームでした。

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