10月14日(日) 2012 J2リーグ戦 第38節
熊本 2 - 1 町田 (18:04/熊本/7,127人)
得点者:12' 武富孝介(熊本)、55' 平本一樹(町田)、70' 矢野大輔(熊本)


試合前日の土曜日。いつものようにいさむちゃんの床屋へ。今日の話題、まずは朝方の代表戦、フランスへの歴史的初勝利の話しかと思えば…。「ファビオはとうとう出てこんですねえ」「高木監督は来年もしなはるですかねえ」…。いやいや、熊本のサッカーな日常の景色も、大きく変わったなと。それもこれもホームチームの連勝の影響なのかと。

先週日曜日にアウェー山形戦、そのまま熊本には戻らず移動して、水曜日に仙台を相手に延長120分の天皇杯3回戦を戦った熊本。対する町田も同じくFC今治相手に天皇杯を戦っていますが、こちらは今治戦の先発から5人を入れ替えてきました。

熊本は、山形戦、仙台戦とまったく同じ先発メンバー。大分戦以来、入れ替わっているのはケガのメンバー(吉井、筑城、高橋、北嶋)だけという固定された陣容。ある意味、迷いがないというべきか。

町田20121014

それにしても攻撃的な町田のサッカー。手こずりました。高木監督が「(町田は)厳しい状況があって、『何とか勝点3を取ろう』というゲーム、そういうサッカーをやってくる」と予想していたとおり、最下位に沈み降格の危機にある町田は、まるで”手負いの獅子”のように果敢に立ち向かってきました。

もうひとつ指揮官が気にしていたのは、「勝たなくてはいけない相手だったと思うので、その分どうしても難しくなる」という点。大分、福岡、湘南、山形というJ1経験チームに4連勝し、そのうえ天皇杯ではJ1優勝戦線の渦中の仙台を撃破してホームに帰ってきた。リーグ最下位チームには”勝って当然”というファン心理が当たり前のように働く。そこでのプレッシャー。そんな2つの理由を挙げて、「今日のゲームは、ここ最近ではいちばん厳しいゲームになるかなという予想はしていました」と指揮官は分析していたようです。

しかし、ゲームを見ていて、もうひとつ難しいゲームになった理由が明らかになる。当然ながらコンディションの問題でした。恐らくはあえてターンオーバーをしなかった熊本。南も「今日は疲れもあって運動量が落ちているなというのは後ろから見てても感じました」と言うように、後半、熊本は明らかに球際に突っ込んでいく激しさ、エネルギーが落ちていた。セカンドに集中する力で町田のほうが上回っていました。

それでも、連勝の手ごたえが疲れた体にしっかり残っていたのでしょう。「チーム状態がいいから、無理な所でもつなごうとするところが前半はあって、ハーフラインを越えてからコンビネーションで作る方がいいなというのは感じました。シンプルにやる所との使い分けは大事だなと思いました」と矢野が言うように、そこはバランスを欠いたところ。非常に嫌な取られ方をする場面が多かった。

しかし、それでもセットプレー2発で勝ち切ってしまいました。

前半12分のFK。原田、養父、藤本3人が相談するなか、蹴ったのは藤本。無回転シュートはGKの手元で変化して、パンチングで逃れる。そのボールがバーに当たり跳ね上がると、真っ先に飛び込んで来ていたのは武富でした。頭で突き刺すと、そのまま身体ごとゴールネットに突っ込んでいくほどの勢いでした。

「(藤本)主税さんのフリーキックは大体ブレ玉なので、枠に飛べばキャッチはできないから、入るかこぼれるかなので、常に狙っているこぼれに飛び込んだというだけです」と、普通に言うのもわかる。相手ディフェンスより1歩先にこぼれを狙ってスタートを切っていました。

前半のうちに投入された町田のベテラン平本が、「僕たちのように経験の少ないチームは先に点を与えると痛いし、この状況で先に失点するとガクンと来るから、まずは失点しない、守備からっていうことも必要」と悔やみますが、どちらかと言えばそれは結果論。実際の戦況は、高木監督が「幸野、ドラガン、平本、そこまでがかなり流動的に動くので、正直言ってうまく捕まえることができなかった」「なぜ捕まえきれなかったと言うと、彼らのパスのタイミングやテンポが良かった。だからこそ、最終的にはボックス近くまでラインが下がってしまう」というような厳しい試合展開でした。

