9月17日(月) 2012 J2リーグ戦 第34節 
熊本 2 - 1 大分 (16:05/熊本/9,645人) 
得点者:36' 吉井孝輔(熊本)、49' 西弘則(大分)、53' 齊藤和樹(熊本)


まず最初に、前回のエントリーで「コンディションが悪いのでは」と疑問符を投げかけた藏川選手に全力で謝りたいと思います。この試合のパフォーマンスは出色でした。運動量多く、大分の攻撃の芽を次々に潰す。後半インターセプトから斎藤に一度預けて、再び右サイドを駆け上がったシーンは、大いに会場を沸かせました。残念ながらその前に、絶好機を外した場面もありましたが(笑)。

今日のような試合こそ、まさに藏川のゲーム。脚が攣って終盤、交代した筑城にしても。流血の痕も痛々しい吉井も。「球際の強さを求められて」と自分たちの役割をしっかり認識していた”戦士”たちでした。

「球際」と「攻守の切り替え」が、このゲームの課題でした。前節、水戸に完敗した点。「とにかくサッカーの原点にもう一回帰る」「セカンドボール、球際、切り替えはサッカーの素の部分なので、そこでは絶対に負けてはいけない」。水戸戦で敗れた翌日にこう檄をとばしたという高木監督。

過密日程もあるものの、球際で「闘う」というコンセプトで5人の選手を入れ替えた。「ダービーなので、なかなか綺麗なことは難しい」だろうという予測のもと、斎藤と高橋という初めての2トップの組合せをチョイスした。「こういうサッカーになるだろうという予測のもとでチョイスした」という指揮官の期待どおり、前から守り、前で納める。決してうまいとは言えないかも知れない。しかし泥臭くしぶとく。相手の嫌がるプレーが、大分を苦しめました。

大分20120917

大型の台風16号の接近で開催自体も危ぶまれましたが、何とか持ちこたえてくれました。今日のこのゲーム。熊本サッカーフェスタとして、熊日がバックアップして盛り上げを図る形で、回を数えてもう6回目。怪しい天候ながらも動員もかかり、1万人近く入ったスタジアム。しかも相手は隣県・大分とあってサポーターの数も多く、青い色がバックスタンド、メインスタンドまで侵入している。ゴール裏の応援合戦も、キックオフの前からヒートアップして。火の国の“赤”がこれで燃えないわけにはいかない。

強風のなかでのキックオフ。「おやっ?」と思ったのは、熊本が風下のエンドを選んだということでした。前半風上を選ぶのが勝負の定石。それでなくてもエンドチャンジが常の熊本なのに、なぜ風下を選んだのだろうかと。

これについてはキャプテン藤本のブログに詳しい。「キタジや雄太、監督からの意見も聞きながら、最後は俺自身で決めようと思っていた」「とにかく前半は我慢して、劣勢になろうが失点0で後半を迎えると。後半は選手の入れ替えもやりながら、風上に立って優勢に進めたいという狙いに絞った」のだと言う。この“決断”が、かえってチームの戦術を固めさせたのもあったでしょう。藤本はそれを「"割り切る"こと」という言葉で表現する。

「ある程度押し込まれるのは覚悟していて、我慢しながらやっていこうという意思の統一はできていた」と言うのは筑城。「向こうの読みも含めてというか、風の影響を考えてポジションを取って先に飛んだり、どう身体を当てるか、考えながら入りました」とは矢野。そう言うように、ボールが極端に伸びる、押し戻される。ただ、風下が不利かというとそうでもない。むしろ、風下から風に当てるように蹴るロングボールは、絶好の競り合える位置に落ちる。逆に、大分の長めのパスはほとんどが流されてしまいます。

“アゲンスト”と思われる環境に自ら身を置いた熊本は「球際」に厳しくいくことに“割り切った”。ボールに触るためには、まず相手を弾き飛ばしてから。ケガも、ファールも、カードも恐れない。でもラフプレーとも違う。すべての局面でスライディングタックル。ちょっとでも腰の引けた緩いプレーがあると、それは目立つ目立つ。

