9月2日(日) 2012 J2リーグ戦 第32節
北九州 2 - 0 熊本 (18:03/本城/4,794人)
得点者:35' 池元友樹(北九州)、79' 端戸仁(北九州)


「(北九州は)ここ最近のゲームの中で、運動量、連動性、フィジカル、テクニックという意味でも今日のゲームは最高のプレーをしていたと思います」。
試合後、高木監督は対戦相手をそう評価しました。それにしても、北九州の好きなようにやらせてしまった、やられてしまったゲームでした。

今回も残念ながらスカパー!観戦となったわれわれ。発表された先発布陣を見てまず驚いたのは、前日の熊日の予想記事にもなかったクンシクの名前でした。前節・富山戦で負傷した西森のところに武富を下げ、練習で好調さを発揮していた(スカパー!)というクンシクを、17試合ぶりに2トップの一角に持ってきました。前節・熊本の戦い方なら、5戦負けなしの上位北九州とも“ガチンコ”のパスサッカー勝負になる。戦前、われわれが描いたワクワクするような期待は、序盤から裏切られます。クンシクの起用によって戦術自体が変わったのか。北九州という相手に対して戦術を変える必要があってのクンシクだったのか。それがわからない。

北九州20120902

解説者が、試合序盤、熊本は様子を「見ている」と表現していましたが、実際は単に受けに回っているだけ。守備から入るではなくて、守備に追われているのは明らか。前半25分までの時間帯、ほぼ完全に振り回され続けました。

もちろん北九州の前線、池元、常盤、端戸の3人は十分に警戒していました。しかし反面、「相手のFW2人とトップ下の1人への対応に意識が強すぎて、他の選手へのアプローチが後手後手を踏んでしまった」と、藤本は自身のブログで述懐しています。「ディフェンダー(特にセンターバック)は相手の前線の選手が怖いのでなかなかラインをあげられない。カバーリングの選手をいつもそばに置いておきたいと思うので、サイドバックを高い位置へ出したくない。そうなると、自然と自分達攻撃側の選手も下がらざるを得ない」と、悪循環の構図を解説しています。指揮官は「(北九州の)前線の3人は止められないよというイメージの中で強い映像を作りすぎた」と、スカウティング映像での事前の“過度な刷り込み”も反省している。それが「背後の怖さ」を過剰に意識させてしまったと。

しかし、われわれから実際のピッチの上で見えていたこと。いつものゲームの動きと決定的に違っていたのは、前線からの守備、コントロールがほとんど機能していなかったこと。相手の最終ラインはともかく、ワンボランチに何のプレッシャーもなく前を向かせるなら、”過度な刷り込み”がなくてもディフェンダーとしては辛い。ボールを貰いたいがためだけに、ズルズルと下がってこられても、そこでタメて貰わなくては、全体の押し上げもままならないというものです。

幸いにも相手の精度の低さ、ミスもあって、決定機はなかった分、失点せずよく耐えたといえますが、それが許されたのも35分間。注意すべき木村からのスルーパス。バイタルの常盤はトラップミスだと思いますが、それがDFラインに対峙していた池元の足に収まると、シュートコースを塞がれた池元は、絶妙のループを送る。ボールは、南の伸ばす手をあざ笑うかのような弧を描いて、ゴール左に吸い込まれていきました。技ありのシュートでした。

40分にクンシクに代えて大迫を投入。選手としては誰もが感じる屈辱的な前半交代。控え室に戻るクンシクは、脱いだユニフォームを投げつけて悔しがったのだと漏れ聞きます。しかし、テレビの前で見ていた者にとっては、それでも遅すぎたと感じていました。

高木監督は、「内容に関してはラッキーな部分もアンラッキーな部分もあったので、彼がすべて悪いというわけでは全くない」と擁護する。「できるだけ作ってほしかった」と彼に期待した”タメ”に関しても、「2トップが下がりすぎてしまって、なかなか背後を突く、もちろんフリーランニングとパス交換の中での背後を突けるようなシーンが残念ながら作れなかったので…」と交代の意図を説明しました。

しかしクンシクを擁護すればするだけ、自身の起用法についての弁明にしか聞こえない。交代まで40分間が、失われた時間にしか感じられない。指揮官の塊のような”意地”が、失点を浴びるまで溶けなかったのではないかと思うのは、邪気に過ぎるでしょうか。

ひとつの歯車が掛け違っていたというのは、すぐに明らかになりました。大迫がサイドに入り、武富が前線に上がる。養父と根占が前を向けるようになると、フィニッシュの機会は格段に増えました。スイッチが入った局面では、前節までのように決定機を何度も作り出していたわけで。ただ、それが前節までのようには長い時間続かなかったのもこの一戦でした。

養父が、「守備ありきのチームなので、守備が悪いと今日みたいな流れになってしまうし、それが攻撃にも影響したと思います」と言うように、前半の消耗と、失点は、今の熊本からすると、取り返すには大きすぎました。

「前を向かせすぎました。修正についてもコミュニケーション取りながらやってたんですけど、上手くいかなかった感じです。いい守備ができないから攻撃も単発になりがちで、3人目が絡むような形もあまり作れなかった」と振り返る。このコメントがすべてを物語っていました。

熊本にも多くの好機が訪れるようになりましたが、結局最後まで主導権は取り戻せず。後半5分に、カウンターぎみにくさびから左サイドにスルーパス。走り込んだ大迫からのクロスに、身体ごと飛び込んだ藤本のヘディングは、GK佐藤の好反応に阻まれてしまいます。

なんとか勝ち点1をもぎ取ろうとした熊本でしたが、34分その夢も費えます。新井からのパスに端戸がDFを背にしながらターン。左に切り返して蹴りこむ。追加点を決める。これも技ありのプレーでした。

北九州に試合を好きなように運ばれたのは、”相手”を消すことができなかったことが最大の要因ではないでしょうか。好循環に入れば、練習通りの連携ができてしまうことだってあるわけで。そうさせてしまったのは熊本。逆に熊本は全くの悪循環。互いの好悪のサイクルが次第に”増幅”されたような90分間。それが点差以上の完敗感に繋がっているように思います。

やはり熊本のゲーム運びにスイッチを入れるのは、前線の”攻撃的な”守備の役割。戦術的にも、メンタル面でも。さあいくぞ!と。この敗戦は、どうしても指揮官の采配の責を問わずにはいられない。最後のカードの仲間投入も、何故武富を下げる必要があったのか。

バトルオブ九州だと言う半強制的な煽りとも関係なく。上位チーム、下位チーム、そういった順位関係とも無縁な。ただただ、ファンにとってはどうしても負けたくない相手がある。リーグ戦42戦のなかでの単なる1戦ではない想い。そんな思いは、ちょっと選手たちとも少しギャップがあるのかも知れない。

好調だろうがなんだろうが、北九州には負けたくない。だからこそ大挙して駆けつけたゴール裏。そんな大勢のファンの”意地”を台無しにしたこの一戦を、必ずどこかで倍返ししてもらわなくていけないけれど。今季はもうそのチャンスはありません。

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