当然、このままでは終わらないだろうとハーフタイムに予感したように、後半になっても中盤での激しい奪い合いから攻守の切り替えの早い試合展開が続く。10分、ワンタッチのスルーパスで平本にDFラインを割られると、右足で流し込まれ遂に同点にされます。

スカパー解説で「熊本の不用意なパスミスが多い」と池ノ上さんが言っているころ、イエローを貰った藤本の顔がゆがみ、高木監督も歯を食いしばっている様子が画面に映る。後半15分、北井に破られ1対1を南が防ぐものの北井がもんどりうつ。あわやPK。万事休したかと思われましたが、これはシミュレーションの判定。

そんな”町田の流れ”の中で、熊本が奪ったCK。右から養父の弧を描いたボールが、ゾーンで守る町田選手を越えて、飛び込んだ矢野の頭にぴたりと合った。これが決勝点になりました。

その後の見せ場は南が持って行きましたね。何本の決定機を阻止したでしょう。圧巻だったのは33分、右サイドから入ってきた町田。ディミッチからエリア内の北井の足元。北井がすばやく脚を振る。その至近距離のシュートを左手一本。ボールは南の手中にぴたりと収まった。得点シーンに値するほどのスタジアムの歓声。場内のビジョンでリプレイされるほどの”美技”にスタンドの誰しもが酔いしれました。

アディショナルタイムは4分。終盤の切り札になった仲間と大迫が、なんとか前線に起点を作ろうとしている。齋藤はまだ一騎ドリブルで持ち上がるスタミナを見せました。苦しんで苦しんで、なんとか町田の勢いをかわした。残留を目指す町田がなんとしても欲しかった、勝ち点いう”獲物”を奪い、前回対戦のアウェーの屈辱を晴らしました。

「悪い時間も何とか耐えていれば、前の選手が取ってくれたり、どこかで挽回できるチャンスがあるってことを分かっているというのは大きいかもしれないですね」とDFの廣井が言う。チーム全体にそんな自信が芽生えているということか。

こんな厳しいゲームでも勝つ、いや、勝ってしまえるというのは、これまでなかなか経験したことのなかった感覚ではないでしょうか。ここが今日のゲームの一番のポイントに違いないでしょう。厳しい試合を凌いでモノにできる”強さ”。流れは悪いなかで、セットプレーで決める効率。相手に与えるそのダメージの大きさ。

ずっと追い続けている人は皆、わがホームチームがこれまでにこんな試合をどれだけ落としてきたかということを、よく知っているでしょう。追いつかれ、逆転され、膝を折った…。「ある意味そういう“勝たなきゃいけない”試合の中で、そういうプレッシャーに打ち勝ってきっちり勝ちきれた事は今までのロアッソにはなかった」と、南もブログで表現するように・・・。

「苦しい時間帯や、少し混乱しかけても、そこに対してベテランの選手がうまくサポートしたりということもありますし、常にリカバリーが上手くできているのかなと。実際にミーティングでも話をしたんですけど、今日のゲームでは『リカバリーを多く、上手くやった方が勝てるよ』という話をしました」と指揮官は言う。“リカバリー”。このあたりのコメントは、これまであまりお目にかかったことのない表現でした。

われわれは、最後の最後にこの試合の勝敗を分けたのは、チームに芽生えつつある”強者のメンタリティー”ではなかっただろうかと思いました。それは、新加入会見で北嶋が言った「勝ちに慣れる」という言葉にも似て。どんな試合展開でも、どう勝ち切るかを知ること。それができること。それが「勝ちに慣れる」という意味なのかと。

天皇杯を入れればアウェーでの3連勝を後押しした関東サポーター。その渡された勝利のバトンを、ホームでもまた繋ぐことができました。示されたのはクラブの記録を更新するリーグ5連勝。公式試合6連勝という結果。そして、次節は横浜FCという、これまた願ってもない強敵と対戦する。

今季の”出来”を占う相手としては申し分ない。場所は聖地・水前寺。燃えない理由はありません。

TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/384-64e7870f