そして武富が「失点しないことを第一に考えて、取ってから切り替えを早くしていければと思っていました」と言うように、もうひとつのこの試合の大事な課題は「切り替え」。「相手が3バックだということで、我々がボールを保持すると必然的に大分が5枚で守る形を取っているので、そうなる前に早く攻めるというのが、我々の今日の攻撃の中では優先でした」と指揮官は強調する。

その意識は、我慢のはずの前半中に実ります。自陣深くから養父が前方に送ると、斎藤がうまく溜める。全力疾走で追い越して行ったのは吉井。その指さすところに絶妙のパスを斎藤が送るとDFの裏を取った吉井が胸のワントラップでシュート。手を広げるGKの脇を抜けてボールはゴールに突き刺さりました。

総立ちの赤いサポーター。絶叫して歓喜を表す。タオルマフラーをぐるぐる回す。大分のサポーターを沈黙させる。

しかし、これで大分も目を覚ましました。そこにはさすがにリーグ3位の強さと怖さがある。三平こそ自由にさせなかったものの、森島は高くて強い。そこに当てられる石神からの鋭いクロス。前線に人数を掛けて攻めあがる。

そして後半早々。中盤のせめぎ合いから藏川が上がってポッカリと空いたスペースを石神に使われました。石神が素早くグラウンダーで入れる。そこに走り込んだのは西でした。右足アウトで綺麗に流し込んで同点にする。熊本にいた頃よりも数段身体が強くなっていた。相変わらず変則ドリブルは健在。そのうえにうまさが加わっていました。

センターサークルにボールを運ぶ熊本イレブンを見ながら気がかりだったのは、そのメンタルでした。やはり大分は強いと、これで気落ちしてしまうのかどうか。

しかし4分後、熊本は意地を見せてくれます。スローインから藤本が養父に落とす。柔らかい、しかしタイミングの早いクロスを養父が入れると、ファーサイドの齋藤が付いていた三平より高い打点で頭を振った。ボールはゴール左角に吸い込まれる。この大人しい男が、得点の喜びに吼えました。

その後の時間は果てしなく長かった。猛攻を見せる大分に、やはりこのカードはドローゲームが常なのかと正直覚悟しました。熊本にも幾度も好機が訪れましたがそれも決めきれず。しかしなんとか1点差を守りきることができました。

久しぶりにサッカーを見せてもらった。そんな気持ちになったゲームでした。順位や勝ち点差も関係なく、この一戦に向かう両者の意地のようなものを。赤と青で分けられ、声高々に後押しする。「プレミアリーグを見ているかのような感覚」と高木監督がコメントしたのは、そういったスタジアム全体の雰囲気も含めてのことではなかったのかとも思えます。そうでなくとも少なくとも、熊本が同点弾のあと気落ちせずすぐに追加点を奪えたこと、そのあとの長い時間、大分の追いすがりを許さなかった、凌いで凌いで凌ぎきったことは、ゴール裏の声の力だったことは疑う余地もない。

声量や人数を数字に置き換えたのなら、アウェーに駆けつけた大分に、もしかしたら負けていたかも知れない。しかし、この試合の勝利は、「そんな大分の数には負けない」という、間違いなく熊本のサポーターの意地のような力が選手たちを後押しして勝ち取った結果だったのではないかとも思うのです。

北九州戦のエントリーで、「ただただ、ファンにとってはどうしても負けたくない相手がある」と書きました。それはバトルオブ九州という”煽られた”対戦でもなく。「そんな思いは、ちょっと選手たちとも少しギャップがあるのかも」とも。けれど今日は、たくさん押しかけた青いサポーターが逆に火をつけ、選手とファンを一体にさせてくれたような気がします。

意地を見せた今節の勝利。この会心の結果がまた1ページ、赤と青の歴史に刻み込まれます。


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